
製造業にとって、品質不良は大きな課題です。不良品は社内での手戻り増加だけでなく、顧客満足度の低下、さらには市場に出回ってしまうと重大な事故が起きてしまう危険性もあります。
「品質不良はなぜ無くならないのか」気になる方は、品質不良の種類と原因を確認しておきましょう。
本記事では、品質不良、不良率や目標数値の目安を解説します。さらに、不良品の原因究明の考え方や対策、再発防止や未然防止についてもご紹介します。
目次
品質不良を正しく知る
製造業にとって、品質不良の削減は最優先の課題です。
しかし、品質や品質不良といった言葉の本来の意味を理解せずに原因調査を始めると、基準が不明瞭になり中途半端な対策となってしまう危険性があります。
まずは、本章で品質や品質不良の言葉の意味を正しく捉え、基準を明確にしましょう。
品質とは?
品質とは、製品が企業内で設定した項目や顧客ニーズを満たすための基準です。
さらに、製造業において品質は「ねらいの品質(設計品質)」と「できばえの品質(製造品質)」に分かれます。
ねらいの品質(設計品質)とは、顧客の要望を正しく把握した設計と、製造現場で造りやすい製品の設計が実現されたものを指します。
良品の基準を設計図や、仕様書、品質規格などで具体的に示しています。
しばしば顧客の要望のみが重視されるケースがありますが、製造現場が造りづらい設計をしてしまうと却って不良率が高くなってしまう危険性もあるため、バランスの良い設計が必要です。
一方できばえの品質(製造品質)とは、ねらいの品質(設計品質)で作られた設計図や仕様書、品質規格に沿って製造されているかどうかの結果のことです。つまり設計図通りに製造できているかがカギです。
上記の2種類を理解せずにいると、不具合や不良品が発生した際に製造現場だけをターゲットに原因分析を行ってしまうケースが発生してしまいます。
原因の大元が設計段階である可能性もあるため、ねらいの品質(設計品質)とできばえの品質(製造品質)は分けて理解しておきましょう。
品質不良とは?
品質不良とは、良品を決める基準の範囲から外れている製品を指します。
つまり、顧客の要望を満たしていない製品や、設計図や仕様書の基準を満たしていない製品のことです。
品質不良の製品は出荷できないため、コスト増大につながります。
市場に出回ってしまうと、顧客の信頼を失うだけでなく事故の原因になってしまったり、リコールを行わなければならなくなったりと、企業の利益や価値を大きく損なってしまう可能性もあります。
品質不良の種類と発生タイミング
品質不良は、発生タイミングや不良内容によって原因や取るべき対策が大きく異なります。
不良の種類を正しく分類できていないと、場当たり的な対処をしてしまい、再発につながるリスクがあります。
適切な品質管理を行うために、以下のポイントを確認しておきましょう。
- 工程内不良・出荷後不良の違い
- 外観不良・機能不良・寸法不良
- 慢性的な品質不良と突発的不良の違い
工程内不良・出荷後不良の違い
品質不良は、いつ発見されるかによって大きく「工程内不良」と「出荷後不良」に分けられます。
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不良の内容 |
工程内不良 |
出荷後不良 |
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概要 |
製造工程の途中や最終検査で発見される不良 |
顧客に製品が渡った後に発覚する不良 |
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不良例 |
・組立工程での部品取り付けミス ・加工工程での寸法オーバー ・検査工程で発見される外観不良 |
・初期不良としての返品・クレーム ・使用中の故障・性能不良 ・安全性に関わる重大トラブル |
工程内で不良を発見できれば、社外流出を防げるため、品質リスクやコスト増加を最小限に抑えられます。
そのため、品質管理の基本は、工程内不良の低減が重要です。
出荷後不良は、企業の信用低下・補償コスト・ブランド価値の毀損につながる重大な問題です。
工程内での検出漏れが主な原因となるため、「なぜ見逃されたのか」を工程全体で振り返る必要があります。
外観不良・機能不良・寸法不良
品質不良は、不良の内容によって実施するべき対処・予防法が変わります。
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不良の内容 |
概要 |
不良例 |
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外観不良 |
製品の見た目に関する不具合 |
・キズ、汚れ、変色 ・塗装ムラ、印刷ズレ ・仕上がりの不均一 |
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機能不良 |
製品が本来の性能・機能を満たしていない状態 |
・動作しない ・性能が規格値を満たさない ・使用中に異常停止する |
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寸法不良 |
設計図や仕様で定められた寸法公差を外れている不良 |
・長さ・厚み・穴径のズレ ・組立不可になるサイズ誤差 |
外観不良は、機能に直接影響しない場合もありますが、顧客満足度やブランドイメージに大きく影響します。
機能不良は、安全性や信頼性に直結するため、最優先で対策すべき品質不良です。
寸法不良は、加工条件・設備精度・測定方法など、工程能力そのものの問題が原因であるケースが多いです。
慢性的な品質不良と突発的不良の違い
品質不良は、発生の仕方によっても性質が異なります。
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不良の内容 |
慢性的な品質不良 |
突発的不良 |
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概要 |
同じ不良が繰り返し発生している状態 |
突如として発生するイレギュラーな不良 |
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不良例 |
・毎月一定数発生する不良 ・「仕方ない」と現場で黙認されている不具合 ・長年改善されていない品質問題 |
・設備トラブルによる大量不良 ・原材料ロット変更による品質変動 ・作業者ミスや設定変更の影響 |
慢性不良は、工程設計・作業標準・教育・設備条件など、構造的な問題が原因であることが多く、根本的な対処が必要です。
対して突発的不良は、初動対応の遅れが被害拡大につながるため、異常検知・即時対応の仕組みが重要です。
品質不良の原因と5M+1E視点
製造業で品質不良が起きてしまった場合、原因は主に6種類に分けて分析できます。
- ヒューマンエラーが原因の品質不良(Man)
- 機械や設備が原因の品質不良(Machine)
- 部品や材料が原因の品質不良(Material)
- 作業方法が原因の品質不良(Method)
- 品質検査・測定方法が原因の品質不良(Measurement)
- 作業環境が原因の品質不良(Environment)
上記の6種類は5M+1Eと呼ばれ、製造業ではMan(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)、Measurement(測定)、Environment(環境)の要素を管理して、品質向上や問題解決を行っています。
本章では、5M+1Eの視点に分けて品質不良の原因を解説します。
なお、Measurement(測定)とEnvironment(環境)を除く4Mについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
ヒューマンエラーが原因の品質不良(Man)
ヒューマンエラーは製造現場で品質不良が起きる原因の一つです。
特に手作業が多い現場や工程では、品質への影響も大きくなってしまいます。
具体的には以下のような例が挙げられます。
- 連日の長時間勤務の疲れから注意力が低下して行うべき作業を怠った
- 新人作業員が不慣れから独自の解釈で誤った作業を行った
- 止めるボタンが緑、開始ボタンが赤になっており、作業時に思い込みにより押すボタンを間違えた
単なる不慣れや疲れが原因となるだけではなく、人間の脳は自分の見たいものだけを見ようとしたり思い込みから抜け出せなかったりする特性があるため、ヒューマンエラーが起こるとも言われています。
なお、品質不良が発生した際、「もっと注意する」「再発防止を徹底する」などの対策が取られやすいですが、これでは根本解決にはなりません。
なぜなら、人は必ずミスをする存在であり、注意力には限界があるからです。
実際には、以下のような環境要因がヒューマンエラーを引き起こしています。
- 作業手順が複雑で覚えきれない
- 作業負荷が高く、確認工程が省略されやすい
- 判断基準が曖昧で、人によって解釈が異なる
このような状況では「気を付ける」だけでは、ヒューマンエラーを防げません。
ヒューマンエラーは、個人の問題ではなく、仕組みの問題として捉える必要があります。
また、多くの製造現場では、以下のように教育や力量管理が形式的になっているケースが見られます。
- 教育記録はあるが、理解度を確認していない
- ベテランと新人で作業品質にばらつきがある
- 「一度教えたから大丈夫」という前提で進んでいる
このような状態では、作業者ごとのスキル差が品質不良として顕在化します。
力量管理を機能させるためには、教育して満足するのではなく、自走できる状態になっているかを定期的に確認する仕組みが必要です。
機械や設備が原因の品質不良(Machine)
機械や設備が原因で品質不良が起こるパターンもあります。
具体的には以下のような例が挙げられます。
- 設備のメンテナンスを怠り、誤作動が起きた
- 機械の入れ替えを行った直後の調整不良で強度不足などの不良が出た
- 新しく入れた機械の操作ミスによる不良が出た
機械・設備を原因とする品質不良は、メンテナンス不足や老朽化、故障だけがすべてではなく、設備を入れ替えた直後にも品質不良が起きやすい点にも注意が必要です。
なお、「定期点検は実施しているのに品質不良が発生する」というケースは少なくありません。
その背景には、点検内容と実際の品質要件が乖離している可能性があります。
具体的に、以下のような状況では、点検しても品質不良を防げません。
- 点検項目が“故障の有無”に偏っている
- 品質に影響する微調整部分が点検対象外になっている
- 点検結果が記録されるだけで活用されていない
また、設備不良は全停止だけでなく、以下のようにわずかなズレや劣化でも品質不良を引き起こします。
- センサー感度の低下
- 温度・圧力・回転数の微妙な変動
- 治具の摩耗による位置ズレ
これらは一見すると気づきにくく、「なぜ不良が出ているのかわからない」状態を生み出します。
そのため、設備の正常を感覚ではなく数値で定義し、異常を早期検知できる仕組みが必要です。
部品や材料が原因の品質不良(Material)
使用する部品や材料を原因とした品質不良も一例として挙げられます。
具体的には、以下のような例があります。
- 在庫管理を適切に行っておらず、劣化した部品を使用した
- 購買の際に品質よりも価格の安さを優先し、品質の良くない材料を仕入れて利用した
- 部品や材料の受け入れ時に品質チェックを行わず、不良品と気付かずに使った
部品や材料自体に問題があるケースだけではなく、在庫管理ができていないと部品の経年劣化に気付かずに利用してしまうリスクも想定されます。
なお、材料不良が発生した際、「仕入先の品質が悪い」と決めつけてしまうのは危険です。
材料不良が発生した際は、以下のように不良の発生条件を整理し、原因を切り分けましょう。
- 特定ロットのみで発生しているか
- 加工条件によって不良率が変わるか
- 他の製品でも同様の不良が出ているか
これらを整理することで、「材料起因か」「工程起因か」を正確に判断できます。
材料不良を見極められないままでは、適切な対処法を実践できません。
なお、材料や部品のロット管理が不十分な場合、品質不良が発生すると以下のように影響範囲が一気に拡大します。
- どの製品に不良材料が使われたかわからない
- 全数回収・全数検査が必要になる
- 不要なコスト・信用低下につながる
トレーサビリティを確保することで、「どこまでが影響範囲か」を即座に判断でき、被害を最小限に抑えられます。
品質不良対策だけでなく、リスクマネジメントの観点でもトレーサビリティの確保が重要です。
作業方法が原因の品質不良(Method)
また、作業方法も品質不良が起こる原因の一つです。
具体的には以下のような例が挙げられます。
- 作業マニュアルが更新されておらず、手順が不明確な作業があった
- 多品種少量生産などで、段取り替えが上手く行っていない
- 工程間のバランスが取れておらず、ラインによっては無理が生じた
- 本来ならば複数工程に分けるべき複雑な作業を一人の作業者に集約させていた
作業方法が原因となるケースでは、作業マニュアルの不備だけでなく、製品に合った生産方式を選択できていない、生産方式や作業方法の改善検討がなされていないといったことが原因となり不良が発生するパターンもあります。
なお、多くの現場で「標準作業書はあるが、実際には守られていない」状況が見られます。
その理由は、作業者の意識だけでなく、以下のような原因によって標準作業書が守られていない可能性があります。
- 現実の作業に合っていない
- 更新されず、実態と合っていない
- わかりにくく、参照されていない
このような標準書は、存在していても品質不良防止には機能しません。標準作業書は「作ること」が目的ではなく、「使われること」を重視しましょう。
また、ベテラン作業者の経験や勘に依存した作業は、一時的には効率的に見えるかもしれません。
しかし、暗黙知に依存した状態は、以下のようなリスクがあります。
- 作業品質が人によってバラつく
- 属人化が進み、引き継ぎができない
- 不良が起きた際に原因を説明できない
暗黙知を形式知へ落とし込み、誰が作業しても同じ品質を保てる状態を作ることが、品質不良の再発防止には必要です。
品質検査・測定方法が原因の品質不良(Measurement)
品質検査や測定方法が適切でないことが原因で、品質不良が発生・見逃されるケースも少なくありません。
製品自体は問題なく作られていても、「正しく測れていない」「判断基準がブレている」ことで、不良が発生していると誤認したり、本来の不良を見逃したりする可能性があります。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
- 測定器の校正が不十分で、測定値にズレが生じていた
- 作業者ごとに測定方法が異なり、合否判定にバラつきがある
- 判定基準が曖昧で、良品・不良品の境界が明確でなかった
- 抜き取り検査の条件が不適切で、不良を検出できなかった
「検査をしているから品質は担保できている」と思い込んでしまうと、品質不良に気づきにくいため注意が必要です。
以下のような状態では、検査工程があっても品質不良を防げません。
- 測定器はあるが、定期的な校正・点検がされていない
- 検査手順が標準化されておらず、属人的している
- 測定結果が記録されるだけで、傾向分析に活用されていない
また、検査工程自体が工程能力に見合っていない場合もあります。
工程のバラつきが大きいにもかかわらず、検査頻度が少ない、または測定精度が不足していると、不良流出のリスクが高まります。
品質検査・測定方法に関する品質不良を防ぐために、以下の対策を実施しましょう。
- 測定器の管理(校正・点検)の仕組みを整える
- 測定方法・判定基準を明文化し、誰が測っても同じ結果になる状態をつくる
- 測定データを蓄積し、異常傾向を早期に検知できる体制を整える
検査は「不良を見つけるため」だけでなく、「不良を作らないための工程管理」にすることが大切です。
作業環境が原因の品質不良(Environment)
作業環境が原因で品質不良が発生するケースも、製造現場では見落とされやすいです。
作業者や設備、材料に直接的な問題がなくても、周囲の環境条件によって品質に悪影響が及ぶケースがあるのです。
具体的には、以下のような作業環境が品質不良につながります。
- 温度・湿度の変化により、材料特性や加工精度が変化した
- 照明が暗く、外観検査や作業確認で見落としが発生した
- 粉塵や異物が多く、製品に混入した
- 騒音が大きく、作業者の集中力が低下した
温度・湿度・清浄度などの環境条件は、以下のような製品・工程での品質不良に直結します。
- 樹脂・ゴム・塗装・接着など、環境影響を受けやすい工程
- 精密加工や微細部品を扱う工程
- 人の目や感覚に依存する検査工程
また、作業環境の変化は徐々に進行することが多く、「気付いたときには不良が多発している」状態になりやすいため注意が必要です。
以下のような状況では、作業環境が品質不良の温床になります。
- 環境基準はあるが、実際には守られていない
- 季節変動による影響を考慮していない
- 作業環境の異常を検知・記録する仕組みがない
作業環境が原因の品質不良を防ぐためには、以下の対策が有効です。
- 温度・湿度・清浄度などの管理基準を明確にする
- 環境データを数値で管理し、異常を可視化する
- 環境変化が品質に与える影響を事前に把握する
作業環境は「人・機械・材料・方法」を支える土台です。
環境管理が不十分なままでは、他の5M+1Eを改善しても品質不良は根本的に解決できません。
以上のように5M+1Eの変更は、特に不良など品質の悪化が起こりやすくなる変化点です。
5M+1Eの変更があった際には不良が起こらないように、モニタリングや点検回数を増やすなどの対策を行いましょう。
不良率の計算方法や目標数値の目安
品質不良を削減するための指標として、不良率が挙げられます。
本章では、不良率の計算方法や、間違いやすい歩留まりとの違い、目標とするべき目安の数値についてご紹介します。
不良率の計算方法
不良率は、製造された製品の総数に対しての不良品の割合のことです。
式は以下のように表されます。
不良率(%) = 不良品数 ÷ 生産総数 × 100
例を挙げると、一定期間に製造された製品が10,000個の場合、不良品が200個出てしまったとすると、不良率は2%です。
不良率と歩留まり率の違い
不良率と混同しやすい指標に、歩留まり率があります。
歩留まり率とは、原料や素材の投入量に対して、実際に生産できた良品数の割合のことです。
大きな違いは、分母となる数値が不良率では「生産できた総量」であるのに対し、歩留まり率では「投入原材料数」であることです。
不良率の指標「PPM」
次に、不良率の指標となるPPMを解説します。
PPMとは、「Parts Per Million」の略で、製品を100万個製造した場合に不良品数がどれくらいになるのかを表しています。主に大量生産を行う企業で用いられる数値です。
計算方法は以下の通りです。
PPM = 不良品数 ÷ 生産総数 × 1,000,000
PPMを活用する目的には以下が挙げられます。
- 安全性が優先される分野で高品質を実現するため
- サプライチェーン全体での品質管理を行うため
- 世界的な標準と指標を元に品質改善を継続的に行うため
自動車業界や航空宇宙業界では、安全性が最優先されるため、10PPM以下の厳しい基準が適用されているケースも見受けられます。
不良率の現実的な目標設定数値
不良品を出さないようにしたいという心意気は大事ですが、不良品ゼロを目標に掲げてしまうと、膨大な人手や時間がかかる生産効率の悪い製造工程となってしまい、現実的な目標数値ではありません。
一定のばらつきによる不良品の発生を考慮しながら、製品や生産規模、販売価格などによって不良率の目標数値を決めることが重要です。
不良率の目安として、「3σ(シグマ)」、「6σ(シグマ)」というものがあります。
3σとは、1,000個製造したうちの不良品数を3個以下に収めることを目標とする指標です。
不良率で表すと0.3%となり、一般的に品質基準として用いられることが多い数値です。
一方6σとは、10,000個製造したうちの不良品数を3.4個以下に収めることを目標とした指標です。
不良率で表すと0.00034%となり、より安全性が求められる航空宇宙や自動車業界、医療、製薬業界で品質基準として用いられます。
ただし、不良率という数値だけを追い続けることには注意が必要です。
数値達成そのものが目的化してしまうと、以下のような問題が起こる可能性が高まります。
- 不良を「見なかったこと」にし、記録されない不良が増える
- 検査工程で無理に合格させて、後工程・市場不良が増える
- 現場が数値達成を優先し、根本原因の改善が後回しになる
このような状態では、表面的な不良率は改善しているように見えても、実際の品質リスクはむしろ高まっている可能性があります。
重要なのは、不良率を管理指標の一つとして活用しつつ、「なぜ不良が発生したのか」「どの工程にばらつきがあるのか」といったプロセス改善につなげる視点です。
自社の目標を設定する際には、業界の標準や過去データを参考にした現実的な数値目標を設定すると同時に重視しましょう。
数値の背景にある工程・人・設備の状態を確認する運用をセットで行うことが、品質向上には欠かせません。
自社の目標を設定する際には、業界の標準や過去データを参考にした現実的な数値目標の設定が重要です。
品質不良が引き起こす経営リスク
品質不良は「現場の問題」だけに留まらず、経営全体に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。
不良が継続的に発生すると、以下のような経営リスクが高まるため注意しましょう。
- 原価悪化・利益率低下
- 納期遅延・顧客満足度低下
- 現場の疲弊と人材流出
原価悪化・利益率低下
品質不良が発生すると、最も直接的に影響を受けるのが原価と利益率です。
不良品は販売できないため、材料費・加工費・人件費などのコストがそのまま損失となるのです。
さらに、不良品が発生した場合には以下のような追加コストが発生します。
- 再製作・再加工にかかる人件費・設備稼働費
- 再検査・手直し工数の増加
- 廃棄処分や返品対応にかかる費用
品質不良が継続すると、製造原価を押し上げ、利益率を確実に圧迫します。
また、不良対応に追われることで、改善活動や付加価値向上の取り組みに時間を割けなくなり、長期的な収益力の低下につながる点も大きな経営リスクです。
納期遅延・顧客満足度低下
品質不良は、納期遅延を引き起こす大きな要因の一つです。
不良が発生すると、再製作や手直しが必要となり、当初予定していた生産スケジュールが崩れてしまいます。
その結果、以下のような問題が発生し、顧客からの信頼を失ってしまうのです。
- 出荷予定日の遅延
- 部分納品や分納の増加
- 緊急対応による現場の混乱
一度や二度の遅延であっても、「この会社は品質・納期管理が甘い」と悪い印象を持たれてしまえば、次の受注機会を失う可能性があります。
品質不良が原因で顧客満足度が低下すると、価格競争以前に選ばれなくなるリスクが高まるため注意しましょう。
現場の疲弊と人材流出
品質不良が常態化している現場では、作業者や管理者に大きな負担がかかります。
以下のような状況が続くと、現場は疲弊していき、人材流出につながるリスクがあります。
- 突発的な手直し・残業対応
- 原因不明の不良に対する精神的ストレス
- クレーム対応や再発防止報告への追われ感
改善につながらない状態が続くと、現場のモチベーションは低下し、「どうせ言っても変わらない」と諦めの空気が生まれます。
その結果、ベテラン作業者の離職や若手人材の定着率低下につながり、現場力・ノウハウの喪失など人材面での経営リスクが生じるため要注意です。
不良発生時の効果的な対応ステップ
次に、実際に不良が発生してしまった場合に対応すべきステップについて解説します。
具体的には、以下の順番で対応するのが適切です。
- 不良の発生源特定
- 原因究明
- 再発防止の策定と未然防止
- 効果測定
- 標準化
以下で詳しく解説します。
不良の発生源特定
不良が発生した際にまず行うべきことは、発生源の特定です。
明らかに設備の故障でラインが止まってしまったケースなどは発生源が分かりやすいこともありますが、発生源がどこにあるのか特定が難しい場合もあります。
不良が発生した場所や時間、作業者、詳しい状況をヒアリングするなど不良発生時をできるだけ詳細に把握し、発生源の特定を進めていきましょう。
同時に、不良による影響範囲を特定し、社内外に情報共有します。
原因究明
次に、不良の原因を究明します。
前述した5M+1E視点での分析も重要ですが、真の原因の追求のためには下記の方法も有効です。
- なぜなぜ分析
- 特性要因図
なぜなぜ分析
なぜなぜ分析とは、不良など問題が起きて発生源を特定した後に、なぜ特定の事象が発生したのか、「なぜ」が出なくなるまで繰り返して深掘りする分析方法です。
つまり、「なぜ」が出なくなった事象こそが問題の真因であると分析できるのです。
なぜなぜ分析で陥りやすい間違いは、「新人なので経験不足で操作方法を誤った」などと個人の責任や個人の能力を原因としてしまうことです。
なぜなぜ分析では客観的な事象をターゲットとするため、上記の例だと「新人が間違いそうになってしまう機械操作方法」自体をターゲットとする必要があります。
特性要因図
特性要因図は、問題が生じた際の要因をあぶり出すために作成されるもので、完成した図が魚の骨のように見えるため「フィッシュボーン図」とも呼ばれます。
課題を魚の頭部分に書き、枝分かれするように思いつく大きな要因を書き出し、さらに大きな要因を引き起こす要因を書き出していきます。
なぜなぜ分析は事象に対して客観的で明らかな要因を挙げていくのに対し、特性要因図は問題について「思いつく要因」を漏れなく挙げていくため、推測や仮説も含まれる点で大きく異なります。
なぜなぜ分析は課題や原因箇所がはっきりしているケースで利用し、特性要因図は原因箇所が複数でさまざまな要因が絡み合っていると推測される問題に対して利用するのがおすすめです。
特性要因図に関しては、以下の記事でも詳しく説明していますので、ぜひご確認ください。
【生産管理のDX事例】工場での生産管理の仕事内容とは?生産方式別の特徴をわかりやすく解説
再発防止の策定と未然防止
不良の原因が特定できたら、再発防止策を講じます。再発防止策では以下のポイントに気をつけましょう。
- 実現可能な対策となっているか
- チェックを増やすなど結果的に手間が増える対策になっていないか
- 形骸化する対策ではないか
また、ヒューマンエラーはゼロにはできないため、手作業によるミスを減らしたい場合にはシステム変更やIoT機器の導入なども根本的解決のためには有効です。
不良への対策としては、未然防止の考え方も重要です。
未然防止とは、将来起こりうるリスクに対して、事故やトラブルなどの事象を未然に防ぐことです。
特性要因図などを用いて原因分析を行う中で、今回は問題とならなかったものの将来的に問題となりそうだと推測された事象に関しては、問題が起きる前に対策を講じる必要があります。
効果測定
次に、対策が効果的に働いているかを不良率の推移で確認します。
不良率が目標値以下になっているかどうか、ロットごとに、複数回に分けて検証を行いましょう。
不良率が落ちなければ、原因や対策に問題があるため、再度分析を繰り返します。
標準化
再発防止策の効果が出て不良率が下がったら、対策の標準化を行います。
具体的には、作業マニュアルの改訂や関係各所への通知の徹底などが挙げられます。
しかし、多くの現場では「一度は改善できたのに、しばらくすると元に戻ってしまう」ケースも珍しくありません。
改善が定着しない原因の多くは、対策そのものではなく「運用」にあります。以下のような運用の場合、改善が定着せずに対策が一時的なもので終わってしまうリスクが高いです。
- 標準書やマニュアルが形骸化してしまう
- 現場任せになってしまう
- 効果検証が行われない
改善を一過性で終わらせないためには、標準を見える化し、守られているかを確認する仕組みを作ることが重要です。
作業手順書を現場に掲示し、チェックリスト化して日常点検に組み込むことで、標準化を意識させましょう。
また、マニュアルを更新するだけでなく、なぜその手順が必要なのか、不良とどう関係しているのかを教育で伝えることで、形だけのルールになるのを防げます。
不良率や手直し工数などの指標を定期的に確認し、「改善が本当に機能しているか」を数値でチェックすることで、早期に軌道修正が可能です。
改善策を標準に落とし込み、教育・確認・見直しまでをセットで運用することで、品質改善は初めて定着し、継続的な成果へとつながります。
不良削減対策のポイント
不良削減のための対策のポイントについて解説します。
前章では再発防止策について解説しましたが、本章では不良を起こさないための未然防止の考えのもとで対策をご紹介します。
- 作業標準書の作成や改訂
- 適切なメンテナンス
- 設計時のDRや品質管理の徹底
- 適切なシステム導入
作業標準書の作成や改訂
不良削減のためには、作業標準書の作成や改訂も対策の一つです。
機械自体に付属する操作マニュアルだけに頼らずに、自社独自の作業標準書を作成しましょう。
また、作業標準書はあるものの、改訂を行っておらず形骸化しているパターンもあります。
作業の変更があれば、都度作業標準書の見直しを行い、アップデートしていく必要があります。
適切なメンテナンス
適切なメンテナンスを行うことも不良対策のために重要です。
メンテナンスは形骸化しやすく、場合によっては機械や設備を人の目で見て紙の点検シートにチェックマークをつけるだけといったケースもあります。
未然防止のためにも定期的にメンテナンスを行うだけでなく、IoT機器で数値的な問題がないかをチェックするなど、デジタルを活用した適切なメンテナンスを行うのも一つの手段です。
設計時のDRや品質管理の徹底
製品開発の時点で設計上の問題がないか、DR(デザインレビュー)を行い製造より前に品質管理を行うことも不良対策の一つです。
開発部門だけでなく、生産管理や品質管理、製造部門も交えてDRを開くことも重要です。
設計上問題はなかったとしても、製造工程が複雑でミスやヒューマンエラーを引き起こしやすい状態になってしまう可能性もあるためです。
適切なシステム導入
不良対策としては、適切なシステム導入も有効な手段です。
前述したように、人間の脳は思い込みや自分の見たいものだけが見えてしまう特性があります。
ヒューマンエラーは対策により削減はできるものの、ゼロにはできません。
人間が目で見て判断する部分をシステムに置き換えるだけでも、ヒューマンエラーを削減可能です。
異常検知システムなどIoT化を進めることで、人間の目で見るよりも迅速かつ確実に不良品を出さないための対策が可能です。
また、品質管理の現場では、いまでも不良データや検査結果をExcelで管理しているケースが多く見られますが、品質不良対策では以下のような限界があります。
- リアルタイム性の欠如
- 属人化のリスク
Excel管理では、データ入力や集計にタイムラグが発生しやすく、「不良が発生してから気づくまでに時間がかかる」状況を招きやすいです。
さらに、Excelで品質管理を行っていると、担当者の異動・退職によって、過去データが活かせなくなるケースも少なくありません。
こうした課題を解決するためには、リアルタイムでデータを蓄積・可視化でき、誰でも同じ情報を確認できるシステムの導入が効果的です。
具体的には、リアルタイムデータ収集・分析・直感的なダッシュボード利用により、
As-Is(現状の状態)
- 異常に気づくのが遅れる
- トラブル発生
- 設備状態調査・対処
このような品質不良が発生するケースでも、下記のように現状を解決できます。
To-Be(理想の状態)
- 異常発生時に通知
- トラブルの早期気づき
- 早期対処
- 改善
異常検知システムなどIoT化を進めることで、人間の目で見るよりも迅速かつ確実に不良品を出さないための対策ができます。
また、システム導入の際にはできる限り部署単位ではなく、社内全体で取り組むことも重要です。
部署ごとに異なるシステムを使っていると、情報が部署単位で止まってしまいます。
より広く、社内全体で共有できるシステムを活用できれば、情報共有のための会議を削減したり、品質管理面でも異常に気付きやすいメリットがあります。
品質不良の原因を分析し、現実的な不良率を目標として再発防止を測る
製造業において品質不良は社内での手戻り増加だけでなく、顧客満足度の低下、さらには市場に出回ってしまうと重大な事故につながってしまうなど、企業全体の利益や価値を著しく損なってしまう危険性があります。
ただし、不良率の目標をゼロとするのではなく、現実的な目標を業種や製品によって定めることが重要です。
不良が起きてしまった際には、原因の分析や再発防止、また未然防止の観点から対策を講じていきましょう。
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