製造業における生産性・効率性を向上させるためには、部品管理が欠かせません。
部品はアイテム数が多く、小さなものも多いため、管理の難易度が高い傾向にあります。
部品管理を適切に行えず悩んでいる担当者は、部品管理を最適化する方法を確認しておきましょう。
本記事では、部品管理とは何か、概要から重要性まで詳しく解説します。
BOM・管理システムで最適化する方法もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
部品管理とは
部品管理とは、製造業などにおいて、製品を構成する部品や材料の種類・数量・保管場所・調達状況・使用状況などを体系的に管理することです。
部品が欠品したり過剰在庫になったりすると、生産遅延・コスト増・在庫スペースの無駄などの問題が発生するため、適切な部品管理は製造プロセスの効率化・コスト削減・品質維持に直結します。
部品管理では、在庫管理・納期管理・部品表（BOM：Bill of Materials） 管理などが中心となり、それぞれの管理業務が一体となり機能することで、仕入れから生産・保守までの生産工程における全体の流れを円滑化できます。
主な部品管理の方法
部品管理を実際に運用する際には、企業の規模・製品の複雑さ・生産方式などに応じていくつかの方法があります。
代表的な管理手法は、以下のとおりです。
- 在庫数・ロケーション管理型
- 発注リードタイム管理
- 安全在庫設定
- ロット管理・トレース管理
- 部品表 (BOM) 管理との連携
在庫数・ロケーション管理型
在庫数・ロケーション管理型は、部品の数量およびどこにどれだけ存在するかを正確に管理する方法です。
倉庫や工場内での保管場所を明確にして、棚番やロケーションコードを付けたり、バーコード／QRコードで追跡したりします。
発注リードタイム管理
発注リードタイム管理とは、部品を使うタイミングと「発注から納品までの期間を考慮した運用手法です。
発注タイミングを見極め、不足・遅延を防ぐ発注計画を立てられるようになります。
安全在庫設定
安全在庫設定とは、品目ごとに「最低在庫数」を設定して、需要変動や調達遅延に備える方法です。
需要予測や過去の実績に基づいて安全在庫を見直します。
ロット管理・トレース管理
ロット管理・トレース管理は、製造ロットや仕入れロットを記録し、どのロットの部品がどの製造製品に使われているか追跡できるようにする方式です。
品質問題が発生したときなどに原因を迅速に追及できます。
BOMとは
BOM（Bill of Materials）とは、製品を作るのに必要な部品・材料をリスト化したものです。
製品を作るのに必要な部品・材料をリストアップするだけでなく、階層構造や数量・仕様などを明示しているため、「部品表」や「部品構成表」とも呼ばれます。
製造業において、設計部門・購買部門・製造部門など複数部門で共通に利用され、部品不足・誤発注・コスト計算・変更対応などの基盤となるデータです。
BOMに記載する項目として、次のような情報が挙げられます。
- 品名／部品番号（品番）
- 数量（必要数）
- 親子関係（どの部品が中間部品で、どの親製品に含まれるか）
- 型式・仕様・材料などの属性情報
- 加工工程や順序（設計BOM／製造BOMでの違い）
また、BOMには複数の種類があり、代表的なものとして下記のようなものがあります。
- 設計部品表（E-BOM）
- 製造部品表（M-BOM）
- 購買部品表（P-BOM）
- サービス／保守部品表（S-BOM）
用途に応じたBOMを使用・管理することで、各部門で必要な情報を整えられます。
部品管理の重要性
部品管理を適切に行うと、下記のような効果を得られます。
- 生産性を向上
- コスト削減
- 品質維持・向上
- お客さま満足度向上
- リスクヘッジ
上記の効果を確認して、部品管理を行う重要性を理解しておきましょう。
生産性を向上
部品管理を適切に行うことで、生産設備故障などによる停止時間（ダウンタイム）を大幅に削減できます。
必要な部品がすぐに手に入る体制であれば、修理・メンテナンスをスムーズに行い、作業者が待機する時間や生産ラインの停止時間を抑制できます。
結果として、生産スケジュールの遅延が減り、生産能力を最大限活かせるようになるため、生産性が向上するのです。
コスト削減
部品管理を適切に行えば、過剰在庫や不足を防ぎ、コストカットにつながります。
過剰在庫があれば、保管コスト・陳腐化リスク・キャッシュフローの圧迫、不足すれば緊急調達コストや設備停止による損失が発生します。
部品管理により在庫を最適化し、安全在庫の設定・需要予測・ABC分類などを駆使することで、不必要なコストの削減が可能になります。
さらに、修理可能な部品のリファービッシュ（再生）活用などにより、新品購入費を抑えることも可能です。
品質維持・向上
部品の品質が不均一だったり、適切でない規格の部品が混入していたりすると、製品の性能・耐久性・仕上がりにバラつきが出てしまうので注意が必要です。
部品管理を徹底すれば、同一仕様の部品を使用し、ロット管理やトレース能力を確保できます。
部品管理により生産工程における不良率を低減させ、信頼性の高い製品を提供すれば、全体の品質維持・向上につながります。
また、定期的な部品の検査と交換時期の管理を行うことで、製造工程でのトラブルやクレームを未然に防げます。
お客さま満足度向上
部品管理が行き届いている企業は、納期遵守や迅速なメンテナンス対応、トラブル発生時の対応などにより、お客さまからの信頼を得やすいです。
具体的には、故障時に必要な部品がすぐに提供できれば、お客さまの不満や使用中断の期間が短くできるのです。
また、アフターサービス・メンテナンスの品質が安定すれば、お客さまの安心感・満足度が増し、リピート受注や口コミによる新規獲得も増える可能性があります。
部品管理はお客さま満足度の向上につながる重要な施策なので、日頃から適切に管理できる体制を整えておきましょう。
リスクヘッジ
部品管理は、予期せぬトラブルや市場変動に備えるリスクヘッジの手段です。
具体的には、サプライチェーンの遅延・仕入先の不安定化・部品の生産中止・廃番などのリスクに対して、クリティカルな部品を特定し十分な備蓄を確保、または代替部品・サプライヤを複数確保することでリスクを分散できます。
また、部品の劣化予測・寿命管理を行うことで、機器故障前に交換プロセスを計画でき、突発的な故障による被害を最小限に抑えられます。
部品管理の課題
「部品管理は難しい」と言われる理由には、下記のような課題が背景にあります。
- 入力ミスや管理ミスなどのヒューマンエラー
- 部品の在庫管理が煩雑
- 記帳作業による現場負担の増大
- トレーサビリティの確保が困難
- データの一元管理が必要
- 業務の属人化
それぞれの課題を確認して、適切に部品管理を行うための対処法を考案・実行しましょう。
入力ミスや管理ミスなどのヒューマンエラー
在庫台帳への誤入力・削除ミス・数量の過ちなどヒューマンエラーは部品管理で生じやすい課題の一つです。
在庫数と実際の倉庫の在庫が一致しない場合、不足部品の発注が遅れたり、過剰発注につながったりするリスクがあります。
手作業中心のプロセスや複数人での管理、紙ベースやデータベースでの記録が混在しているとミスが発覚しづらく、信頼できるデータを確保することが困難です。
入力ミスや管理ミスなどのヒューマンエラーは、人の手で行っている限りゼロにすることは難しいため、BOMシステムの導入などDX化を検討しましょう。
部品の在庫管理が煩雑
部品管理の課題として、部品の種類が多く、在庫管理が煩雑化しやすい点が挙げられます。
部品は小ネジや電子部品・モーターなど種類が豊富にあり、サイズ・材質・仕様などの細かい違いがあるため、在庫管理が煩雑化しやすいです。
さらに、調達リードタイムが部品ごとに異なり、遅延に備えた在庫量を確保しなければならない部品もあれば、過剰在庫を避けたい部品もあるため、管理基準を一律化することが難しいです。
目視で区別しづらい類似品が混在する場合では、誤出庫などのリスクも高まります。
記帳作業による現場負担の増大
部品管理が適切に進められない要因には、入庫・出庫・棚卸などの記帳・帳簿管理作業が多く、現場作業者の負担が大きいことが関係しています。
記帳作業が紙やExcelなど手動中心の場合、作業が遅くなるだけでなく、記録漏れや二重記帳が発生しやすくなるため要注意です。
また、記帳作業に時間を取られると、現場での業務効率が低下し、生産性にも悪影響を及ぼします。
記帳作業によって現場負担が増えると、本来のメンテナンス・生産作業に割ける時間が減るなど、生産工程全体のコストが増加する要因にもなるため要注意です。
トレーサビリティの確保が困難
製品の不具合やリコール対応などを行うためには、「どの部品がどのロットで使われたか」「いつどこで仕入れたか」など部品の履歴を追える体制づくりが必要です。
しかし、ロット管理が不十分だったり、記録が複数拠点・複数システムに散在したりすると、トレーサビリティ（製品が生産されてから消費・廃棄に至るまでの全過程の履歴を追跡・記録できる状態）が難しいです。
製造業においてトレーサビリティの欠如は、品質問題や法令対応面でのリスクを増大させるため、トレーサビリティを確保する仕組みづくりが求められます。
データの一元管理が必要
部品管理に関するデータが、複数のシステムや拠点に分散している場合、タイムリーで正確な判断を下しにくいです。
在庫数・位置・発注状況・過去の使用履歴などのデータが一元化されていないと、在庫の過剰や欠品を見逃す可能性があり、管理工数も増えます。
また、拠点間で管理方法が異なり、帳票も共有していない状態では、在庫不足や余剰が出ても融通できない状況になるため、ロスが生まれやすいです。
業務の属人化
特定の担当者だけが在庫管理業務を行っており、担当者が不在の状態では業務が滞る、もしくは品質が落ちる属人化は防ぐべき課題です。
部品表（BOM）作成・更新・発注業務・在庫調整など、属人化によってルール整備や引き継ぎが疎かになると、プロセスのバラつきやミスが増えます。
さらに業務が属人化している状態では、担当者が退職・異動した際に部品管理の質が低下するため、製品の品質低下や納期遅延などのトラブルへ発展するリスクもあります。
部品管理を最適化する方法
部品管理の課題を解消し、管理業務を最適化する方法は、下記のとおりです。
- BOMシステムを導入する
- バーコードやRFIDで管理する
- 作業マニュアルを標準化する
- 在庫データをリアルタイムで管理する
- 在庫チェックと棚卸を定期的に実施する
- 従業員教育と意識改革を徹底する
BOMシステムを導入する
BOMシステムを導入すれば、製品を構成する部品の種類や数量、構成関係を一元的に管理できます。
システムで部品を適切に管理すれば、在庫や発注業務を徹底的に管理し担当者の負担も軽減できます。
BOMを活用すれば、どの製品にどの部品が使われているかを瞬時に把握でき、調達や設計変更の際にもスムーズにできるため安心です。
また、BOMシステムでの部品管理は、紙やExcelを活用した管理体制に比べ、属人化やヒューマンエラーを防げるメリットもあります。
バーコードやRFIDで管理する
従来の目視やチェックリストによる部品管理では、棚卸や出庫時に手作業で確認する必要があるため、部品管理に時間がかかりミスも発生しやすいです。
バーコードやRFID（電子タグ） を活用した部品管理では、部品にコードを付与し、スキャナーやリーダーで読み取るだけで、入庫・出庫の処理を自動化できます。
バーコードやRFIDによる部品管理は、リアルタイムで正確なデータが反映されるため、ヒューマンエラーを大幅に削減できる施策としておすすめです。
作業マニュアルを標準化する
部品管理を最適化するには、作業マニュアルの標準化が欠かせません。
現場ごと・担当者ごとに異なるルールで作業していると、在庫精度のバラつきや属人化の原因になるため、部品管理の制度が低下します。
作業手順をマニュアル化し標準化することで、誰が対応しても同じ品質で部品管理を実施できるのです。
さらに、マニュアルを最新の運用状況に合わせて定期的に更新し、現場と共有しておくことで、常に課題を解消しながら部品管理の質を高められるようブラッシュアップできるため、全体の作業効率も向上させられます。
在庫データをリアルタイムで管理する
部品管理を最適化する方法として、部品の出入りをタイムラグなく記録できるシステムの導入が効果的です。
BOMシステムなどを活用して、在庫状況を即時に可視化できれば、欠品や過剰在庫を早期に発見できるので、トラブルを未然に防げます。
また、生産計画や発注計画とも連動させれば、サプライチェーン全体の効率化にもつながります。
在庫チェックと棚卸を定例化する
システムを導入しても、現物とデータが一致していなければ意味がありません。
部品管理を適切に行うために、定期的な在庫チェックと棚卸をルール化し、帳簿と実在庫を照合しましょう。
月次や四半期ごとの棚卸を定例化することで、差異を早期に修正でき、長期的に精度の高い在庫管理を維持できます。
部品管理を最適化するために管理システムを導入しよう！
部品管理を最適化するためには、BOMシステムなど管理システムの導入が効果的です。
管理システム「rBOM」を導入すれば、「リアルタイム統合部品表」を中心に、タイムリーな部品・在庫状況を把握できます。
設計から保守まで、幅広い業務機能が備わっているため、PDM（製品データ管理）やERP（統合基幹業務システム）などのシステムを導入するコストを削減できます。
下記で個別受注生産・多品種少量生産における問題と、問題を解決する「BOM」について解説しているため、資料をチェックしておきましょう。
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