2018年6月に「働き方改革関連法案」が成立するなど、政府の主導により「働き方改革」が進められています。働き方改革は具体的に何を目的とし、また、企業は働き方改革を実現するために何を実施すればよいのでしょうか。
この記事では政府の目指す働き方改革の概要や現状の課題にあわせ、企業ができる働き方改革の1つである「RPA」の概要やメリットについてご紹介します。
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企業にも大きく関係のある「働き方改革」とは
現在の日本は深刻な少子高齢社会であり、年々生産労働人口が減少しています。生産労働人口の減少が続けば国全体の生産力が低下し、財政が悪化すると考えられています。この問題を解決するために、政府は「一億総活躍社会」の実現を掲げ、その具体策として働き方改革を進めています。
一億総活躍社会とは、男女の差や傷病のあるなしに関係なく、全ての人が個性を尊重され能力を発揮できる社会のことです。全ての人が生きがいをもって働くことで経済が成長し、成長した成果をもって子育て支援などの社会的な制度が改善され、その恩恵を全ての人が受け取ってまた成長につながる…という「好循環」を目指しています。この一億総活躍社会を実現するために進められているのが、多様な働き方を実現し、格差をなくして労働環境を改善しようという働き方改革です。
働き方改革を進めることで、これまでは働けなかった層が働けるようになり、すでに働いている層の労働生産性が上がると期待できます。これにより政府は税収を増やすことができ、企業は十分な人材を確保できるようになり、より多くの労働者が自身の望む形で働けるようになります。
働き方改革を実現するための課題
働き方改革を実現するために、政府は2017年3月に働き方改革実行計画を公表しています。ここでは政府の掲げる働き方改革の目的を整理し、実行計画で示されている課題のいくつかをご紹介します。
働き方改革の目的
少子高齢化により、労働力の主力となる15~64歳の人口が著しく減少しており、総人口も2050年には9,000万人前後まで減少するといわれています。
働き方改革とは、人口減少による労働力不足を解消するための取り組みであり、働く人々の視点に立って労働制度を改革し、働き手の増加や労働生産性の向上を目指します。これにより多くの人々が豊かに働けるようになり、消費が促進され、社会基盤が整って人々に還元されるという一億総活躍社会が実現されます。
目的を達成するための課題
働き方改革を実現すれば、労働力の確保にもつながり企業にも大きく関係します。働き方改革を進める具体的な方法として参考になるのが、政府が公表した働き方改革実行計画です。
ここでは、そのうち3つをピックアップしてご紹介します。
1.働きたい意欲のある高齢者や女性の就労促進
働きたい意欲のある高齢者が働ける環境を整え、出産・育児・介護によって発生する女性の働き方の制限をなくし、働き手の増加を目指します。高齢者が働きやすい環境に関しては、継続雇用の延長・定年延長・高齢者と企業のマッチング支援が重要となります。
2.非正規社員と正社員の格差を改善
非正規社員と正社員の格差を縮めることで、さまざまな理由で正社員としては働けない層の活躍の幅が広がり、生産性の底上げにつながります。非正規社員は労働者全体の4割を占めているのが現状です。この層の待遇を見直して改善することで、より多くの社員が「自身の能力が認められている」という納得感を得られるようになります。
3.長時間労働の見直し
長時間労働は健康面だけでなく、仕事と家庭の両立や時間単位あたりの労働生産性にも影響してくる問題です。
これまでの法律では、労使の合意があればいくらでも残業ができてしまっていたため、2018年6月の働き方改革関連法案の可決により残業時間の上限が定められるなどの改善が行われています。企業としても、長時間労働を見直しつつ、管理職にしわ寄せが行ったり目標達成に支障が出たりしないように業務内容を改善したりする必要があります。
働き方改革で注目されているRPA
前項で挙げた働き方改革の課題のうち、長時間労働の見直しを実現するものとして「RPA」が注目されています。
RPAは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略称で、ロボットによる業務自動化を意味しています。具体的には、パソコン業務のうち、決まった操作を繰り返す「定型的な業務」を自動化することが可能です。
これまでも決まった操作を自動化する方法はありましたが、複数のアプリケーションにまたがる作業を自動化するには既存環境に手を入れる必要があり、ハードルが高いものでした。RPAであれば、ツールを導入するだけで複数のアプリケーションにまたがる作業もまとめて自動化できるメリットがあります。
生産性の向上も、RPA導入のメリットの1つです。RPAを導入し単純作業を減らすことで、単純作業に従事していた社員の労働時間の多くを削減できます。その時間をより価値の高い仕事に回すことで、「生産性の向上」が期待できるのです。
RPAは決まった操作が多いほど導入効果が高く、大幅な効率化を実現できます。例えば、メール受信から基幹システム入力までの一連の処理を自動化した企業では、年間約480時間の業務時間を削減できたという結果が出ています。
また、大量のデータを決まった操作で処理する業務を得意としますので、バックオフィス業務でも高い効果を発揮します。
働き方改革に取り組み、労働生産性アップを目指そう
企業で働き方改革を実現するためには、労働環境を改善しつつ生産性を上げる取り組みが必要です。RPAを導入すれば、社員1人当たりの単純作業の量を減らし、より価値の高い仕事を割り当てることができます。ただし、今企業内で抱えている課題に対し、本当にRPAが一番の解決策であるかは十分に吟味する必要があります。導入コストばかりがかさみ、大きな成果が得られないのでは意味がありません。