比較購買とは、複数のサプライヤや候補製品を比較し、品質・価格・納期・リスクなどの観点から最適な調達先を選定する購買手法のことです。
製造業をはじめ、あらゆる業界で一般的に行われるプロセスですが、昨今は原材料価格の高騰やサプライチェーンの複雑化により、より戦略的な比較購買が求められています。
比較購買を正しく行うことで、単なる価格の安さだけでなく、調達リスクの低減や品質の安定化、サプライヤとの長期的な関係構築にもつながります。一方で、比較項目が多岐にわたるため、属人的な判断だけでは効率的な運用が難しく、工数が増えてしまうケースも少なくありません。
本記事では、比較購買の基本概念、メリット、効率化のポイント、そして実際の流れをわかりやすく解説します。
目次
比較購買とは
比較購買とは、資材・物品・サービスなどを購入する際に、複数のサプライヤを比較・検討しながら購入を進めるプロセスです。いわゆる相見積と類似しています。
さまざまな観点から比較・検討することによって、自社にとってより良いものを購入することが、比較購買の目的です。
価格はもちろん、納期・機能・持続性・操作性など、重点を置く課題は企業によって異なります。
比較購買は、購買にかかるコストを抑えるうえで有用な手段です。
また、複数の候補を比較・検討することにより、より良いサプライヤを見つけられます。
「比較購買」をなぜするべきか？メリットを整理しよう
品質の良いものを、より低コストで買い入れるためには、さまざまなアプローチがあります。その一つである「相見積」はバイヤーにとって欠かせないテクニックです。そのメリットとしては、次の2つが挙げられます。
適正価格の選定と競争によるコストダウン
一つ目は、複数業者の見積を比較することで、市場の適正価格を把握したり、理想的な条件を引き出したりするための交渉を円滑化できることです。
そもそも市場の相場は、需要と供給のバランスが変わる中で日々変化しています。その適正値を見極めることは極めて重要と言えます。また、仮に高値が付きやすいタイミングであっても、業者間の価格競争を促すことによってコストダウンを導ける可能性もあるのです。
内部統制の強化
二つ目は、不適切な取引の防止による内部統制の強化です。サプライヤーへの発注量が増え、関係性が深くなるほど、不適切な取引が行われる恐れは高くなります。企業間や担当者間での癒着が見られる場合、顧客への提供価値や経済合理性の追求が疎かになり、個々人のメリットが優先されるリスクも出てくるのです。
こうした背景があるからこそ、比較購買にきちんと取り組むことが大切です。
比較購買の活用事例
比較購買は製造業や建設業などで実施されています。
本章では、それぞれの業界の活用事例について解説します。
製造業の活用事例
製造業は仕入や資材調達の過程で、比較購買が必須です。
業務の性質上、大量に原料や資材を調達する製造業は、コストダウンのために、より安く仕入れられるサプライヤから購入する必要があります。
また、製造ラインへの影響を抑えるために、品質や納期の厳重な管理も重視している点が特長です。
製造業界では専用の購買管理システムがあるなど、比較購買を効率化するツールを積極的に活用しています。
製造業の購買管理システムは、発注から支払までを一元で管理するだけでなく、各サプライヤの情報を残すことで、比較購買のスムーズな実践が可能です。
建設業の活用事例
建設業は資材の調達だけでなく、特定の工事をサプライヤに下請けする機会が多いため、比較購買をすることは珍しくありません。
コストはもちろん、工期や工事のクオリティなどを踏まえて比較購買する必要があります。
建設業の比較購買は、他の業界より見積の内容が複雑になりやすいのが特長です。
特に工事を下請けに回す場合、施工場所・責任施工範囲・施工環境などを細かくサプライヤに提示しなければなりません。
建設業でも、専用の購買管理システムが活用されており、効率的な比較購買が実施されています。
「比較購買」のメリットを最大化する3つのポイント
では、比較購買のメリットを最大限に引き出すためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。主なものとして挙げられるのは、次の通りです。
見積は5社程度から取得して比較する
一つ目のポイントは、相見積を取得する社数です。複数社から見積を集めることで、価格だけでなく、提案内容・対応品質・納期などを幅広く比較できるようになります。
特に近年はサービスや技術が多様化しており、企業ごとに得意分野や強みが大きく異なるため、3〜4社では比較材料が不足するケースもあります。
そのため、より客観的な判断材料をそろえるには、5社程度から見積を取得する方法が一般的です。社数を増やすことで比較の精度が高まる一方、比較作業の工数も増えるため、業務負荷とのバランスを取りながら進めることが重要です。
見積の比較をすることは予め業者へ伝える
二つ目のポイントは、相見積をすることをあらかじめ業者に伝えることです。
見積もりを作成する行為は、サプライヤー側にも負担を強いることになるため、マナーとして事前の連絡を欠かさないようにしましょう。また、これによって価格競争を促すことも可能になるため、重要なポイントの一つと言えます。
いつも同じサプライヤーで比較しない
三つ目のポイントは、新規の業者を入れてみることです。これまでに取引があるサプライヤーだけで 過去の実績や習慣、お互いの友好関係などがあり、一定の信頼関係において見積りが行われるものです。そのため、見積価格が市場価格に近い適正価格であるかどうか、なかなか判断がつかないケースが多いのです。そこで、比較するサプライヤーを思い切って変えてみたり、新規の業者を1社加えてみる、といった工夫が求められます。
そして、こうした相見積もりを効率的に行えるようにするためには、過去の見積もり情報を一元管理できるシステムが有効といえます。
比較購買実施の流れ
比較購買は以下の流れで実施します。
- 見積条件を整理する
- 見積を依頼するサプライヤを選定する
- サプライヤに見積依頼する
- 見積を比較する
- 見積情報を履歴として残して分析・活用する活用する
それぞれのプロセスについて、順番に解説します。
1.見積条件を整理する
最初に自社が購入する予定のサービス・物品などの条件を整理しましょう。
特に以下の条件を明確にしておくことが重要です。
- 価格
- 仕様
- 数量
- 納期
- 支払条件
条件が明確になっていないと、見積の内容にばらつきが生まれ、公平な比較・検討ができません。
より良い比較購買をするうえでも、条件は具体的に決めておきましょう。
2.見積を依頼するサプライヤを選定する
整理した条件を基に、見積を依頼するサプライヤを選定します。
条件を満たすサプライヤを選定する際は、ポータルサイトや比較サイトを参照しましょう。
導入実績や第三者の評価も確認しておくと、より良いサプライヤを選定できます。
なお、サプライヤを選定する際は、取引実績がある企業だけでなく、新規の企業にも目を向けましょう。
3.サプライヤに見積依頼する
サプライヤ候補が確定したら、見積を依頼します。
自社の条件を正確に伝えることで、より確度の高い見積ができます。
見積を依頼する際は、予め相見積であることを明示しましょう。
サプライヤとの信頼関係を維持できるうえに、相見積であることを意識して、先方がより良い条件を提示してくれる可能性が高まります。
また、回答期限を明示することも重要です。回答期限を確定することで、スケジュールの遅延を防げます。
4.見積を比較する
サプライヤからの見積が揃ったら、比較・検討しましょう。
予め整理した条件に加え、アフターサービスや保証内容などを比較することで、より良い選定が可能です。
不明点があればサプライヤに確認を取りましょう。
また、比較する際は主観的な評価をなるべく排除しましょう。
先入観をなくし、客観的な根拠を重視することが、適切な評価につながります。
5.見積情報を履歴として残して活用する
比較購買が終わったあとは、価格や納期など見積情報を履歴として残しましょう。
過去の見積情報は、サプライヤとのやり取りを確認する際の重要なエビデンスです。
また、新たに比較購買を実施するうえで候補先を選定したり、価格をチェックしたりするうえで参考になります。
比較購買の課題
比較購買は有用な方法ですが、以下のような課題が想定されます。
- 複数のサプライヤとのやり取りに時間がかかる
- 取引情報の管理が煩雑になりやすい
比較購買は性質上、複数のサプライヤと同時にやり取りをすることも珍しくありません。
しかし、複数のサプライヤと同時にやり取りをしていると、時間がかかるうえに、取引情報の管理が煩雑になります。
適切な対応ができていないと、サプライヤからの連絡を見落としたり、スケジュールが遅延したりします。
比較購買の課題を解決するなら、適切なシステムの導入を検討しましょう。
サプライヤの情報を一元的に管理し、比較を容易にするシステムがあれば、スムーズな比較購買が実現します。
担当者が変わってもサプライヤーを管理・比較しやすい「購買管理システム」
比較検討するサプライヤーを開拓する際には前任者や他の担当者が行った取引や交渉履歴を残せることが重要となります。これらの履歴を業務ノウハウとして蓄積できることが、効率的なサプライヤー選定を行える組織づくりにつながるといっても過言ではありません。
DAIKO XTECHが提供する購買管理システム「PROCURESUITE（プロキュアスイート）」であれば、過去の見積もり履歴をセキュアなクラウド上で一元化することができます。購買実績データの傾向値分析を行うことで、コスト削減の次の一手を見出すことも可能です。
各担当者が過去に行った見積や交渉履歴の一元管理すれば、社内への業務ノウハウを蓄積し、人材育成に活用することもできます。購買業務の経験が少ない人材であっても、適切な資材調達を進めることが可能になるでしょう。
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