給与明細電子化が反対される理由|デメリット・法律・紙での交付方法や同意しない従業員への対応を解説

昨今はペーパーレスの推進もあり、給与明細電子化に取り組む企業が増えてきました。
実際、給与明細の電子化にはさまざまなメリットがあります。

一方で、給与明細電子化に反対する従業員が多い企業も少なくありません。
もし、電子化に反対する従業員が多い場合、企業は適切な対応を取らなければなりません。

本記事では、給与明細電子化が反対される理由や、実施した際のデメリットなどについて解説します。
紙での給与明細交付が必要なケースなどについてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

目次

給与明細電子化は従業員の同意が必要

給与明細電子化とは、これまで紙で配布されていた給与明細書を、PDFなどの電子データで交付する施策を指します。
電子化されると、従業員はパソコンやスマートフォンなどを利用し、専用のシステムやメールを通じて自身の給与情報を確認することが一般的です。

昨今は多くの企業で導入が進んでいますが、法律で定められたルールを守る必要があります。

法律上の原則

そもそも、給与明細電子化は、企業の判断だけで一方的に進められるものではありません。
所得税法において、給与明細の扱いは以下のように定められています。

定め詳細
従業員の「承諾」が必須
(法第231条第2項)
給与明細を紙から電子に切り替えるには、必ず支払いを受ける者(従業員)の承諾を得なければなりません。会社側が一方的に決定して強制することは法的に認められていません。
事前の「種類・内容」の提示
(施行令第356条第1項)
承諾を得る前に、会社は従業員に対して以下の事項をあらかじめ示す必要があります。
電磁的方法の種類/電磁的方法の内容
上記を示したうえで、書面または電子的な方法で承諾を得る必要があります。
紙の明細書の交付請求には必ず対応しなければならない
(法第231条第2項)
電子化に一度承諾した従業員であっても、個別に「紙の明細書が欲しい」と請求があった場合には、会社は紙での明細書を交付する義務があります。
同意の撤回を認めなければならない
(施行令第356条第2項)
従業員から「今後は電子での提供を希望しない」といった申し出があった場合、会社はそれ以降、電子的な提供を継続してはいけません。再度、承諾を得るまでは紙での運用に戻す必要があります。

参照:所得税法第二百三十一条
   所得税法施行令第三百五十六条

法律では、電子交付を行うための前提として「個々の従業員からの明確な同意」を義務付けています。
同意書への署名やシステム上での同意チェックなど、明確な意思表示がない限り、企業は電子交付を開始できません。

このように、従業員から同意を得ることは、給与明細電子化を実現するうえで不可欠です。

同意を得る際の注意点

企業が従業員から電子化の同意を得る際に、一方的な説明・メリットばかりを強調する進め方は禁物です。
また、極端に短い回答期限で強制的に同意を迫る方法も適切ではありません。

不適切な方法で電子化を進めると、従業員の不信感を招くだけでなく、同意を得たと見なされない場合があります。

従業員が安心して判断できるよう、丁寧で誠実な対応が求められます。

反対を受けた場合は紙での交付が必要

もし従業員が給与明細の電子化に同意しない場合、企業はその従業員に対して紙の給与明細を交付し続ける法的義務を負います。
万が一、企業が同意を強要したり、紙での交付を拒否したりするようなことがあれば、それは違法行為にあたる可能性があります。

また、従業員が電子化に同意していたとしても、要求があれば企業は給与明細を紙で交付しなければなりません。

給与明細電子化のデメリット・反対される理由

給与明細電子化のデメリットや反対される理由には、以下のようなものがあります。

  • 情報セキュリティの強化が必須になる
  • 新たな業務フローを構築する必要がある
  • ITリテラシーが低い従業員には負担になる
  • 紙で保管したいニーズが強い
  • 電子化された給与明細を確認できないケースがある

適切な対策を講じるためにも、電子化のデメリットや反対される理由を把握しておきましょう。

情報セキュリティの強化が必須になる

給与は、従業員個人の生活に直結する非常にデリケートな情報です。

給与明細電子化を実施する際は、以下のセキュリティリスクへの対策を必ず講じましょう。

  • 外部からの不正アクセスやサイバー攻撃
  • 社内での誤操作や意図的な情報持ち出し
  • システム障害によるデータ消失
  • ID・パスワードの漏洩や使い回しによる不正ログイン

企業側にとって、上記のリスクへの対策は信頼を左右する重要な要素です。
また、従業員からセキュリティ対策について尋ねられた際は、具体的に説明する必要があります。

新たな業務フローを構築する必要がある

給与明細電子化は、単に紙をデータに置き換えるだけではありません。
企業側では、新しいシステムの導入や、それに伴う業務フロー全体を見直さなければなりません。

この準備が不十分だと、かえって現場が混乱し、従業員に負担がかかる可能性があります。

一般的に、給与明細電子化を実施すると、以下のタスクが発生すると考えられます。

  • 全従業員への説明と同意取得プロセスの設計
  • セキュリティ要件を満たすシステムの選定・導入
  • 既存の給与計算ソフトウェアとの連携設定
  • 操作マニュアルの作成と問い合わせ対応窓口の設置
  • 紙交付を希望する従業員への対応フローの維持

電子化をスムーズに定着させるうえでも、入念な業務フローの構築は必須です。

ITリテラシーが低い従業員には負担になる

給与明細電子化は利便性が高い一方、ITリテラシーが低い従業員が負担を感じるおそれがあります。

紙の明細に慣れている従業員にとって、デジタル機器の操作は大きな負担となるものです。
新しいシステムへのログイン・パスワードの管理・データの閲覧や保存といった一連の作業は、決して簡単なことではありません。

ITリテラシーが低い従業員を放置すると、業務へのストレスにつながるだけでなく、給与情報を正確に確認できないといった事態を招く恐れもあります。

紙で保管したいニーズが強い

デジタルデータだけでは不十分で、手元に「紙」として保管しておきたいといったニーズは根強く存在します。

これは単なる慣れの問題ではなく、実生活におけるさまざまな場面で紙の明細書が必要とされるためです。
特に、従業員が公的な収入証明に使うために、紙の給与明細の提出を求めるケースは依然として多くあります。

また、ファイリングなどの管理側の業務の都合で紙を使わざるを得ないケースも珍しくありません。

電子化された給与明細を確認できないケースがある

すべての従業員が、給与明細を自由に閲覧できる環境を持っているとは限りません。
自宅にインターネット環境がなかったり、個人のスマートフォンを所有していなかったりする場合、給与情報の確認が著しく困難になります。

また、企業のパソコンでしか閲覧できない場合、プライバシーの観点から抵抗を感じる従業員も少なくありません。

このようなケースを踏まえ、企業は、すべての従業員が不公平なく情報にアクセスできる環境を確保する責任があります。

従業員から給与明細電子化の同意を得るための進め方

従業員から給与明細電子化の同意を得るためには、以下のプロセスで実施するとスムーズです。

  • 給与明細の電子化について説明する
  • システムの利便性・安全性・使い方を説明する
  • 同意した場合・しない場合の対応を伝える
  • 同意書の準備と通知を行う
  • 問い合わせ窓口を設置する

それぞれの対応について、順番に解説します。

給与明細の電子化について説明する

まずは従業員向けに給与明細の電子化について説明を行います。

給与明細電子化の目的と背景を丁寧に伝えたうえで、紙で配布していた明細をWebやメールで閲覧できる仕組みに変えることを説明しましょう。
併せて、給与明細電子化の利点や、企業として実施する意義などを共有します。

丁寧な説明は単なる事務作業の効率化だけでなく、従業員にとってもメリットのある仕組みであることを理解してもらううえで重要です。

システムの利便性・安全性・使い方を説明する

説明と併行して、システムの利便性・安全性・使い方も説明しましょう。

利便性や安全性について説明する際は、以下のような内容を伝えます。

  • スマートフォンから24時間閲覧できる
  • 紛失や再発行の手間がなくなる
  • 高度な暗号化やパスワード管理で安全性が高まる

使い方を説明する際は、ログインから閲覧までの手順をマニュアル化し、実際に操作してみせるなど、丁寧な対応が必須です。
ITツールに不慣れな従業員でも理解できるように、デモ画面を交えて具体的なイメージを提供することが大切です。

同意した場合・しない場合の対応を伝える

電子化への同意はあくまで任意であることを明確にし、それぞれの選択による対応を説明します。
同意した場合は電子化へ移行しますが、同意しない場合でも不利益を被ることはなく、従来通り紙での交付を継続する旨を伝えましょう。

選択肢を提示することで強制感をなくし、従業員の自己決定権を尊重する姿勢を示すことが重要です。
また、運用開始後に「やはり紙が良い」「電子に変えたい」といった希望の変更が可能かも併せて伝えます。

同意書の準備と通知を行う

法的要件を満たすため、書面または電子による同意書を準備します。
電子化に移行する・同意を求める旨を明記し、実施時期や閲覧方法の概要も添えましょう。

通知は、社内掲示板・メール・朝礼など複数のチャネルで行い、情報が確実に行きわたるようにしましょう。
返答期限を明示しつつも、適宜リマインドを行うなど、従業員が余裕を持って検討・提出できるスケジュールで実施します。

未提出者へのフォローも含め、漏れのないプロセスを構築しましょう。

問い合わせ窓口を設置する

混乱を防ぐため、専用の問い合わせ窓口を設置します。

ログインできない・操作方法がわからないといった技術的な疑問から、セキュリティに関する不安まで、幅広く受け付ける体制を整えましょう。
メールだけでなく、チャットや電話など複数の連絡手段を用意すると従業員が活用しやすくなります。

また、寄せられた質問と回答をFAQとしてまとめて共有すれば、管理側の負担も軽減できます。

給与明細電子化に反対された際の対応

もし従業員が給与明細電子化に反対した場合、以下の対応を実施しましょう。

  • 丁寧な説明・説得を行う
  • 紙でも交付できる体制を整える
  • 従業員が使いやすいツールを導入する

丁寧な説明・説得を行う

給与明細電子化に反対があった場合、もっとも重要なのは従業員との対話です。
企業は、電子化の目的やメリットだけでなく、従業員が懸念するデメリットやリスクについても正直に説明し、その対策を具体的に示す必要があります。

加えて、質疑応答の時間を十分に設け、個々の従業員の疑問が解消されるまで向き合う姿勢が求められます。

入念な説明は、従業員から理解を得るうえで欠かせません。
とはいえ、反対している従業員に強制することは違法となるため、丁寧に説得しても同意してもらえない場合はその従業員の希望通りに紙の運用を継続させましょう。

紙でも交付できる体制を整える

前述したように、電子化に同意しない従業員や、一度同意したものの後から紙での交付を希望する従業員に対しては、紙の明細書を交付する義務があります。
そのため、企業は電子交付と並行して、紙で明細書を発行・配布できる運用体制を維持しなければなりません。

定期的に従業員の意向を確認する

導入当初は電子化に反対していた従業員でも、実際にシステムを利用している様子を見るうちに、心理的なハードルが下がり、考えが変化することがあります。
こうした心境の変化を逃さないよう、年に一度などのスパンで定期的に意向を再確認する機会を設け、電子化への切り替えを促していくことが有効です。

意向確認を行う際は、決して強制にならないよう配慮し、個々のタイミングを尊重する姿勢を示すことが大切です。「いつでも切り替えられる」という安心感を提供し続けることで、無理な反発を招くことなく、組織全体の電子化率を段階的に高めていくことが可能になります。

給与明細を電子化する際に注意すべき点

給与明細を電子化する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 情報セキュリティを強化する
  • 必要ならサンプル・テンプレートを活用する
  • 電子化の要件を必ず遵守する

それぞれの注意点について、順番に解説します。

情報セキュリティを強化する

給与明細の電子化におけるセキュリティ対策は極めて重要です。

給与明細には、氏名・住所・給与額・銀行口座情報など、機密性の高い情報が含まれています。
これらの情報が漏洩した場合、ID・パスワード詐取や不正アクセス、銀行口座からの不正引き出しなどの犯罪につながるリスクがあります。

企業にとっても、情報漏洩は従業員からの信用を失墜させ、損害賠償責任を負う可能性もあるため、強固なセキュリティ対策は不可欠です。
安全なシステム構築と運用、アクセス管理などを徹底することで、リスクを最小限に抑える必要があります。

必要ならサンプル・テンプレートを活用する

給与明細の電子化において、サンプルやテンプレートは非常に役立ちます。

既存のサンプルやテンプレートを利用することで、レイアウト設計や項目設定にかかる時間と手間の大幅な削減が可能です。
また、法令改正や税制変更に対応しているものを利用することで、計算ミスや記載漏れを防ぎ、正確な給与明細を作成できます。 

サンプルやテンプレートを参考に、自社のニーズに合った電子給与明細システムを構築することは、業務効率化にもつながる取り組みです。

電子化の要件を必ず遵守する

給与明細の電子化において、電子帳簿保存法の要件遵守は不可欠です。

要件を満たさない場合、税務調査で証拠能力が認められず、追徴課税や加算税が発生するリスクがあります。
電子化の要件をはじめとする法令の遵守は企業の信頼性を維持し、円滑な事業運営を実現するために極めて重要です。

自社が採用した書式が要件を満たしているか必ず確認し、必要があれば税理士などの専門家のアドバイスも得ましょう。

給与明細の電子化にはi-Compassが最適

給与明細の電子化を実現するなら、DAIKO XTECHのi-Compassが最適です。

i-Compassは企業のさまざまな情報をWebで共有できるクラウド型配信ソリューションであり、Web給与明細専用のツールも提供しています。
パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレットからいつでも閲覧可能です。

さらに、以下のようなオプションも追加できます。

  • 年末調整
  • 災害時安否確認
  • eラーニング

i-Compassは給与明細の発行をはじめ、管理部門が抱えるさまざまな課題の解決に役立ちます。
ぜひ、給与明細電子化の際は導入をご検討ください。

メディア編集部

給与明細の電子化って、経営層やDX担当からすれば「コスト削減になるし、やらない理由がない」と思われがちですが、そんなに単純な話ではありません。

工場で汗を流して働いているベテラン勢の中には、スマホ操作に不慣れな方はもちろん、「給与明細は自宅に持ち帰って家族と確認する大事な証憑」という感覚が根強く残っています。ここを無視して「法律で決まったから」「効率化だから」と進めると、会社への不信感に直結してしまいます。

特に注意してほしいのが、一度同意した後の「やっぱり紙で」という戻りへの対応です。現場の事務担当が「もうシステム化したから無理」なんて突っぱねるのは言語道断です。法的な義務はもちろんですが、現場の納得感こそが、長期的なペーパーレス化の近道だったりします。まずは一部の部署でスモールスタートして、「スマホで見られるの意外と便利だよ」という口コミを現場に浸透させるくらいの、泥臭い根回しから始めるのが正解です。

まとめ:給与明細電子化は従業員への配慮が重要

給与明細の電子化は、単なるペーパーレス化ではなく、「情報の届け方を変える」というコミュニケーションの変革です。

法律を守り、反対する人の不安を丁寧に解消していく。その「誠実なプロセス」こそが、導入後の社内満足度と生産性を左右します。

給与明細電子化を成功させるなら、丁寧な説明・説得を行うなど、企業・従業員双方が良好な関係を構築しましょう。

また、年末調整や安否確認をオプションで選べるi-Compassの導入による、労務業務のトータルな最適化も併せてご検討ください。

 

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