在庫管理の見える化は、過剰在庫と欠品を防ぎ、属人化やヒューマンエラーを排除できるため企業の業績向上に大きく寄与します。
しかし、実際に見える化するには相応の知識を習得し、正しい手順をふまなければなりません。
本記事では、在庫管理の見える化に関する概要と、メリット、手順、さらに在庫管理システム選定のポイントについて解説します。

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在庫管理の見える化とは?
在庫管理の見える化とは、以下の2点を指します。
- 商品や資材の見える化
- 在庫情報の見える化
在庫管理では「どこに」「何が」「どれくらい」「どのように」に収納されているかを正しく把握しなければなりません。
また倉庫内だけでなく、調達、製造、物流、営業の各部門がリアルタイムで同じ情報を共有できることが重要です。
商品や資材の見える化
在庫管理の見える化の一つ目は、在庫となる商品や資材が保管されている倉庫内の状況を可視化することです。
「何が」「どこに」「いくつ」「どのように」保管されているかをリアルタイムで把握できなければなりません。
その情報を調達、製造、営業など他部門と共有する必要があるからです。
商品と資材を見える化するには、それらの住所である保管場所を決めるロケーション管理が欠かせません。
商品や品番ごとにどの棚の何段目に収納するのか、受注後はどの商品からピッキングするのかを正確にルール化します。
ただやみくもに収納すれば良いのではなく、よく売れる商品や賞味期限が短い商品などは取り出しやすい位置に、落下の危険性が少なくて軽量なものは高い場所に、という具合に商品にとって最適な住所を指定しなければなりません。
商品のサイズや重量、保管倉庫の広さや棚の高さなどに応じて、フォークリフトや自動搬送ロボット、コンベアといったマテハン機器を利用します。
またマテハン機器の活用には危険が伴うため、運行ルールの取り決めと周知、危険回避の研修や訓練なども定期的に行う必要があります。
在庫情報の見える化
在庫情報の見える化は、倉庫内の在庫の動きを各部門でリアルタイムに共有できるようにシステム化することです。
こうすることで、例えば予期せぬ大量注文を獲得した際に、現在の在庫数、納期までの入荷予想数などが確認できます。
正確な在庫情報が共有できれば、そこで受注するのか、生産計画の見直しを要請するのかといった意思決定が可能になります。
在庫情報の見える化には、在庫管理システムの導入が欠かせません。
在庫管理システムの主な機能は、以下の通りです。
- 入出庫管理
- 検品
- 棚卸し
- 返品管理
- 在庫分析
- マスター管理(マスター:製品、お客さま、社員、在庫区分といった基本情報)
- データ抽出
そして、入庫から出庫までの動きをつぶさに把握するには、バーコードやQRコード、RFIDタグや、それらを読み取りワイヤレスでデータを送信できるハンディーターミナル、スマホなどの専用端末を用います。
また最近では、AIカメラを使った在庫管理手法も導入され始めています。人がいなくとも、AIカメラが急激な在庫減を把握するとアラームで通知するので、欠品を回避できます。
在庫管理の見える化は難しい?
在庫管理の見える化は、決して容易ではありません。
その理由は、以下の通りです。
- 適正なロケーション管理が困難
- 入荷・検品・出荷のルール化と周知が困難
- マテハン機器が一部の社員しか使えない
- マテハン機器や在庫管理システムが高額
- 在庫管理システムの導入に時間と手間がかかる
在庫管理の見える化には、マテハン機器や在庫管理システムの導入が有効ですが、まとまった予算が必要になるため容易とはいえません。
在庫管理を見える化するメリット
在庫在庫管理の見える化によるメリットをご紹介します。
在庫品質の向上
商品や資材の状態が正確に把握できれば、在庫品質が向上します。
見える化が曖昧だと、賞味期限切れや品質劣化、破損や盗難などに気付けません。
特に過剰在庫になると、商品管理が行き届かなくなるので品質低下や廃棄ロスのリスクが増します。
在庫管理が見える化できれば、入庫日が分かるため古いものから順次出荷でき、在庫品質を保持しやすくなります。
コスト削減の促進
倉庫内の作業が効率化され、コスト削減が実現します。
出荷指示があった時点で対象製品がどこにあるかが分かるため、最短ルートでピッキングできます。
見える化できていない場合は、社員の勘や記憶を頼りに探すしかありません。すると、ピッキング時間にムラができ、社員にも余計な負担がかかるでしょう。
それらが解消されると、人件コストを抑制できます。
また、見える化によって倉庫内が効率的に整理・整頓されるので、収納スペースを確保する手間が大幅に省けます。
ヒューマンエラーと属人化の解消
人頼りの管理では、カウントミス、記入・入力ミス、ロケーションの勘違い、ピッキングミスなどのヒューマンエラーが付きものです。
また、キャリアがある社員に頼りきりになっている場合、特定の人物が休んだり、退職したりすると業務が停滞してしまいます。
在庫管理が見える化できると業務の平準化が進むので、だれでも同じ精度のパフォーマンスが可能になります。
ベテラン社員の休暇や休憩中でも、お客さまや他部門からの問い合わせに的確に対応できます。
機会損失の防止
在庫に欠品があると、せっかく売れるはずの商品が販売できず利益を失ってしまいます。
在庫管理を見える化すれば、適切なタイミングで入庫指示ができるため欠品を防げます。
在庫管理システムの中には需要予測機能をもつタイプもあり、データに基づいたオーダーによる適正在庫の維持が可能です。
在庫管理を見える化する手順
在庫管理の見える化の手順は、「ロケーション管理」と「在庫管理システムの導入」がポイントとなります。
ロケーション管理を行う
ロケーション管理には、「固定ロケーション」と「フリーロケーション」、「ダブルトランザクション」の3種類があります。
意味 |
向いているタイプ |
|
固定ロケーション |
製品の保管場所を固定し、在庫数や製品の状態の把握を容易にする |
製品の種類が少ない場合や、特定の温度で管理する商品・定番商品が主流のタイプ |
フリーロケーション |
空いている棚に臨機応変に収納することで、保管スペースを有効活用する |
製品の種類や品番が頻繁に入れ替わるタイプ |
ダブルトランザクション |
固定ロケーションとフリーロケーションの併用 |
製品の種類や傾向が異なり、管理方法を分けることでピッキング効率や保管効率が高まるタイプ |
在庫管理に休みはなく、24時間・365日フル稼働というケースも珍しくありません。
タイムパフォーマンスの高さが要求される現代では、ロケーション管理の精度が競争力を左右するといえます。
そのため、自社にとって最適なロケーションの決定は非常に重要なテーマです。
また、ロケーションを決めるにあたっては、製品の日焼けや劣化を起こすリスクがあるため、日当たりや通気性にも配慮しなければなりません。
さらに出庫にかかる時間を短縮のため、社員やマテハン機器が最適ルートでピッキングできる動線を検討することも不可欠です。
その際は、安全のために適切な通路幅を確保することも忘れてはなりません。
在庫管理システムを導入する
ロケーションを決めると同時に在庫管理システムの導入を進めます。
まず現在の在庫管理の問題点を社内ですべて洗い出します。
その上で理想の管理体制を考案し、実現が可能な在庫システムを選定します。
クラウド型か社内にサーバーを設置するオンプレミス型かで、予算も工数や納期も異なるので、検討が必要です。
クラウド型はデータ管理やシステムアップデートが楽でコストも低く抑えられるメリットがあります。
オンプレミス型はイニシャルコストが高額になるものの、カスタマイズ性が高く、既存システムとの連携が容易という利点があります。
また、新システムへの移行による在庫管理に停滞を防ぐため、時期とタイミングへの配慮が必要です。
在庫管理システム選定のポイント
最適な在庫管理システムを選定するためのポイントを解説します。
自社の運用に適合している
在庫管理システムは、自社の運用に適合していることがもっとも重要です。
例えば、倉庫が多拠点に配置されている場合は、リアルタイムに各倉庫の在庫状況を把握できることが求められます。
また多品種少量型のビジネスの場合は、商品情報の登録をスピーディーかつ正確に行う必要があります。
これらのような自社の状況を踏まえた上で、システムを選ぶことが大切です。
在庫システムの中には業界特化型もあり、サービスによっては違和感なく導入できるので検討してみるのもおすすめです。
機能拡張性がある
在庫システムは、状況やニーズに合わせて機能を追加したり変更したりする必要があります。
そのため処理能力や台数を増やすといった機能拡張性のあるシステムを選択するのがおすすめです。
サポート体制が充実している
特に導入当初は、予期せぬエラーが起きる可能性があります。
そのためサポートが充実しているサービスがおすすめです。
夜間も稼働させるなら24時間体制だと安心でしょう。
サポートにかかる追加費用についても事前に調べておくようにします。
まとめ
在庫管理を見える化すると、過剰在庫や欠品が防止できます。廃棄ロスや機会損失の抑制による業績向上や業務効率化も可能となります。
ただし、実効性を高めるにはロケーション管理の徹底と適切な在庫システムの導入が欠かせません。
下記の「在庫管理のミス・ムダを減らす!3つの課題解決BOOK」では、在庫管理の業務効率を阻む3つの課題について解説しています。
在庫管理業務の効率化を推進する方法や、ミスや無駄の防止、システムの活用についてもご紹介しているので、在庫管理の見える化にぜひお役立てください。