取引先からグリーン購入法への対応を求められ、戸惑う担当者は少なくありません。また、対応を前向きに検討していながらも「何から着手すべきか」「どのような法律なのか」などの疑問から、足踏みしている方も多いでしょう。
一見複雑そうに見える制度ですが、正しく理解すれば、適合への道筋は意外とシンプルです。また、対応の推進は単なるルールの遵守にとどまらず、ビジネスリスクの回避や競合他社との差別化にも貢献します。
本記事では、グリーン購入法の基本的な仕組みから適合条件、具体的な対応ステップまで網羅的に解説します。自社の環境対応を負担ではなく、強みに変えるための第一歩として、ぜひご活用ください。
目次
グリーン購入法とは?
グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)は、環境に配慮した製品の優先的な購入を促進するための法律です。主に国や自治体といった調達側のルールで、2001年の施行以降、改定されながら運用されています。
公的機関が率先して行動し、その波及効果で民間や個人にも環境配慮を促す構造であり、最終的には循環型社会の構築を目指しています。需要側のルールですが、製品を供給する製造業側にとっても強く意識すべき重要な基準です。
法律の対象範囲
グリーン購入法は、国の機関だけでなく民間企業や国民も対象となる制度です。ただし、法的義務のレベルは一律ではなく、機関や立場によって以下の3段階に分けられています。
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対象者 |
規定の概要 |
義務のレベル |
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国・独立行政法人 |
予算の適正な使用に留意しつつ、環境物品を優先的に選択・調達しなければならない |
義務 |
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地方公共団体・地方独立行政法人 |
自らの業務や事業を行う際、環境に配慮した製品を積極的に選ぶような仕組みづくりや取り組みを行う |
努力義務 |
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事業者・国民 |
物品を購入・借り受ける際、できる限り環境負荷の少ない環境物品を選択するよう努める |
一般責務 |
民間企業は努力義務よりも法的な縛りが緩い一般責務の範囲です。しかし、実際は国に納品する企業や、サプライチェーンの上流企業から適合を求められるケースも少なくありません。そのため、製造業としても可能な限り対応を進めることが強く推奨されます。
グリーン購入法が推進される背景
本法律が推進される背景には、環境問題の深刻化や、カーボンニュートラル・SDGsといった持続可能な社会づくりに向けた世界的な潮流があります。このような社会の形成には、製品の供給面だけでなく、需要面からのアプローチが不可欠です。
そこで日本は、国や自治体などの公的機関が率先して環境物品等の調達を推進する法律を定め、市場全体の需要転換を図っています。公的な調達を通じて企業の環境配慮製品の開発を促し、開発・製造から消費に至るクリーンなサイクルを社会全体に定着させることが本法律の狙いです。
グリーン購入法における特定調達品目
グリーン購入法では、優先的または重点的に購入・調達すべき製品群が特定調達品目として定められています。これには環境負荷の低減効果が高く、市場への影響力が大きな品目を指定することで、効率的にグリーン購入を推進する狙いがあります。製造業に関連する主な分野は以下の通りです。
- 紙類、文具類、オフィス家具等
- 電子計算機等、オフィス機器等、画像機器等、移動電話等
- 家電製品、エアコンディショナー等、温水器等、照明
- 自動車等、消火器、作業手袋
- 設備、公共工事
2026年(令和8年)2月の基本方針変更に伴い、新たに1品目が追加され、令和8年度は22分野291品目です。また、品目は定期的に見直しが行われており、分野や品目は年々増加しています。
グリーン購入法の適合条件
グリーン購入法の適合条件は、大きく分けて2つの項目で構成されています。具体的には、適合の前提となる必須項目と、さらなる環境負荷低減を目指す推奨項目です。
ここでは、それぞれの内容について解説します。
判断の基準(必須要件)
判断の基準とは、グリーン購入法の適合品を名乗るための必須要件です。本基準では品目ごとに「決められたエネルギー消費効率を上回っていること」や「特定の化学物質の含有率が基準値以下であること」などの条件が定められています。この基準を満たしていない製品は、適合品と見なされません。
また、品目によっては、より高い環境性能を示す「基準値1」と最低限満たすべき「基準値2」の2段階が設定されるケースも存在します。基準値1については満たせない場合の例外も認められていますが、製造側としては推奨されている以上、対応を進めることが望ましいです。
配慮事項
配慮事項とは、必須ではないものの、満たしていることが望ましいとされる要件です。一律の義務化は難しいものの、さらなる環境負荷低減を促進するための重要な要素として位置づけられています。内容の一例はこちらです。
- 電子計算機(パソコンなど):再使用部品を可能な限り使っている
- コピー機等:ライフサイクル全般でカーボン・オフセットされていること
- エアコンディショナー:冷媒に可能な限り地球温暖化係数の小さい物質が使用されていること
必須条件ではありませんが、公的機関の入札時に加点評価の対象となるほか、競合他社との強力な差別化要因にもなり得ます。自社製品の付加価値を高め、市場での競争力を強化するためにも、配慮事項への対応を積極的に検討しましょう。
詳細な条件は環境省公式サイトより確認できる
判断の基準や配慮事項の詳細は、環境省の公式サイトで公開されている資料「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」で閲覧できます。資料内では表形式でまとめられており、左側に品目、右側に【判断の基準】と【配慮事項】、表の下部には補足情報が記載されています。
対象品目や基準は定期的に見直されるため、少なくとも毎年度、目を通し、最新の情報を押さえておきましょう。なお、数百ページに及ぶPDF資料のためパソコンで閲覧し、必要に応じて「Ctrl + F」などの検索機能を活用して情報を探す方法が効率的です。
製品をグリーン購入法に適合させるための具体的なステップ
グリーン購入法への適合は現状の整理からはじまり、サプライヤからのデータ収集、設計の見直し、自己宣言の流れで進行します。場当たり的な対応でも進行は可能ですが、トラブルや手戻りを防ぐためにも、大まかな流れと全体像は押さえておきましょう。
以下では、着実に要件をクリアするための、4つの具体的なステップをご紹介します。
STEP1:自社製品の詳細と基準を確認
最初のステップは、自社製品が特定調達品目に該当するかどうかを確認し、求められる基準と現状のスペックを照らし合わせる作業です。現状と基準との差分を正確に把握しなければ、具体的な対策や目標を立てられません。
まず、環境省の基本方針を参照し、対象品目の判断の基準をチェックします。次に、自社製品の材質や消費電力、設計といったスペックを整理しましょう。
なお、製造業においては取り扱う部品や原材料が多岐にわたるため、売上比率の高い主要な製品から優先して調査を進めるのが効率的です。
STEP2:サプライヤからのデータ収集
最終製品が基準を満たしていると証明するためには、製品を構成するすべての部材についての正確な環境情報が必要です。そのため、本ステップではサプライヤに協力してもらい、自社で製造していない部品や材料の環境負荷に関するデータを収集します。
調査・収集する項目は、有害物質の使用状況やリサイクルの可能性などです。あわせて、相手企業の化学物質管理システム(CMS)や環境マネジメントシステム(*EMS)に関する状況を問い合わせると、その後の連携を効率的に進められます。
なお、データ収集の際は認識の相違や伝達ミスを回避するため、必ずデジタルデータや書面による回答を求めてください。
*EMS:企業が自社の環境負荷を管理し、継続的に改善していくための社内体制や仕組み(代表例:ISO 14001)
STEP3:基準に合わせて設計変更や部材転換を行う
サプライヤから集めたデータと基準を比較し、基準に達していない場合は、設計変更や部材の切り替えを実施します。具体的には、環境基準を満たしている代替材料への転換や、省エネ性能を高めるための設計見直しを行います。見直しの際は設計部門だけでなく、製造部門や購買部門など関連部門すべてが密に連携し、品質やコストとのバランスをとりながら進めることが重要です。
また、サプライヤ選定については、環境マネジメントシステムの国際規格・ISO 14001の認証取得状況や化学物質の管理体制、取り組みなどを評価基準とすることが有効です。各ポイントをチェックすれば、環境への取り組みに積極的で、連携がとりやすいサプライヤをスムーズに見つけられます。
STEP4:グリーン購入法適合の宣言と根拠の提示
製品が基準を満たした後は、事業者自身で「グリーン購入法適合品である」と自己宣言を行います。適合を公表・表示する場所は自社の公式サイトや広告媒体、カタログ、製品本体などが一般的です。
なお、適合の根拠となる文章の作成や管理は、ガイドラインの遵守が欠かせません。加えて、購入者へ必要な情報やエビデンスを適切な方法で提供する義務もあるため、宣言の前には必ずガイドラインと法律を確認しましょう。
参考:e-Gov|国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律第十二条~第十四条
参考:環境省|グリーン購入法の特定調達品目等における表示の信頼性確保に向けて
グリーン購入法に対応するメリット
グリーン購入法への対応は、ブランドイメージの向上や新たな取引の獲得に直結し、企業の競争力を高める強力な武器となり得ます。さらに、ビジネスリスクの回避にもつながるため、積極的に推進しましょう。
以下では、対応を進める前にぜひ知っておきたい、4つの具体的なメリットを解説します。
社会的責任や環境への意識が高い企業として認識される
グリーン購入法に適合することで、社会的責任(CSR)を積極的に果たし、環境意識も高い企業として周囲から認識されやすくなります。なぜなら、国が定めた客観的な基準をクリアした事実が、環境配慮への誠実な取り組みを示す強力な証明になるからです。
適合実績をパンフレットやWebサイト、広告でアピールすれば、消費者や取引先に「環境に優しい企業」という印象を与えられます。また、イメージの向上は、金融機関や投資家からの高評価にもつながります。環境保全につながるだけでなく、ブランディングにもプラスの効果が期待できるのは、企業にとって大きなメリットです。
自治体や国の機関と円滑に取引できる
国や自治体とより円滑に取引を進められることも、グリーン購入法に対応した製品を製造するメリットです。国の機関には調達の義務があるほか、自治体にも努力義務が課せられています。これらの機関では適合品が優先的に選ばれるため、法律に対応すれば継続的な取引が期待できます。
また、早期に対応していれば、国や自治体の調達案件が公示された際、スムーズに参加できる点もメリットです。継続的な取引に加え、新たなビジネスチャンスの創出にもつながるため積極的な対応をおすすめします。
不適合による取引停止のリスクを回避できる
国や自治体と取引がある企業は、製品がグリーン購入法に適合しているかを強く意識しています。同法を重視する企業は増えており、実際に取引先から「適合商品を製造してほしい」と要請されるケースも少なくありません。もし対応できなければ、長年の取引先であっても調達網から外されるリスクがあります。
先回りして適合体制を整えておけば、事業リスクを確実に排除し、良好な関係の維持が可能です。さらに、確かな環境性能は競合との明確な差別化につながり、新規開拓を後押しする武器にも変わります。
GX(グリーントランスフォーメーション)推進の第一歩になる
GXとは、再生可能エネルギー中心の社会へ移行するための、ビジネスプロセスの変革のことです。環境負荷の低減を目的とするグリーン購入法に対応することで、GX推進における重要な第一歩を踏み出せます。
適合に向けて製造方法や設計、部品を見直せば、製造における環境負荷も低減できます。さらに、天然資源も守れるほか、水道光熱費の削減も可能です。また、企業努力によるグリーン購入法適合品の普及とGX推進は、SDGsを実現する持続可能な社会づくりにも大いに貢献します。
グリーン購入法対応を進めるうえ 上での注意点
グリーン購入法への適合は一度クリアして終わりではなく、継続的な情報収集とサプライチェーン全体での連携、そして適切なデータ管理が不可欠です。制度の仕組みやデータ管理の手法を正しく把握していないと、せっかくの取り組みが思わぬトラブルを招く危険性があります。
ここでは、製造業が陥りやすい3つの注意点と対策方法を解説します。
判断基準の年次更新への対応を怠らない
グリーン購入法における特定調達品目や判断の基準、配慮事項は毎年度見直されています。特に適合の最低ラインとなる判断の基準は、年々厳しくなっているため注意が必要です。
仮に一度適合したからといって放置していると、基準の変更によって不適合品と見なされ、取引に支障をきたすリスクがあります。トラブルを未然に防ぐためにも、判断基準は毎年必ず確認し、必要に応じて設計や部品などの見直しを実施しましょう。
サプライヤへの対応依頼や確認が必要
グリーン購入法では、最終製品だけでなく、それを構成する原材料や部品全体で環境負荷低減に貢献していると証明することが求められます。そのため、適合品を作り上げるためには、サプライヤが提供する製品も基準をクリアしている必要があります。
また、仮に基準に満たない場合は、サプライヤに対する対応依頼も必要です。対応が困難な場合には、調達先の再検討も視野に入れなければなりません。適合品を作るメリットは多いですが、対応までに多くの確認作業や調整が必要になる点は留意しておきましょう。
部品データとエビデンスの徹底した管理が必須
グリーン購入法では根拠となるエビデンス(証明資料)を適切に管理し、求めに応じて提示することがルールとして定められています。公的機関や取引先から確認を求められた際にデータを迅速に提出できなければ、要件を満たしていないと見なされ、取引を打ち切られるリスクがあります。
特に部品構成が複雑な製造業において、Excelや紙での管理は検索性が低く、一元管理も難しいためルールを満たすレベルでの管理は困難です。また、記録や検索に関する人件費、保管や管理のコストなども無視できません。確実な適合証明と業務効率化を両立するためにも、環境情報を一元管理できるシステムや化学物質管理システム(CMS)の導入を強く推奨します。
グリーン購入法に関するよくある質問(FAQ)
グリーン購入法に関してのよくある質問と、その回答をまとめました。
実務を進めるうえで迷いやすいポイントや他の取り組みとの違い、関連制度などについて整理しているので、ぜひ取り組みの参考にしてください。
適合品であることを証明する認証はありますか?
グリーン購入法に適合していることを、国が公式に証明する認定制度や統一マークは存在しません。現在の制度では、企業自らが基準を満たしていることを確認し、情報を開示する自己宣言が基本です。
なお、エコマークの取得は基準適合のわかりやすい目安となり、企業イメージの向上にもつながります。また、ISO 14001の認証取得も取引において有利に働くため、余裕があるなら取得の検討をおすすめします。
グリーン購入とグリーン調達との違いは何ですか?
両者の主な違いは、取り組む主体と目的にあります。グリーン購入は国や自治体、企業などが製品やサービスを購入する際に、環境負荷の少ないものを選ぶ取り組みです。
一方のグリーン調達は、企業が自社製品を作るための部品や原材料を仕入れる際、環境負荷全般を考慮して取引先を選定する取り組みです。欧州のRoHS指令をはじめとする環境規制への対応も含まれており、一般的にはグリーン調達基準書を用いて調達企業の視点で運用されます。
【関連記事】グリーン調達とは|メリットやガイドライン、実施の流れまで解説
グリーン購入法を守らないと罰則を課されますか?
グリーン購入法そのものに罰則規定は設けられていません。しかし、実態がないにもかかわらず環境に良いとアピールするグリーンウォッシュが発覚すると、ブランドイメージは著しく悪化します。
さらに、投資家や取引先からの信用も失いかねません。また、景品表示法における優良誤認表示に該当した場合、措置命令や課徴金などの行政処分の対象となる恐れもあります。
中小企業や下請け企業でも対応は必須ですか?
法律上、民間企業に対するグリーン購入法への対応は一般的責務であり、法的な強制力や義務はありません。
しかし、国や自治体と直接取引を行う企業は適合が必須です。また、そうした企業がサプライチェーン上の下請け企業に適合を求めるケースも増えており、対応が必要になる場面も少なくありません。
対応にかかる費用を抑えるための補助金はありますか?
現時点において、「グリーン購入法への適合」という名目のみを直接支援する専用の補助金制度はありません。しかし、適合に向けた社内体制の構築や設備投資に対しては、既存の補助金制度を活用できます。
例えば、補助金事務局に登録されたIT導入支援事業者を通じて、対象のITツールを導入する場合には「デジタル化・AI導入補助金」を活用できます。また、環境配慮型の新製品開発や生産設備の刷新には「ものづくり補助金」の利用も可能です。
グリーン購入法への適合を、競争力の強化とGXの第一歩に
製造業がグリーン購入法へ適合するには、基準の精査やデータ収集など、相応の工数やリソースが求められます。しかし、この取り組みは単なる事務的な負担ではなく、市場での競争優位性を確立し、GXを推進するための重要な投資に他なりません。
まずは自社の現状を整理し、適合に向けた具体的なロードマップを策定しましょう。そして取引先と緊密に連携して環境配慮型の製品開発を推進し、持続可能な社会の実現に貢献する企業としての基盤を構築してください。
また、サプライチェーン全体の環境負荷を低減するには、確実な「グリーン調達」の仕組み化が不可欠です。購買・調達支援システム「PROCURESUITE」なら、サプライヤ情報や購買プロセスを一元管理し、グリーン調達の運用基盤を社内へ無理なく定着させることができます。詳細は以下より、ぜひご確認ください。
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