設備総合効率(OEE)とは?算出例・低下の原因となる7大ロスと改善方法を解説

製造業にとって生産プロセスの最適化は、製品の品質を高めて在庫ロスをなくして競争力を強化する上で欠かせません。

そのためには、設備総合効率(OEE)の改善が有効です。

今回は、設備総合効率が重視される理由や算出方法、設備総合効率のメリットについて解説します。設備総合効率をダウンさせる7大ロスや改善方法についても紹介するので、生産プロセスに課題を感じている場合はぜひ参考にしてください。

設備総合効率(OEE)とは

設備総合効率(OEE)の定義や、製造現場で重視されている理由について解説します。

設備総合効率の定義

設備総合効率とは、「生産設備が最大の能力に対して、良品をどれくらいの割合で生産できているか」を意味します。

英語では「Overall Equipment Effectiveness」と称され、略して「OEE」と呼ばれています。

設備総合効率が重視される理由

生産プロセスにおいては、設備の故障や意図しない停止などの阻害要因によって生産効率が下がる例が少なくありません。

しかしそれでは、作業者を無駄に拘束することにより賃金コストが上昇するだけでなく、利益圧縮や顧客からの信頼低下などの重大な損失につながるリスクがあります

そこで単に生産設備が稼働しているかではなく、厳密な稼働時間やその時間で生産された良品の数を常時把握することが、利益最大化に不可欠となります。

設備総合効率の算出手順

設備総合効率は、「時間稼働率」と「性能稼働率」と「良品率」の積で算出できます。

設備総合効率の求め方を以下の4つのステップに分けて解説し、実際に例を挙げて算出します。

  1. 時間稼働率を求める
  2. 性能稼働率を求める
  3. 良品率を求める
  4. 設備総合効率を求める

ステップ1 時間稼働率を求める

時間稼働率とは、設備に仕事を課す時間を意味する負荷時間(設備の電源が入っている時間とされる)に対して、実際に設備が稼働していた時間の割合を指します。

つまり午前9時に操業し、午後5時に終了して途中1時間休憩を挟んだとすると、

時間稼働率は、

「(負荷時間-停止時間)÷負荷時間×100%=(8−1)÷8=87.5%」

となります。

ステップ2 性能稼働率を求める 

性能稼働率とは、設備の稼働時間内に、どれだけの製品を生産できたかを示します。

言い方を変えると、稼働時間内に、性能どおりに稼働した割合です。

性能稼働率を求めるには、「基準サイクルタイム」の計測が必要になります。

基準サイクルタイムとは、一つの製品を生産するのにかかる時間です。

基準サイクルタイムが1分で、生産数が500個、稼働時間が520分だとすると、

性能稼働率は、

「(基準サイクルタイム×生産数)÷稼働時間=(1×500)÷520=約96.2%」

となります。             

ステップ3 良品率を求める

良品率は、生産数に対する良品数の割合です。つまり全体から不良品を除外した数量の割合を意味します。

生産数が500個で、良品数が495個だとすると、

良品率は、

「良品数÷生産数=495÷500=99%」

となります。

ステップ4 設備総合効率を求める

設備総合効率=時間稼働率×性能稼働率×良品率で算出できます。

したがって、上記の例に当てはめると、

設備総合効率=時間稼働率(87.5%)×性能稼働率(96.2%)×良品率(99%)=約83.3%

となります。

設備総合効率の基準値は?

設備総合効率の基準値は、一般的に約85%と言われています

しかしこの値はあくまでも目安であり、現実には業種や企業によって異なるため単純比較できません。

極端ですが、設備総合効率100%というのは、設備が常時性能通り最速で稼働しており、製品がすべて良品である理想の状況を意味します。

この理想に少しでも近づけるべく、製造業は生産プロセスにおけるロスを最小化する必要があるのです。

設備総合効率のメリット

設備総合効率の主なメリットは、以下の4点です。

  • 品質の改善と維持
  • 設備の故障によるロスを削減できる
  • 長期的な運用コストが削減できる
  • 保全コストを削減できる

品質の改善と維持

設備総合効率を常時可視化してトラッキングすることにより、品質の改善と維持が実現できます。

設備総合効率の構成要素である、時間稼働率、性能稼働率、良品率のそれぞれを可視化して分析すれば、生産プロセスのネガティブな変化が発見可能です。

仮に、稼働時間が同じにも関わらず性能稼働率が減少した場合、基準サイクルタイムと生産数のいずれか、あるいは両方がダウンしたと考えられます。

もし基準サイクルタイムが落ちているとするなら、機械に不良があるか作業者に落ち度があると推測できます。

このように生産効率の変化に対する迅速な原因究明と対策が可能となるため、設備総合効率を把握することで品質の改善と維持が実現します。

設備の故障によるロスを削減できる

設備は一旦故障してしまうと、修理に時間とコストがかかります。

その原因が深刻な場合は、生産自体をストップさせる必要があり、自社はもちろん、顧客にも多大な損失を与えるリスクがあるでしょう。

設備総合効率を分析することにより、故障の前触れを早期に発見できれば、生産ロスを最小限に食い止めることが可能になります。

長期的な運用コストが削減できる

生産設備の保全方法は、定期的に行う予防保全が一般的です。しかし設備の不具合や劣化はパーツやプロセスごとにまちまちのため、予防保全ではその前に故障するリスクが否定できません。

その点、設備総合効率は設備や機器ごとに監視し、不具合や劣化を先回りして対処する予知保全が可能なため、長期でみると大幅に保全コストが削減できます

設備総合効率をダウンさせる7大ロス

一般的に、設備総合効率のダウンを誘発する要因は以下の7つとされ、「7大ロス」と呼ばれています。

  1. 故障
  2. 段取り・調整
  3. 工具交換
  4. 立ち上がり
  5. 速度低下
  6. チョコ停・空運転
  7. 不良・手直し

それぞれについて詳しく解説します。

故障

設備が故障すると生産プロセスをストップせざるを得ません。

時間稼働率が下がるため、設備総合効率にも大幅な低下が生じます

故障が起きると、パーツの取り替えや専門業者による修理が必要となり、時間とコストがかかります。

こうした事態を回避するには、エッジコンピューティング(AIやIoTを搭載したセンサーやカメラ)により故障の前触れを早期に察知して対処する予知保全が欠かせません。

段取り・調整

生産ラインで異なる製品を生産する場合にともなう作業が段取りと調整です。

具体的には、設備や部品、材料を別の製品仕様に切り替えます。

段取りと調整には時間がかかるため、その間の生産効率は低下します。

したがって、段取りと調整の効率化が設備総合効率のダウンを抑えるポイントとなるのです。

工具交換

生産プロセスでは、フライスやエンドミル、ドリル、タップなどの刃具や消耗品の交換が必須となります。

その際は、生産設備をストップさせなければならないためロスが生じます

そこで自動工具交換装置(ATC)を活用したり、定期交換をルール化したりして工具交換時間を短縮することも、設備総合効率ダウンを回避する有効手段です。

立ち上がり

生産設備は、電源を入れてから稼働するまでの立ち上がりに時間を要することが珍しくありません。

立ち上がりに時間がかかると、時間稼働率が低下するため生産効率が下がります。

積み重なれば、利益圧縮のみならず、作業員の待機時間が増えるため人件費も無駄になるでしょう。

したがって、冬季や長期休暇明けなど立ち上がりに時間がかかるケースでは、前もって室内を暖めたり、電源を早めに入れたり、遠隔操作で電源をいれるなどの工夫が必要です。

速度低下

生産設備の速度低下は、生産効率を低下させます。

その原因としては、設備の経年劣化や故障などが考えられます。

こうした事態を回避するには、定期的なメンテナンスや予知保全による早期の部品交換といった対策が有効です。

チョコ停・空運転

チョコ停は、短時間の不具合や小さな故障を繰り返す現象のことで、空運転は、設備が稼働しているにも関わらず製品が生産できていない状態を指します。

いずれも深刻な事態には至らないケースが多いですが、度重なると膨大な生産ロスや時間ロスになるため、早期発見と適切な対処が求められます。

不良・手直し

不良品が発生すると、その度に手直しが必要になります。

手直しは自動化が難しく人手に頼るケースが多いため、時間もかかり生産効率の低下と人件費の無駄が生じます。

歩留が低下しないように、品質管理や設備のメンテナンス、また作業員教育など不良品を早期発見できる体制作りが大切です。

設備総合効率を改善する方法

すべての製造業において設備総合効率を高めることは、経営上の最重要項目の一つです。

そこで設備総合効率を改善する方法について3つ紹介します。

生産プロセスの見直し

生産プロセスは、最小の工数で最大の効果が得られるように随時見直しをすることが重要です。

設備総合効率を鈍化させる故障や段取り・調整、立ち上がり、工具交換などによる時間やコストのロスを最小化するために、各所に適切な人材を配置してオペレーションの最適化を図ります

機械やロボットの稼働状況を監視するだけでなく、加工後の検品精度を高め、材料・製品の運搬動線を最適化することも不可欠です。

予知保全システムの導入

定期的に設備の稼働状態をチェックする予防保全より、常に監視し続ける予知保全の方が、設備総合効率の改善には効果的です。

したがって、AIやIoTを搭載したセンサーやカメラなどのエッジコンピューティングで設備や製品を常時監視し、故障や不具合、不良品を未然に防ぐ予知保全システムを導入するのが得策です。

初期費用はかかりますが、7大ロスの多くを回避できるため長期的にはメリットが上回ると考えられます。

製造実行システム(MES)の導入

製造実行システムは、設備の稼働や在庫状況をリアルタイムで把握し、必要に応じて作業者に指示を出すことにより製造プロセスを管理するシステムです。

具体的には、以下のような機能があります。

  • 生産プロセスの管理
  • 製品のトラッキング(ステータスや保管場所の把握)
  • 生産作業に必要な仕様や文書の管理
  • 品質管理
  • 作業のスケジューリング
  • 作業手配と製造指示
  • 生産プロセスごとのデータ収集や進捗管理
  • 実績データの蓄積と分析

製造実行システムを導入すると、以下のような効果が期待できます。

  • 製造コストの削減
  • 生産性の向上
  • 品質の向上
  • 業務の標準化
  • 属人化の解消

以上のような効果により設備総合効率の改善が実現できます。

設備総合効率を改善して生産効率を高めよう

製造業にとって設備総合効率の改善は、経営効率を高める上で非常に重要なタスクです。

しかし、いかなる設備においても、故障や速度低下、空運転、不良・手直しなどのロスをゼロにすることは不可能です。

したがって、時間稼働率、性能稼働率、良品率をリアルタイムでトラッキングし、異常が見つかり次第、迅速に解決策を施す必要があります。

そのために、予知保全システムや製造実行システムなどの導入がおすすめです。

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そのため、時間稼働率を高めることによって設備総合効率の改善に役立つでしょう。

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