給与デジタル払いとは?メリット・デメリットや導入の流れ、注意点などを解説

2023年4月に解禁された「給与デジタル払い」。
本記事では、給与デジタル払いとは何か、メリット・デメリットにはどのようなものがあるか、導入ステップ・注意点など、基本情報をまとめて解説します。

給与デジタル払いとは

「給与デジタル払い」とは、会社から従業員に支払う給与を銀行口座ではなく資金移動業者のアカウントに振り込む仕組みのことをいいます。

資金移動業者とは、銀行以外で送金サービスができる登録事業業者のことです。
代表的な例としては、「PayPay」「LINE Pay」などのスマホ決済アプリが当てはまります。

つまり、従来なら銀行口座を介して受け取っていた給与を、給与デジタル払いでは銀行口座を介さずにスマホ決済アプリで電子マネーとして受け取ることができるようになります。

給与デジタル払いは、会社・従業員の双方にとって強制されるものではありません。
あくまでも給与受取の選択肢の一つとして選べるというものになります。
次章では、給与デジタル払いができる対象をご紹介します。

給与デジタル払いができる対象

  1. デジタル給与の支払先として利用できるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者のみ

    デジタル給与の支払先として利用できるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者のみ、支払先として利用できるのは厚生労働大臣により指定移動資金業者と認められている資金移動業者のみです。

    賃金のデジタル払いが認められる指定資金移動業者数は、4社(令和7年12月31日現在)です。

    • PayPay株式会社
    • 株式会社リクルートMUFGビジネス
    • 楽天Edy株式会社
    • auペイメント株式会社

    なお、資金移動業者として登録されている事業者数と、賃金のデジタル払いに利用できる指定資金移動業者は範囲が異なります。
    指定資金移動業者とサービス名称は、厚生労働省Webサイトの指定資金移動業者一覧で確認してください。


    ▼出典:金融庁「資金移動者登録一覧」
    https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/shikin_idou.pdf

  2. 金融機関の口座(銀行口座)を開設している人しか受け取れない
    給与デジタル払いを利用する場合でも、銀行口座を持っている必要があります。
    そのため、銀行口座を作ることが難しい外国人や日本の銀行口座を保有していない方の場合、デジタル給与は利用できません。

給与デジタル払いの開始時期

給与デジタル払いは、昨今のキャッシュレス化の高まりを受けて、2022年11月に厚生労働省から「給与デジタル払いに関する労働基準法の改正省令」が公布され、2023年4月に解禁となりました。

その後、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(PayPayなど)を通じて、2024年8月以降にソフトバンクグループなどで一部導入が始まり、一般企業にも広がりを見せています

デジタル給与払いを導入する4つの理由

デジタル給与払いは、単なる新しい支払い方法ではありません。制度設計の背景や調査結果を見ると、企業・従業員双方にとって導入を検討する合理的な理由があります。ここでは、厚生労働省の資料を基に、導入が進められる4つの理由を整理します。

賃金の支払い方法に新たな選択肢を提供できる

賃金のデジタル払いは、従来の「現金」「銀行口座振込」に加わる新しい選択肢として制度化されました。労働基準法施行規則の改正により、一定の要件を満たした指定資金移動業者の口座への賃金支払いが認められています。

重要なのは、デジタル給与払いが強制ではない点です。従業員の同意を前提としつつ、支払い方法の選択肢を広げることで、個々のライフスタイルに合った受け取り方を実現できます。

キャッシュレス化に対応した利便性の向上

厚生労働省が実施した調査では、労働者の多くが日常的にQRコード決済や電子マネーを利用している実態が明らかになっています。こうした環境下では、給与をデジタルで受け取れる仕組みは、チャージの手間を省き、支払いまでをスムーズにする手段です。

現金を引き出して持ち歩く必要がなくなる点や、家計管理がしやすくなる点をメリットとして挙げる声も多く、利便性向上は導入理由の一つです。

人材確保・福利厚生の観点で評価されやすい

企業調査では、賃金のデジタル払いを「人材確保」「福利厚生の充実」という観点で評価する企業が一定数存在します。特に若年層を中心に、柔軟な働き方やデジタル対応を重視する傾向があり、制度対応そのものが企業イメージに影響する場面も増えています

制度があるから必ず使うわけではありません。しかし、選択肢として用意されていることが、企業の姿勢を示す要素です。

安全性を確保した制度設計がされている

賃金は労働者の生活の糧であることから、デジタル給与払いでは安全性確保が重視されています。指定資金移動業者には、口座残高の上限設定や、破綻時における迅速な弁済体制など、厳格な要件が課されています。

そのため、制度上は銀行口座振込と同程度の確実性を担保する仕組みが整えられており、企業・従業員双方が安心して利用できる設計です。

給与デジタル払いのメリット

会社側

■銀行振込より手数料が安い
一般的に、資金移動業者への口座の送金手数料は銀行口座への振り込み手数料よりも安く設定されている場合が多いため、給与振り込み時の手数料を削減できる可能性があります。

■企業イメージが向上する
「給与デジタル払いに対応している」ということ自体が、新しい制度にも積極的に対応しているというイメージにつながるため、企業のブランドイメージが向上し採用力の強化につながる可能性があります。

従業員側

■キャッシュレス決済での利便性の向上
これまでスマホ決済アプリで支払いをするためには、アプリ内で紐づけた銀行口座から資金移動(チャージ)をしてから利用する必要がありましたが、給与をデジタル払いに切り替えると、そのチャージの手間がなくなります。

■給与の一部だけデジタルで受け取ることもでき、管理しやすくなる
デジタル給与を受け取る範囲・金額は、給与デジタル払いを利用する旨の同意書を取り交わす際に自身で設定できます。
そのため、「毎月の給与はデジタル払い、賞与は銀行口座に振り込み」「給与のうち半分はデジタル払い、半分は銀行口座」など、従業員側の資金管理が行いやすくなります。

給与デジタル払いのデメリット

会社側

■給与支払いにおける手続き業務の増加
給与デジタル払いは、強制ではなくあくまでも希望者のみの対応となるため、デジタル払い・銀行口座振り込みの2つの方法での支払いと管理を行うことになります。

また、前述の通り給与の一部分だけをデジタル払いにして残りは銀行口座払いにする、といったことも可能になるので、それらに対応するための業務が増加します。

■管理コストの上昇
給与デジタル払いを利用するために同意書を作成・取り交わしたり、誰が・どの資金移動業者を利用して・どの範囲/金額をデジタル払い/銀行振り込みにするのかといった、従業員ごとの支払い情報を管理したりする必要があるため、従来よりも管理コストが上昇します。

従業員側

■口座入金額の上限が100万円まで
資金移動業者の口座にデジタル払いできる金額は、残高上限が100万円までと定められています。そのため、残高上限が100万円を超過してしまう分の振り込み残金は、自動的に銀行口座に振り込みされることとなります。

■スマホ紛失や不正出金などのリスク対策
多くの場合、デジタル払いされた給与はスマホ決済アプリ等で利用することとなりますが、スマホの紛失・盗難などの際には給与を利用することができなくなる事態も考えられるため、その際の代替手段やセキュリテイ対策についても十分検討する必要がでてきます。

給与デジタル払い導入の流れ

給与デジタル払いは、前述の通り「厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者」で、「同意書を取り交わした、希望する従業員」に対してのみ行えます。
そのため、実際に給与デジタル払いを開始するためには以下のステップが必要です。

①指定資金移動業者が登録申請、審査を受ける
②指定資金移動業者が決定する
③労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、労使協定を締結する
④希望する従業員を募り、同意書を取り交わす
⑤賃金のデジタル払いを開始する

給与デジタル払い導入に向けて準備すべきこと

上記のステップが必要になることを踏まえ、導入を検討する会社では給与システムや運用フローなどさまざまな検討事項・対応事項が発生します。導入を検討する会社は、以下の準備をしておくと導入がスムーズです。

従業員への社内アンケート実施

まずは自社で本当に給与デジタル払いを導入する必要があるのかどうか検討するために、従業員のうちどれくらいの人数に給与デジタル払いの利用意向があるかを確認しましょう。

使用する給与システムの仕様確認

給与システムを活用している企業であれば、利用中のシステムがデジタル払いにも対応しているかどうかの確認が必要です。もしも対応していないシステムであれば、乗り換え等も検討が必要となります。

労使協定の締結

給与デジタル払いを導入するには、労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、労使協定を締結します。ここで会社と従業員の間での指定資金移動者の選定について合意を取ることとなります。

就業規則の改定

既存の就業規則で給与に関する規則を定めている項目があるはずですので、そちらの内容もデジタル払いに対応するかたちで内容を見直します。
給与デジタル払いを導入するうえでの規則違反にならないよう、意見書の送付や届け出の提出が必要である旨などを追記する必要があります。

給与デジタル払い希望者の同意書を提出

給与デジタル払いを利用したい従業員に、同意書を書いて提出してもらいます。

給与デジタル払いの同意書は、現時点では定まった様式はないものの以下のような項目を記載する必要があります。

・給与デジタル払いを利用する旨の同意
・資金移動業者の口座番号
・代替口座情報(※)
・デジタル払いとする給与額
・支給開始希望時期

※資金移動業者の口座にデジタル払いできる金額は残高上限が100万円までと定められており、給与支払いによって口座の残高上限が100万円を超過してしまう場合は、超過分の振り込みを銀行口座に行う必要があります。その際に利用する代替口座情報を予め指定してもらいましょう。

給与デジタル払いの注意点

給与デジタル払いは利便性の高い制度である一方、導入・利用にあたっては押さえておくべき注意点があります。特に、賃金は生活の基盤であるという前提のもと、制度上も慎重な運用が求められています。

会社側

会社が給与デジタル払いを導入するには、労使協定の締結と、希望する従業員からの個別同意の取得が必要です。 つまり、従業員がデジタル払いを選ぶか、従来どおり銀行口座で受け取るかを自分で選べるということです。

また、賃金のデジタル払いに利用できるのは、厚生労働大臣の指定を受けた指定資金移動業者に限られます。指定外のサービスを給与支払いに用いることはできないため、対応サービスの事前確認が必要です。

実務面では、デジタル払いと銀行口座振込が併存しやすく、従業員ごとの支払方法・支給額の管理が複雑化します。事務フローと管理体制を整えないまま進めると、作業負担やミスの増加につながります。

従業員側

従業員が給与デジタル払いを利用する場合、必ず銀行口座(指定代替口座)を保有している必要があります。口座残高が上限額を超えた場合や、万が一資金移動業者が破綻した場合には、この代替口座を通じて賃金を受け取るためです。

資金移動業者の口座には残高上限が設定されており、給与全額を必ずデジタルで受け取れるとは限りません。高額な給与や賞与については、銀行口座への振込と併用されるケースが想定されます。

スマートフォンの紛失や不正利用といったリスクも考慮しなければなりません。制度上は補償体制が整えられていますが、日常的なセキュリティ対策や利用方法の理解も、従業員自身に求められます。

給与デジタル払い対応サービス一覧

給与デジタル払いに利用できるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者のサービスのみです。すべてのスマートフォン決済アプリや電子マネーが対象となるわけではないため、対応サービスの確認が欠かせません。

指定資金移動業者は、賃金の確実な支払いを担保するため、口座残高の上限管理、破綻時の迅速な弁済、不正利用への補償体制など、厳格な要件を満たした事業者に限定されています。

主な対応サービス例

厚生労働省が公表している指定状況によると、以下のような資金移動業者が給与デジタル払いに対応しています。指定状況は随時更新されるため、最新情報の確認が必要です。

サービス名

運営会社

指定日

特徴

PayPay

PayPay株式会社

令和6年8月9日

受入上限額:20万円

保証期間:三井住友海上火災保険株式会社

リクルートMUFGビジネスのサービス

株式会社リクルートMUFGビジネス

令和6年12月13日

受入上限額:30万円

保証期間:株式会社三菱UFJ銀行

楽天Edy

楽天Edy株式会社

令和7年3月19日

受入上限額:10万円

保証期間:楽天信託株式会社

au PAY

auペイメント株式会社

令和7年4月4日

受入上限額:10万円

保証期間:auじぶん銀行株式会社

これらのサービスは、給与の受取だけでなく、日常のキャッシュレス決済や送金にも利用できるため、従業員の利便性向上につながります

サービス選定時のポイント

企業が対応サービスを選定する際は、以下の点を踏まえて検討することが重要です。

  • 従業員の利用率やニーズ
  • 受入上限額
  • 出金方法や手数料
  • 既存の給与システムとの連携可否

労使協定では、利用可能な指定資金移動業者の範囲を明確に定める必要があるため、事前の比較・整理が欠かせません。

新しい給与支払いに対応していこう

給与デジタル払いは会社側・従業員側の双方にとって任意での対応となりますが、前述の通り、企業にとっても企業イメージや採用力強化の面などにおいてメリットもある選択肢です。
キャッシュレス化が進む現代、今後のために早めに対応をしておくことをお勧めします。

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寺本 仁
この記事を監修した人
会計・人事給与システムのソフト開発会社にてキャリアをスタート。
システム導入支援に従事後、営業部門に転じ、システム活用事例や課題解決事例に立脚した顧客提案を推進。
DAIKO XTECHに入社後は、勤怠管理や連結会計、経理部門のDX化など、ERPソリューション全般に精通したスペシャリストとして活躍中。
DAIKO XTECH株式会社
ビジネスクエスト本部
インダストリー推進部
業務ソリューション課
寺本 仁