企業会計には、「財務会計」と「管理会計」があります。財務会計はすべての企業に作成義務がありますが、管理会計は任意です。
また、財務会計には特定のルールがあるのに対して、管理会計は企業ごとの独自基準で作成されます。それぞれに目的も形式も異なるため、違いを正確に理解する必要があるでしょう。
今回は、管理会計の主な業務内容や財務会計との違い、導入のメリット・デメリットについて解説します。
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管理会計とは
管理会計とは、経営トップや幹部が意思決定を行うために作成する社内向けの会計を意味します。ルールや形式に決まりはなく、企業ごとに独自の基準で作成されます。
管理会計の目的は、企業が置かれている状況を必要なKPI(業績評価指標)に基づいて正確に把握することです。これにより、戦略立案や新規事業参入、リスク管理、課題解決などにおいて経営者が先を見据えた正しい経営判断ができるようになります。
管理会計の主な業務
管理会計の主な業務は以下の4つです。
- 経営分析
- 予実管理
- 原価管理
- 資金繰り管理
経営分析
管理会計の中で主軸となるのが経営分析です。
企業の現状を、以下の7つの観点で評価します。
- 収益性
- 安全性
- 生産性
- 成長性
- 効率性
- 損益分岐点
- 債務償還能力
特に、すべての企業にとって利益がゼロになる損益分岐点の把握は欠かせません。
売上から変動費を差し引いた限界利益を算出し、そこから給与やオフィス家賃といった固定費をマイナスすると利益が計算できます。この数値がゼロになる場合の売上高(=損益分岐点)を上回ることが健全経営の前提です。
こうした経営判断に必要な数値を算出するためにあらゆるデータを使用して分析にあたるのが、管理会計上の経営分析です。
予実管理
予算と実績を比較し、達成率を把握・分析するのが予実管理です。具体的には、以下の項目になります。
- 売上予算
- 利益予算
- 経費予算
- 原価予算
売上予算が達成できているものの利益予算が赤字であれば、経費予算がオーバーしていることがわかります。原価の高騰が要因となっているケースもあるでしょう。
こうした課題を浮き彫りにし、次の目標達成や解決に向けた軌道修正を促すのが予実管理の重要な役割です。
原価管理
原価管理とは、特定の製品の製造やプロジェクト完了にかかるコストを管理することです。
原価の中身は業界や業種によって異なりますが、材料費、労務費(人件費)、経費などで構成されます。
具体的には、原価の目標額を設定し、実際にかかった原価と比較・分析を行ってその後の業務改善や業務効率化に役立てます。
先の予実管理とも密接に関連しているといえるでしょう。
資金繰り管理
収入や支出にともなう日々の現預金の動きを管理するのが資金繰り管理です。
資金繰り管理を細やかに行うことにより、資金不足リスクを前もって把握できます。
企業会計では、損益の発生と現金の出入りが必ずしも一致しません。売掛金や未収金、買掛金などにより損益よりも後に入出金が発生することが珍しくないからです。
こうした債権や債務の存在を明確にすることにより手元資金の流れが把握できるので、特に多額の資金が出入りする前後は、厳正な資金繰り管理が求められます。
財務会計とは
財務会計とは、決算の度に企業が作成する貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書といった財務諸表からなる会計を指します。
財務会計は法律で義務付けられており、一定のルールに準拠して作成しなければなりません。
財務会計の目的
財務会計は、株主や債権者、投資家といったステークホルダーや税務署に向けて財務状況を開示するのが目的です。
財務会計の機能
財務諸表は監査法人や公認会計士の監査を受けるように義務付けられているため、一定以上の信頼性が担保されています。
ステークホルダーは、その信用のもと財務の成績表である財務諸表を精査して今後の債権回収の方法を決めたり、投資の参考にしたりします。
例えば株主は、財務会計の内容から収益性、成長性、健全性などを確認して今後も投資を続けるべきか、株を売却するかを検討します。業績や経営方針に疑問や不満があれば株主総会で問題提起したり意見を述べたりすることもあるでしょう。
また、納税のために正確な税金を算出するのも財務会計の重要機能の一つです。
管理会計と財務会計の違い
管理会計と財務会計の大きな違いは、前者が経営陣などが自社の経営管理に使用する社内向けであるのに対して後者がステークホルダーなどに財務状況を報告するため、社外向けである点です。
作成時期や期間は、管理会計が任意(週・月・四半期など)であるのに対し、財務会計は年一回の決算時期(上場企業は四半期ごとに開示)となります。
また、財務会計はあくまで企業の成績を開示するものですが、管理会計は売上向上や競争力強化、リスクヘッジなどのための意思決定をサポートするのが目的です。
管理会計のメリット
管理会計のメリットは以下の4点です。
- 経営状況の見える化ができる
- セグメント別の評価ができる
- 生産性の向上が実現する
- 資金繰り管理により経営健全化に役立つ
経営状況の見える化ができる
管理会計を導入すると、企業や各部署、従業員が置かれている状況を可視化できます。
売上、損益、コスト、原価に関するKPIが、週ごとや月ごと、ものによっては毎日確認できるため、成果の有無や問題点などを迅速かつ正確に把握することが可能です。
例えば小売業なら、発注数と在庫数、欠品数、売上数、廃棄量を連動させて数値やグラフで可視化することにより、発注の精度向上に役立てるケースがあります。
売上数は、季節や曜日・時間帯、店舗エリアのイベント、天候、インフルエンサーや要人の発言・行動などさまざまな要因で変動します。これらの要素を総合的に考慮して適切な発注を行うには、管理会計が欠かせません。
管理会計には企業ごとのオリジナリティが反映され、実用性の高い基準を設けることによって結果が如実に表れます。
セグメント別の評価ができる
管理会計は、事業ごと、あるいは地域や顧客単位、製品・サービスごとといったセグメント別の評価にも有効です。
各セグメントにおける売上や損益、債権回収状況などを定期的に把握することにより、改善点や方針転換の是非を判断するのに役立ちます。
生産性の向上が実現する
管理会計を導入すると、生産性向上にも寄与します。
企業によっては「時間当たり採算制度」を管理会計として導入している例があります。
従業員やプロジェクトの生産性を時間単位で評価し、費用対効果を精査するのが目的です。
その結果で従業員の給与を算定するケースもあります。
採算結果が悪ければ、目標値を決めて業務改善に取り組む足がかりにも活用できます。
時間を効率的に活用しているという認識があっても、部署や従業員ごとにその感覚はまちまちです。時間当たりで割り出すと効率化の余地があると判明することが少なくありません。
管理会計は、属人化に起因する思い込み、思考や感情によって曖昧に変化する偏見などを排除し、現実的な成果に直結する経営判断を可能にするのです。
資金繰り管理により経営健全化に役立つ
管理会計は、正確な資金繰り管理により経営の健全化に寄与します。
資金繰りの指標には、流動比率、在庫回転期間、当座比率、債務償還年数といったさまざまな指標があります。
これらを有効に活用することにより資金ショートリスクやコストの無駄などが前もって把握できるため、経営を健全化できます。
管理会計システム導入のポイント
管理会計を導入するには、管理会計システムの活用が有効です。
管理会計システムを選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
自社のニーズに合っているか |
自社の管理会計に適合するデータの収集と算出、分析が可能である |
コストが適切か |
初期費用とランニングコストが予算の範囲内である |
導入環境は整備されているか |
システムを導入できる端末や通信環境が整備されている |
サポートがあるか |
導入時やトラブルの際のサポートが充実している(時間帯・費用・電話や現場におけるサポートがあるかなど) |
管理会計導入で業績アップとリスク管理の徹底を目指そう
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