製造業の原価管理において、コスト削減の余地が大きいのが「間接材料費」です。
製品の製造に直接関わる「直接材料費」と異なり、間接材料費は品目が多く管理が煩雑になりがちで、気づかないうちに利益を圧迫しているケースが少なくありません。
本記事では、間接材料費の定義や直接材料費との明確な違い、具体的な該当品目を解説します。また、複雑な計算や管理を効率化し、会社の利益を最大化するためのポイントについてもご紹介します。
目次
間接材料費とは?製造原価における定義と重要性
間接材料費は、製品そのものにはならないものですが、製造や保全、操業を維持するために必要な物品にかかる費用です。対象は工場内の消耗品だけでなく、運用によってはオフィスで使う事務用品まで含まれます。
この費用が重要な理由は、単価の大小ではありません。欠品が発生すれば設備停止や稼働ロスにつながり、反対に管理が緩いと過剰在庫が積み上がりやすくなるからです。つまり間接材料費は、購買と在庫と稼働の3つをまたいで、経営数字に効いてくる管理対象だと言えます。
まずは、その定義を正しく理解し、なぜこのコストの管理が重要視されるのか、その背景を紐解いていきましょう。
製品の製造に「間接的」に関わる物品の費用
間接材料は、直接材のように製品として加工されませんが、ないと現場が回りません。代表例として、薬品やガス、マスキングテープなどの消耗品が挙げられます。
また、工具や測定器具、ドリル、エンドミルといった作業に必要な品目も含まれます。
こうした副資材は、必要なときに現場が求めるため、調達と補充のルールが曖昧だと属人化しやすい点が特徴です。
製造原価(材料費・労務費・経費)の中での位置づけ
製造原価は、大きく以下の3つで構成されます。
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原価区分 |
内容 |
具体例 |
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材料費 |
製品製造に使う物品の費用 |
鋼材、電子部品、塗料、工具など |
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労務費 |
製造に携わる人件費 |
直接工の賃金、現場監督の給与など |
|
経費 |
材料費・労務費以外の費用 |
減価償却費、工場の光熱費など |
間接材料費は、この3区分のうち「材料費」の中に含まれます。材料費はさらに「直接材料費」と「間接材料費」に分かれており、間接材料費は製造間接費の一部として原価計算に組み込まれます。
つまり、製造間接費は間接材料費・間接労務費・間接経費の3つで構成され、これらをまとめて各製品に配賦(割り振り)することで、製品ごとの正確な原価が算出される仕組みです。
工場全体のコスト構造を把握したい経営者や総務課長の視点では、材料費の中のどこに無駄が潜んでいるかを見極めるうえで、この位置づけの理解が判断基準のひとつになります。
直接材料費と間接材料費の違い【比較表あり】
「この消耗品は直接材料費か、間接材料費か」という判断は、現場でも経理部門でも迷いが生じやすいポイントです。
両者を分ける明確な基準を押さえることで、仕訳ミスや原価計算のズレを防ぐことができます。
違いは「どの製品にいくら使ったか」が明確かどうか
判断の軸はシンプルです。「特定の製品への消費量を、合理的なコストで把握できるか」が直接・間接を分けます。
- 直接材料費:製品Aの製造に「鋼板が3枚」と明確に数量を特定できるもの。製品との対応関係が一対一で追えるため、そのまま製品原価に算入する。
- 間接材料費:接着剤・切削油・塗料のように、製品ごとの使用量を厳密に計測することが現実的でないもの。一括して集計し、後から基準に基づいて各製品へ配賦する。
このように、費用の性質ではなく「追跡コストが現実的かどうか」という実務的な観点が分類の基準になっています。
勘定科目や会計処理上の扱いの違い
経理処理のプロセスにおいても、両者はまったく異なるプロセスになります。直接材料費は「仕掛品」勘定を通じて特定の製品原価に直結しますが、間接材料費はいったん「製造間接費」という勘定科目に集約されます。
以下の比較表で、その違いを整理します。
|
比較項目 |
直接材料費 |
間接材料費 |
|
定義 |
製品の実体を構成する主要な材料 |
製造に必要だが製品の実体にはならない材料 |
|
測定の容易さ |
容易(製品ごとに明確に計量可能) |
困難(複数の製品で共通して消費される) |
|
原価計算の方式 |
各製品の原価に直接加算(直課) |
一定の基準に基づいて各製品に割り振る(配賦) |
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代表的な具体例 |
鉄板、電子部品、木材 |
ボルト、塗料、作業用手袋、機械の潤滑油 |
この違いを理解しておくことは、正確な原価計算を行うだけでなく、現場での在庫管理ルールを策定するうえでも不可欠な知識となります。
【具体例】間接材料費に含まれる3つの分類
間接材料費は、現場での取り扱いで見ると「補助材料」「工場消耗品」「消耗工具器具備品」の3つのカテゴリに分類されます。
自社の工場にある物品をイメージしながら確認してみてください。
補助材料費(燃料、塗料、接着剤など)
製品の製造に直接関与するものの、製品の主要な構成要素とはなり得ない、または金額的重要性が低い物品です。
- 燃料:ボイラー用重油、ガス、コークスなど
- 工場用消耗材料:塗料、接着剤、溶接棒、ハンダ、研磨剤など
- 包装材料:ダンボール、パレット、バンド、ラベルなど
これらは製品の一部として社外に出ていくものも含まれますが、個別の計量が困難であるため、間接費として処理されます。
工場消耗品費(洗剤、軍手、潤滑油など)
製品そのものにはなりませんが、製造設備や環境を維持するために消費される物品です。
- 機械関連:潤滑油、作動油、切削液、グリス
- 清掃・衛生:ウエス、洗剤、ほうき、消毒液
- 作業用品:軍手、安全靴、保護メガネ、作業服
- 事務用品:現場用伝票、筆記具、コピー用紙
これらは製造活動を支えるインフラのような存在であり、枯渇すれば工場の稼働そのものに影響を及ぼします。
消耗工具器具備品費(ドライバー、金型など)
耐用年数が1年未満、または取得価額が10万円未満の工具・器具・備品類です。これらは固定資産として減価償却せず、購入時に全額を処理します。
- 工具類:ドライバー、レンチ、スパナ、ペンチ、ハンマー
- 切削工具:ドリル、エンドミル、タップ
- 測定器:ノギス、マイクロメーター、ダイヤルゲージ
- その他:台車、脚立、作業椅子、簡易金型
特に切削工具などは消耗が激しく、高頻度で購入が発生するため、管理がおろそかになるとコスト増の要因となります。
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分類 |
概要 |
具体例 |
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補助材料費 |
製品の一部にはなるが、主要な材料ではないものや消費量が少ないもの |
塗料、接着剤、釘、薬品、メッキ材料 |
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工場消耗品費 |
製品そのものにはならず、製造過程で消費される物品 |
軍手、潤滑油、洗浄剤、梱包材、電球 |
|
消耗工具器具備品費 |
耐用年数1年未満または取得価額10万円未満の工具や備品 |
ドライバー、スパナ、ドリル刃、金型、測定器 |
間接材料費の計算方法と「配賦(はいふ)」の仕組み
間接材料費は特定の製品に紐付かないため、そのままでは製品ごとの原価を算出できません。そこで必要となるのが「配賦」という計算手続きです。
ここからは、経理担当者として知っておくべき、間接材料費の具体的な会計処理と計算の流れを解説します。
製造間接費としての配賦計算の流れ
間接材料費は、間接労務費や間接経費と合算され、「製造間接費」としてひとまとめに管理されます。これを各製品に合理的に負担させるために、一定のルール(配賦基準)に基づいて割り振り計算を行います。
計算のステップ:
- 製造間接費の集計:一定期間(通常1ヶ月)に発生した間接費の総額を算出。
- 配賦率の決定:総額を配賦基準の合計値で割り、単価(配賦率)を出す。
- 配賦率=製造間接費総額÷配賦基準数値の合計
- 各製品への配賦:各製品の基準数値に配賦率を掛ける。
- 配賦額=配賦率×各製品の配賦基準数値
このプロセスを経ることで初めて、製品1個あたりの正確な製造原価が見えてきます。
配賦基準の選び方(直接作業時間、機械稼働時間など)
配賦とは、複数の製品のために共通して発生した製造間接費を、一定の合理的なルールに基づいて各製品に割り振ることです。
配賦計算の精度を左右するのが、「何を基準にコストを配分するか」です。工場の特性に合わない基準を選ぶと、原価の実態が歪められてしまう恐れがあります。
代表的な配賦基準と適したケースは以下の通りです。
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配賦基準 |
適しているケース |
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直接作業時間 |
手作業が主体の組立工場など、労働集約的な現場 |
|
機械稼働時間 |
自動化が進んだ機械加工工場など、設備投資額が大きい現場 |
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生産数量 |
品種が少なく、仕様が均一な製品を大量生産する現場 |
|
直接材料費 |
材料費のウェイトが高く、材料の扱いにコストがかかる現場 |
例えば、全自動のラインで作る製品と、職人が手作業で作る製品が混在している場合、一律に「生産数量」で配賦するのは不適切です。現場の実態に合わせて、複数の基準を使い分けるなどの工夫が求められます。
間接材料費の管理が難しい理由とよくある課題
多くの企業が間接材料費の削減に苦戦するのはなぜでしょうか。その背景には、製造業特有の商習慣や業務プロセスに起因する構造的な問題が潜んでいます。
ここでは、現場でよく見られる代表的な課題を2つご紹介します。
多品種・多頻度・少額発注による業務の肥大化
計画的に大量購入する直接材料とは対照的に、間接材料(MRO)の調達は「多品種・少量・多頻度」になりがちです。
「A社からはボルト、B社からは工具、C社からは文具……」といった具合に、数千〜数万点に及ぶ品目を多数のサプライヤからバラバラに購入するため、見積合わせや発注処理、検収作業といった事務工数が膨大になります。
その結果、購買担当者はルーチンワークに忙殺され、コスト削減のための戦略的な活動に時間を割けないのが実情です。
管理不足による「在庫過多」や「欠品」のリスク
単価が安い品目が多いため、「在庫切れでラインを止めるわけにはいかない」という心理から、現場担当者は過剰に発注する傾向があります。
一方で、在庫管理の仕組みが整っていないため、「誰が発注したかわからない在庫」が倉庫に積み上がり、キャッシュフローを悪化させます。
逆に、必要なときに肝心の工具が見つからず、作業が中断するといった機会損失も頻発します。「たかが消耗品」という認識が、経営資源の浪費を招いているのです。
間接材料費を適正化・コスト削減するためのポイント
間接材料費の削減は、一過性の節約キャンペーンでは定着しません。業務プロセスそのものを見直し、仕組み化することで初めて継続的な効果が得られます。
ここでは、すぐにでも取り組める実践的なポイントを2つ解説します。
発注業務の集約と「見える化」
コスト適正化の入口は、「誰が・何を・どこから・いくらで購入しているか」という購買実態の把握です。これが可視化されるだけで、無駄の所在が明確になります。
具体的なアプローチとして有効なのが、集中購買体制への移行です。各部署がバラバラに行っていた発注を購買部門に集約するか、少なくともシステム上で一元管理することで、次の効果が期待できます。
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効果 |
内容 |
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重複発注の防止 |
全社の購買状況が一覧でわかるため、同じ品目の二重発注を抑止できる |
|
価格の統制 |
拠点ごとに異なる購入単価を標準化し、割高な取引を排除できる |
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業務工数の削減 |
承認・発注・検収プロセスを統一フローに集約し、処理負担を軽減できる |
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データ蓄積 |
購買履歴が集積されるため、次回の交渉や分析に活用できる |
「可視化」は、コスト削減施策を立案するための前提条件です。データなき改善は、感覚による対症療法にとどまります。
サプライヤの統合と価格交渉
購買の「見える化」が進んだ段階で、次に取り組むべきはサプライヤの絞り込みです。
複数の発注先に分散していた取引を集約することで、ボリュームディスカウント(量的割引交渉)が現実的な選択肢になります。
例えば、3社から別々に購入していた軍手・ウエス・手袋類を1社に統合するだけで、年間購入数量が増加し、単価交渉の根拠が生まれます。
さらに、類似品・代替品の標準化を進めることも有効です。
- 品目の標準化:「部署Aでは軍手をX、部署BではY」という分散を解消し、全社共通仕様に統一する
- サプライヤ評価の定期実施:価格・納期・品質の実績データを基に、定期的に取引先を見直す
- 購買条件の文書化:口頭や慣習に頼っていた取引条件を明文化し、価格交渉の再現性を高める
購買価格の見直しは、一時的な交渉ではなく継続的な仕組みとして整備することで、長期的なコスト競争力につながります。
間接材料費の管理効率化には「調達支援システム」が有効
これまでにご紹介した課題解決のポイントは、人の手だけで行うには限界があります。
そこで有効なのが、購買・調達業務を効率化するための専門的なITツール、いわゆる「調達支援システム」の活用です。
システムを導入することで、発注プロセスの標準化、データの自動収集、コスト分析などを効率的に行うことが可能になります。
カタログ購買による発注ミスの削減と統制強化
調達支援システムを導入すると、あらかじめ承認された品目・単価・取引先のみが登録された社内専用Webカタログから、担当者がオンライン上で直接発注できる環境を整備できます。
このカタログ購買の仕組みが実現することは次のとおりです。
- マーベリックバイイングの防止:承認外のサプライヤや高額品目への勝手な発注を構造的に遮断できる
- 発注ミスの削減:品目コード・単価・発注先がシステムで固定されるため、記入ミスや品番違いが発生しにくい
- 承認プロセスの電子化:紙・FAX・メールに依存していた承認フローがシステム上で完結し、処理スピードが向上する
- 内部統制の強化:調達プロセスがすべて記録されるため、下請法をはじめとするコンプライアンス対応にも有効
現場の発注担当者から経営層まで、「誰が・いつ・何を・いくらで発注したか」が一目でわかる体制は、ガバナンス強化の観点からも年々重要性が増しています。
購買データの一元管理で戦略的なコストダウンへ
システム経由で発注を一元化すると、副産物として購買データが自動的に蓄積されます。このデータこそが、次のコスト削減アクションを支える基盤です。
蓄積された購買データから見えてくる情報の例を挙げます。
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活用シーン |
具体的な内容 |
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コスト異常の早期発見 |
特定部署での使用量急増や割高な単価での発注を即座に検知できる |
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価格交渉の根拠形成 |
過去の購入単価・数量の推移データをサプライヤとの交渉材料に活用できる |
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予算管理の精度向上 |
部署ごとの間接材使用実績を基に、次期の予算計画を精緻化できる |
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サプライヤ評価 |
納期遵守率・価格推移・品質クレーム数などを定量比較し、取引先を見直せる |
経験と勘に頼っていた購買判断が、データに基づく意思決定へと転換されます。これは調達部門の強化にとどまらず、会社全体の原価競争力を底上げする取り組みです。
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