タクトタイムとは、一つの製品を製造するためにかけられる時間のことです。主に製造業で使われる時間の指標です。
類似する言葉に「サイクルタイム」や「リードタイム」があり、意味をきちんと理解して使い分けることが重要です。
そこで本記事では、製造業の生産性を向上させるために必要不可欠なタクトタイムの概要や計算方法について解説します。
また、サイクルタイムやリードタイムとの関係性や生産性を向上する方法についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
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製造業で広く使われる指標のタクトタイムとは
タクトタイムとは、製品一つを生産するために使える工程作業時間のことです。
名前の由来は、リズムやテンポを意味するドイツ語の「Takt(タクト)」から来ており、別名「ピッチタイム」とも呼ばれています。
タクトタイムは、生産スケジュールやラインバランスを最適化するための指標として、主に製造業の現場で活用されています。
タクトタイムの計算方法
タクトタイムは、一日の利用可能な稼働時間を、一日の製品の生産数で割ることによって求めます。
一日の利用可能な稼働時間は、実際の生産ラインの稼働時間から休憩やメンテナンス時間を差し引いた時間です。計算式は以下の通りです。
タクトタイム=一日の利用可能な稼働時間÷一日の生産数 |
例えば、一日の稼働時間が480分(8時間)で、一日ごとの顧客からの注文数が240個の場合は、計算式は以下のようになります。
2分/個=480分÷240個 |
上記の場合では、顧客が求めている製品を製造するのに、「1個あたり2分のペースが理想」ということです。
タクトタイムとサイクルタイムの関係性
タクトタイムと似ている言葉に「サイクルタイム」があります。
サイクルタイムとは、実際に製品一つを生産するためにかかる時間のことです。
タクトタイムは顧客の需要に基づくペースである一方、サイクルタイムは実際の生産現場で1個の製品を作るのに要する時間を指します。
タクトタイムとサイクルタイムの関係性については以下の通りです。
タクトタイム=サイクルタイム |
理想 |
タクトタイム>サイクルタイム |
過剰在庫 |
タクトタイム<サイクルタイム |
欠品リスク |
両者の関係性は、製造プロセスの効率や生産性を判断する上で重要です。
ここからは、それぞれの状況について詳しく解説します。
タクトタイム=サイクルタイムが理想
タクトタイムとサイクルタイムの双方が同数の場合、顧客の需要量(注文数)に完全に合った生産ペースが維持されていることを意味します。
例えば、一日に200個の製品を製造できる工場で、一日に200個の注文数を抱えているケースです。
この場合は、工場の生産スケジュールやラインバランスの効率が非常に高いと言えます。
また、必要な生産能力と実際の生産能力が等しいため、現状の運用方法を変更しなければ、納期までに問題なく納品できるでしょう。
タクトタイム>サイクルタイムは過剰在庫
タクトタイムがサイクルタイムを上回っている場合、顧客の需要量(注文数)を上回る生産が可能であることを意味します。
例えば、一日に200個の製品を製造できる工場で、一日に150個しか注文数がないケースです。
この場合は、顧客が注文した製品を、納期までに余裕を持って生産できます。
一方で、過剰在庫を抱えることになったり、コストがかかり経費率が悪化したりなどのリスクが生まれやすいため注意が必要です。
タクトタイム<サイクルタイムは欠品リスク
タクトタイムがサイクルタイムを下回っている場合、顧客の需要量(注文数)に見合った生産は不可能であることを意味します。
例えば、一日に200個の注文数がある一方で、一日に生産できるのは180個であるケースです。
この場合は、欠品リスクや納期延期の可能性が高まります。人員の増加や稼働時間の見直しなどを通して、生産スケジュールやラインバランスを修正する必要があります。
タクトタイムとリードタイムの違い
タクトタイムと類似する言葉に「リードタイム」があります。
リードタイムとは、製品の注文から納品までの全体的な時間のことです。
タクトタイム・サイクルタイム |
リードタイム |
製造現場での生産速度 |
製品の設計、調達、製造、納品までの一連のプロセスにかかる時間 |
ここからは、リードタイムの種類と計算方法について解説します。
リードタイムの種類
リードタイムが短いと、納期までに遅滞なく製品が顧客の手元に届くため、顧客満足度は高まります。
リードタイムを短縮するためには、代表的な3つの種類を理解することが重要です。
種類 |
内容 |
調達リードタイム |
原材料の発注から受け取りまでの時間 |
生産リードタイム |
生産工程の開始から完了までの時間 |
納品リードタイム |
製品を完成させてから顧客に届けるまでの時間 |
リードタイムは、商品の取引・生産にかかった実測値です。各工程で実際にかかった時間を合計することで、全体の生産性を判断できます。
リードタイムの計算方法
リードタイムは、各工程の時間を合算することで計算できます。
例えば、調達リードタイムが2日、生産リードタイムが4日、納品リードタイムが1日の場合は、以下のように計算することが可能です。
2日+4日+1日=7日(1週間) |
リードタイムは、生産過程そのものに必要な時間だけではなく、生産が止まっている間の時間も計算します。
そのため、製品を製造する過程で発生する仕掛在庫が多いと、その分リードタイムは伸びていきます。
製造業で生産性を向上する方法
製造業において生産性を向上する方法は3つです。
1.サイクルタイムを短縮する
2.リードタイムを短縮する
3.生産管理システムを導入する
ここからは、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
サイクルタイムを短縮する
製品の生産が追いつかず、納期延期や欠品が起きることは、製造業にとっての死活問題です。サイクルタイムを短縮して、生産工程のロスタイムを減らしましょう。
具体的には、以下の施策が有効です。
・人員の増加
・稼働時間の見直し
・設備や機械の定期点検
・品質検査の自動化
まずはサイクルタイムが伸びている原因を分析して、課題となるボトルネックを発見したら、それぞれ有効な施策を打ちましょう。
リードタイムを短縮する
各工程のリードタイムを短縮する施策を実施することで、タクトタイムを効率化させることが可能です。以下で具体例を紹介します。
調達リードタイムの短縮方法 |
・部品の調達先を変更する ・商品の仕様を均一化(共通化)する |
生産リードタイムの短縮方法 |
・生産スケジュールを見直して業務をスリム化する ・仕掛在庫の発生を抑制する ・人員整理を進める |
納品リードタイムの短縮方法 |
・倉庫内の在庫管理システムを変更する ・配達方法を見直す |
製品の発注から納品までのプロセスの中から、リードタイムを最適化できるポイントを見つけ、在庫の停滞をゼロに近づけましょう。
生産管理システムを導入する
生産性を向上させるために、生産管理システムを導入することが効果的です。
特に製造業では、取り扱う部品の数が多く、製造する製品も多種多様です。
生産管理システムを導入することで、データに基づいた意思決定ができ、生産効率を向上させられます。
サイクルタイムやリードタイムを短縮して生産性を向上させよう
タクトタイムは、一日の生産数を基に算出した生産ペースです。
特に製造業では、業界や企業の規模にもよりますが、一般的に取引先の数が多く、取り扱う製品も多種多様であることが多いです。
そこで、生産管理システムを活用して、生産リードタイムやサイクルタイムの効率を最大化することが有効です。
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