財務会計

 

限界利益とは?理解に欠かせない損益分岐点や計算方法、目安値をご紹介

限界利益とは?理解に欠かせない損益分岐点や計算方法、目安値をご紹介

企業の経営状態を把握するための指標はさまざまありますが、特に重要なものに「限界利益」や「限界利益率」があります。今回は、「限界利益」「限界利益率」の基礎知識から、これらの確認・分析を効率的に行う方法を解説します。

限界利益とは?

限界利益について理解するために、次のポイントを押さえておくことが大切です。

  • 限界利益を理解する前に「損益分岐点」について知ろう
  • 限界利益とは
  • 限界利益率とは
  • 限界利益と限界利益率から分かること

それぞれのポイントを押さえて、企業の経営状況を確認しましょう。

限界利益を理解する前に「損益分岐点」について知ろう

限界利益について理解するためには、まず「損益分岐点」に関する理解が欠かせません。

損益分岐点とは、企業の「収入」と「支出」が均衡するポイントのことで、企業の売上高と費用が釣り合う(利益も損失も生じない)水準を表しています。
損益分岐点を求めることで、「このポイントを超えれば利益が発生し、反対に下回ると赤字になる」という売上高や売上数量が分かります。​

例えば、損益分岐点となる売上高が1,000万円/年ある企業の場合、損失を出さないためには年間の支出合計(製品・サービスの原価や、販管費、水道光熱費、税金といった費用の合計)を1,000万円以内に収める必要があります。

なお、企業の支出の種類は、大きく分けると固定費と変動費の2種類に分類できます。

■固定費
製品・サービスの売上の変動に関わらず、一定の期間に一定額発生する費用。例えば、会社が借りているオフィスの賃料、人件費、広告宣伝費などが固定費にあたる。

■変動費
製品・サービスの売上の変動と対応して増減する費用。例えば、「原価」や「販売手数料」など、製品・サービスの売上高・売上数量が増えると連動して増加する費用が該当する。

損益分岐点は、これらの固定費や変動費、売上高をもとに算出しますが、その計算で出てくる用語が、「限界利益」「限界利益率」です。

限界利益とは

限界利益とは、売上高から変動費を差引いたものです。製品・サービスを売上げた際に得られる利益のことで、売上高の増加に連動します。

限界利益は、人件費・広告宣伝費といった固定費をどれほどまで使えるか、今後も事業を継続するべきか、といった経営判断で使われます。

限界利益率とは

また、限界利益率とは、限界利益を売上高で割ったものです。売上高に対する限界利益の割合、つまり収益の効率を表します。

限界利益率が高いほど、企業は収益を最大化できていることを意味します。限界利益率を向上させるためには、価格設定やコスト管理を適切に行うことが重要になります。

限界利益と限界利益率から分かること

限界利益を求めれば、事業の収益性が分かるため、商品・サービスの適正価格を決める際に有効的です。

限界利益は、数値が大きいほど事業の収益性が高いことを指し、マイナスになった場合は継続しても損失が増えることを意味します。

限界利益率を求めれば、売上高の増減によって利益がどのように変動するかが分かります。

売上高に占める限界利益率が高いほど、企業の直接的な利益が高いことを示すものです。

限界利益・限界利益率の計算方法

「限界利益」「限界利益率」は、それぞれ以下の計算方法で求めることができます。

限界利益の計算式

限界利益(円) =製品・サービス1単位あたりの売上高 − 1単位あたりの変動費

例えば、売上高が100万円/個、変動費が50万円/個の製品Aの限界利益は、「100万円 ー 50万円」で50万円です。

また、製品Aが10個売れた場合の限界利益は、以下のように求められます。

限界利益=100万円/個×10個 ー 50万円/個×10個=500万円

このように、売上高が増加すると限界利益も同様に増加します。もしも限界利益がマイナス値をとった場合は、赤字であることを意味するため、変動費の低減や事業の停止といった対応を検討します。

限界利益率の計算式

限界利益率(%) = (限界利益 / 1単位あたりの売上高) × 100

先ほどと同様に、1個あたりの売上高が100万円、変動費が50万円の製品Aの場合、1個あたりの限界利益率は以下のように求められます。

限界利益率={(100万円 ー 50万円)/ 100万円 }×100=50%

限界利益率が高い製品・サービスは、効率よく会社の利益を増やすことができます。しかし、限界利益率が低いものは、多く販売できたとして利益額の増加には貢献しないことがわかります。
そのため、限界利益率をもとに、販売に注力すべき製品・サービスを見極める分析が行われます。

なお、先述した「損益分岐点」となる売上高は、限界利益率をもとに算出します。

損益分岐点= 固定費/限界利益率

先述の製品Aを販売する会社で、固定費が年間200万円かかっている場合、損益分岐点となる売上高は「200万円÷50%」で400万円です。

では実際に、限界利益率はどれくらいになるのが一般的なのでしょうか。次章では、その目安値をご紹介します。

限界利益率の目安値とは?

「ザイマニ」によると、2022年における業種別の限界利益率の平均値は次のように発表されています(※)。

【限界利益率の平均値(%)】
全業種    :33.3
水産・農林業 :23.6
卸売業    :20.9
食料品    :28.0
小売業    :45.4
建設業    :16.8
機械     :28.9
サービス業   :41.6
情報・通信業  :44.4

お、上記の表では、一部の業種を抜粋して記載しています。その他の業種については、以下のサイトをご参照ください。

※出典:「ザイマニ|財務分析マニュアル」2024年1月時点のデータをもとに当社作成

製造業における限界利益率の求め方の例

限界利益率の求め方として、製造業における具体例を参考にしましょう。

■条件

・売上高20億円

・材料費5億円

・外注費3億円

・人件費3億円

・機械のリース料5億円

■変動費

材料費5億円と外注費3億円

■固定費

人件費3億円と機械のリース料5億円

■限界利益率の計算式

粗利=売上高-売上原価(変動費+固定費)

20億円-(5億円+3億円+3億円+5億円)=4億円

限界利益=売上高-変動費

20億円-(5億+3億円)=12億円

粗利益とも呼ばれる利益を算出するには、売上高から変動費や固定費の総額である売上原価を差し引きます。

そのため、上記の製造業における利益は4億円であり、限界利益は12億円です。

なお製造現場の場合は、人件費や機械のリース料を固定費か変動費として扱うかで、限界利益に大きな差が生じやすいです。

限界利益とその他の利益の違いは?

限界利益の他に、次のような利益があります。

  • 売上総利益
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益

それぞれの特徴を確認して、限界利益の違いを確認しましょう。

売上総利益

売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた利益で、商品やサービスが生み出す基本的な収益力を示します。

売上総利益の計算式は、次のとおりです。

売上総利益=売上高-売上原価

限界利益は売上高から変動費のみを差し引くのに対して、売上総利益は変動費と売上費を含むすべての売上原価を差し引く違いがあります。

営業利益

営業利益は、企業が主な事業から得た利益を指し、収益性や財務状況を示す指標です。

営業利益の計算式は、次のとおりです。

営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費

限界利益と営業利益の違いは、広告費や人件費などの固定費を差し引く点が異なります。

限界利益は、売上高から変動費を差し引いた値なので、固定費が含まれており、「営業利益=限界利益-固定費」でも算出できます。

経常利益

経常利益は、企業の主な事業の他に金融収益などの財務活動を考慮した指標です。

損益は本来、本業とその他の事業に分けて計算し、本業で得た利益を「営業利益」、その他の事業で得た利益を「営業外利益」に区別します。

経常利益の計算式は、次のとおりです。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

経常利益は、営業利益と営業外収益を足して、営業外費用から差し引くことで算出できます。

税引前当期純利益

税引前当期純利益は、対象の期に納税する前の利益を示す数値です。

経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いて算出します。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

税引前当期純利益は、最終的な利益ではなく、単年の経営成績を図る指標です。

限界利益は、事業の収益性やコストを示すのに対して、税引前当期純利益は企業全体の収益性を評価する点が異なります。

当期純利益

当期純利益とは、対象期における企業の最終的な利益を示します。

限界利益が、商品やサービスによる収益性を示すのに対して、当期純利益は最終的な財務成績の結果を表す指標です。

当期純利益の計算式は、次のとおりです。

当期純利益(純利益)=税引前当期純利益-法人税等(法人税+法人住民税+法人事業税)

当期純利益は、最終的な財務成績を表すため、マイナスの場合は対象期が赤字であることを表します。

財務会計ツールで、面倒な入力・レポート作成などを効率化

「限界利益」「限界利益率」をはじめ、さまざまな指標をもとに企業の経営状況を管理する財務会計業務。

従来はExcelなどを用いて集計・管理をしている企業も多くありましたが、複雑な計算式の入力・正確な集計などに業務負担がかかりやすい問題がありました。

こうした問題にお悩みの場合は、財務会計ツールの導入が効果的です。システムの活用でデータ入力・確認の手間や入力ミス・計算ミスが低減でき、管理の正確性を向上しながら業務負担を下げることが可能です。

また、財務会計ツールには、 経営陣に報告するためのレポートを自動作成する機能など、業務効率化につながる便利な機能も豊富です。

DAIKO XTECHでは、財務会計業務の「効率化」や「生産性向上」に役立つ2つのツールをご用意しています。具体的な特長や導入効果にご関心のある方は、ぜひ以下より詳細をご覧ください。


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寺本 仁
この記事を監修した人
会計・人事給与システムのソフト開発会社にてキャリアをスタート。
システム導入支援に従事後、営業部門に転じ、システム活用事例や課題解決事例に立脚した顧客提案を推進。
DAIKO XTECHに入社後は、勤怠管理や連結会計、経理部門のDX化など、ERPソリューション全般に精通したスペシャリストとして活躍中。
DAIKO XTECH株式会社
ビジネスクエスト本部
インダストリー推進部
業務ソリューション課
寺本 仁

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