日本の購買調達DXが遅れている理由とは?実施時のポイントも解説

日本では購買・調達DXに取り組んでいる企業が少ないのが現状です。複雑で多岐にわたる業務の特性や、バックオフィス的な立ち位置であることを理由に後回しにされがちな購買・調達DXですが、実現すれば多くのメリットをもたらすことをご存知でしょうか。

本記事では、購買・調達DXのメリットやDXを進めるポイントなどについて解説します。

購買DX・調達DXとは

企業の競争力を高めるうえで、購買部門・調達部門のデジタル化は欠かせない施策です。

近年よく使われる「購買DX」と「調達DX」は似た意味で使われることが多い一方で、対象範囲・目的・活用するデータの範囲に違いがあります。

結論からお伝えすると、購買DXは発注・見積・承認・支払いなど購買実務の高度化、調達DXはサプライヤ戦略やリスク管理を含むより広範な最適化を指します。

この違いを正しく理解することで、自社がまず取り組むべきDX領域が明確になり、投資対効果を高めやすくなります。

購買DXとは

購買DXとは、AI・クラウド・RPA・データ分析などのデジタル技術を活用し、購買業務そのものを効率化・高度化する取り組みです。

購買DXの主な対象業務は、以下のとおりです。

  • 見積依頼・比較
  • 発注処理
  • 承認ワークフロー
  • 納期管理
  • 請求照合
  • 支出分析
  • 購買実績の可視化
  • 集中購買の最適化

従来の購買業務では、Excel・メール・FAX・電話による属人的なやり取りが多く、担当者ごとの経験値に依存しやすい傾向があります。

購買DXを進めることで、これらをシステム上で一元管理できるため、QCD(品質・コスト・納期)の改善・業務スピード向上・内部統制強化につながります。

製造業では、購買DXによって過去の購買価格やサプライヤ実績をデータで比較できるため、価格交渉力の向上やムダな支出削減にもつながります。

調達DXとは

調達DXとは、購買業務を含めて、必要なモノ・サービスを最適な条件で安定的に確保するために、調達プロセス全体を変革するDX施策です。

購買DXがオペレーション改善寄りであるのに対し、調達DXはより上流から下流までの広範囲を対象にします。

調達DXの主な対象領域は、次のとおりです。

  • 調達戦略の策定
  • サプライヤ探索・評価
  • 見積収集・査定
  • 契約管理
  • リスク管理
  • ESG/BCP対応
  • サプライチェーン可視化
  • 原価分析
  • 納入品質評価

つまり調達DXは、単なる業務効率化ではなく、企業全体の利益率向上やサプライチェーン強靭化まで見据えた戦略DXです。

昨今は、原材料価格の高騰・地政学リスク・サプライチェーン寸断への対応が求められており、調達DXの重要性はますます高まっています。

【比較表あり】購買DXと調達DXの違い

購買DXと調達DXは混同されやすいですが、大きな違いは 「業務範囲」と「目的」 にあります。

比較項目購買DX調達DX
対象範囲発注・承認・支払い・見積比較など購買実務サプライヤ選定、契約、リスク、原価、供給戦略まで含む
主な目的業務効率化、工数削減、ミス防止コスト最適化、供給安定、競争力強化
主な活用データ購買履歴、価格、納期、支出市況、原価、供給リスク、サプライヤ評価
改善対象オペレーション戦略+オペレーション
KPI例処理時間、承認速度、購買単価原価率、供給安定率、調達リードタイム

現場の購買業務を効率化したい場合は「購買DX」、経営視点で調達全体を強化したい場合は「調達DX」が効果的です。

製造業では両者を分けて考えるより、「購買DXで業務基盤を整え、その先で調達DXへ拡張する」 流れが成果につながりやすいです。

購買・調達DXで変わる購買・調達部門

少子高齢化による人材不足や多様な働き方が叫ばれる昨今では、業界を問わずDXに取り組むことが必要です。製造業においては製造部門のDXが注目されがちですが、企業全体でのコスト削減や生産性向上、競争力強化を図るためには、購買・調達部門でもDXを進めていく必要があります。

サプライヤとの交渉や資材の発注など、社外とのやり取りが多い購買・調達部門でDXを進められれば、QCDを改善でき、企業全体での生産性向上や企業力強化が可能です。

しかし、購買・調達におけるDXはなかなか進んでいないのが現状です。では、なぜ日本の購買・調達におけるDXが進まないのか、その背景について次章で解説します。

購買・調達DXが進まない3つの理由

購買DXは企業のQCDに大きな影響を与え、利益を出すためにもぜひとも進めたいものですが、以下のような3つの理由があり取り組めていない企業が多いです。

アナログで属人的な業務が多い

購買・調達部門では、設計や製造など各部門から要求・調達依頼を受け、それに見合ったサプライヤの選定や、納期や価格の交渉、適切な契約など、多くの関係者とやり取りする必要があります。このようなやり取りはメールやFAX、電話などアナログな手段を使い、その管理をExcelで行っている企業が多いです。

また、上記の一連のやり取りは煩雑で多岐にわたるため、ベテランの裁量や経験に依存しがちです。属人的な業務の場合、データを整理・活用する準備やノウハウが蓄積されていないため、従来のやり方から脱却するのが難しく、DXを進める判断ができなくなってしまいます。

DXの優先順位が低い

日本の企業では、購買・調達部門を専任で担当する役員がいないケースがよくあります。そのため、購買・調達部門への投資が後回しにされ、DXを進めるにしても優先順位が低くなってしまうことが多くあります。

また、営業やマーケティングなどと異なり、直接的な利益を生まない購買・調達部門は裏方のような立ち位置で認識されることも多いです。そのため、企業への直接的な貢献度が小さいとみなされることも珍しくなく、購買・調達部門におけるDX推進の投資の優先順位が低くなりやすい傾向にあります。

費用対効果を予測しづらい

購買DX・調達DXが進まない理由のひとつが、導入前に費用対効果(ROI)を明確に試算しづらいことです。

特に購買部門・調達部門では、DXによる成果が単純な工数削減だけでなく、以下のようにさまざまな領域へ恩恵をもたらします。

戦略・効果リスクガバナンス強化
・見積・発注業務の工数削減・調達単価の適正化・サプライヤ選定精度の向上・属人化解消による教育コスト削減・在庫最適化によるキャッシュ改善・納期遅延リスクの低減・供給停止リスクの低減・内部統制・監査対応の効率化

このように効果が広範囲に及びますが、導入前の段階では「いくら投資して、どのくらい利益改善につながるのか」が見えづらく、意思決定が遅れやすいのです。

製造業では、調達コストが売上原価の大部分を占めるため、改善インパクトは大きい一方で、どのKPIで成果を測るかを設計しないと投資判断しづらい傾向があります。

このような背景から購買DXはなかなか進められていませんが、購買DXを進めることは大きなメリットを企業にもたらします。次章では、購買・調達DXの5つのメリットについてご紹介します。

購買・調達DXによる5つのメリット 

購買DX・調達DXを実施するメリットは、次の5つです。

  1. 業務を効率的に進められる
  2. ムダなコストを削減できる
  3. 属人化を解消できる
  4. 人的ミスと工数の削減につながる
  5. サプライヤの選定を適切に行える

メリット①:業務を効率的に進められる

業務を一元化・可視化することで、これまで手作業・FAXで行ってきた事務業務の手間が省け、管理が楽になるため、効率的に作業を進めることが可能です。ムダな業務を省くことで業務フローの改善や再構築にもつながるため、従業員の能力を活かした適切な人材配置もしやすくなります。

これにより、従業員の満足度向上に寄与できます。

メリット②:ムダなコストを削減できる

購買DX・調達DXのメリットとして、コスト削減も挙げられます。前述したような業務効率化により、一つの作業にかかる人数を減らせるため人件費の削減につながります。

購買・調達業務においてはサプライヤや他部門とメールやFAX、電話でやり取りするケースが多いです。そこで、見積や価格交渉などの業務を一元化・可視化することで、過去の購入データを基に適切な購買方法を検討できるため、コスト削減が可能です。また、一元管理によって、集中購買も実践しやすくコストを抑えられます。

メリット③:属人化を解消できる

上述したように、購買・調達業務は電話やメールなどアナログな手段を用いることが多く、複雑で多岐にわたることから属人化しがちです。他部門から調達部門への依頼内容や、購買・調達部門からサプライヤへの発注内容、サプライヤの選定方法など一部の担当者しか把握していない状態が起きてしまいます。

しかし、購買・調達DXを行うと、そういった過去の情報が蓄積されるため、担当者が変わったとしても情報を基に業務を進めることが可能です。また、見積や発注、受入など、現在の調達状況も可視化されるため、進捗状況を誰でも確認できます。このように、業務の可視化を実現できれば、業務に必要な情報を誰でも常に把握・利用できる状態が作れるため、属人化を解消することが可能です。

メリット④:人的ミスと工数の削減につながる

購買・調達DXを進めることで人的ミスと工数の削減を図れます。属人化しがちな購買・調達業務をDX化することで、進捗状況の可視化が図れるため、対応の遅れや漏れをいち早く発見できます。また、見積業務といった人的ミスが起こりやすい業務も自動化することで、精度の向上を図れます。

工数のかかりがちな受発注処理や請求、入金といった一連の業務もDX化できれば、まとめて効率化が図れます。これにより、空いた時間を下記のようなより付加価値の高い業務へ充てることも可能です。

  • 価格交渉やボリュームディスカウントの提案
  • サプライヤとの関係構築
  • 新規調達先の開拓
  • 調達戦略の立案

メリット⑤:サプライヤの選定を適切に行える

購買・調達DXのメリットのひとつが、サプライヤの選定をより適切かつ客観的に行えることです。

従来の購買・調達業務では、担当者ごとの経験や過去の付き合い、属人的な判断に依存して取引先を決めてしまうケースが少なくありません。その結果、価格や品質、納期の実績を十分に比較できず、最適なサプライヤを見逃してしまうことがあります。

しかし、購買DX・調達DXを進めることで、以下のような情報を一元管理・可視化できます。

  • 過去の購買価格
  • 納期遵守率
  • 品質不良率
  • 見積回答スピード
  • 発注から納品までのリードタイム
  • サプライヤごとの取引実績
  • 市況や原材料価格の変動データ

これらのデータを基に比較・分析すれば、価格だけでなく品質・納期・安定供給まで含めた総合評価でサプライヤを選定することが可能です。

また、調達DXではAIやデータ分析を活用し、図面・部品情報・過去の見積実績から候補サプライヤを自動抽出する仕組みも実現できます。担当者による判断のバラつきを防ぎながら、調達戦略に沿った再現性の高いサプライヤ選定を行えるのです。

購買・調達DXを成功に導く5つのポイント

DXに着手してもポイントを押さえていないと、ご紹介したメリットを享受できず、失敗に終わってしまうケースもあります。以下では、購買DXを成功に導く5つのポイントについてご紹介します。

  1. 経営層がコミットする
  2. 関係部署と連携を強化する
  3. データの蓄積・活用を意識する
  4. 購買調達プロセス全体をシステム化する
  5. 間接材購入のDXを優先する

経営層がコミットする

購買・調達DXを成功させるうえで重要なポイントは、経営層が明確にコミットすることです。

調達業務は、購買部門だけで完結するものではありません。製造・品質管理・経理・情報システム・現場部門など、多くの部署と密接に関わるため、現場主導だけでは部門最適にとどまりやすく、全社的な変革につながりにくい課題があります。

そのため、経営層が以下のような形で、率先して購買・調達DXを推進することが大切です。

  • DXの目的を明確に示す
  • 投資対効果の評価基準を定める
  • 関係部署へ協力を要請する
  • KPIを全社目線で設計する
  • 継続的な改善を支援する

関係部署と連携を強化する

購買・調達DXでは、関係部署との連携強化が成功につながります。購買部門だけがシステムを導入しても、現場部門がExcelやメールで依頼を続けていては、結局二重入力や確認作業が発生し、業務効率は上がりません。

各部門と連携し、依頼から承認・発注・検収・支払いまでの情報を一気通貫でつなぐことで、購買DXの効果を最大化できます。部門間でKPIや入力ルールを統一しておくことも、後のデータ活用を考えるうえで重要なポイントです。

データの蓄積・活用を意識する

多くの関係者と情報をやり取りし、細かい調整業務も求められる購買・調達部門においては、データに基づいて正確に業務を遂行することが求められます。そのため、データを整備・蓄積し、有効活用できる仕組み作りがDXを進めるうえで重要です。

購買調達プロセス全体をシステム化する

購買・調達業務は取引先の選定・交渉などの段階「ソーシング」と、その後の発注や検収、支払いなどの段階である「パーチェシング」に分類されます。

DX化を進める際、パーチェシングに重点を置いて進めてしまうが、プロセス全体を変革するという目的を果たすためには、受注側・発注側の双方で、ソーシングもシステム化し、工数削減に努めることが重要です。

間接材購入のDXを優先する

購買DXをスムーズに成功させるには、まず間接材購入のDXを優先しましょう。間接材とは、文具・備品・消耗品・工具・IT機器・オフィス用品など、製品そのものには直接使われない資材を指します。間接材は品目数が多く、発注頻度も高いため、アナログ運用では手間がかかりやすい領域です。

一方で、比較的標準化しやすく、以下の効果が短期間で見えやすい特長があります。

  • 発注工数削減
  • 承認フロー短縮
  • 集中購買による単価低減
  • 購入ルール統一
  • 不要購買の抑制

そのため、まずは間接材で成功体験を作り、その後に直接材や戦略調達へ広げる進め方が効果的です。

メディア編集部

購買DXが日本で進まない本質的な原因は、経営層が購買を「単なる伝票処理の裏方」と軽視してきたツケにあります。現場は日々、設計変更の嵐やサプライヤとの板挟みに遭い、FAXや電話での泥臭い調整で手一杯なのが本音。ここにシステムだけ放り込んでも、絶対に形骸化します。

だからこそ、「間接材からの着手」は現場目線でも大賛成です。図面や仕様が絡む直接材は一筋縄ではいきませんが、文具や工具なら標準化しやすい。「システムを使ったら自分の仕事が楽になった」という小さな成功体験を現場に積ませること。これが、長年の属人化という重い腰を上げさせる、一番の近道だと思います。

 

購買・調達DXを推進し企業の競争力を高めよう!

日本における購買・調達DX推進は遅れがちです。しかし、企業の生産性を向上させ、競合他社に勝ち抜いていくためには、他社に先立って購買DX・調達DXを進めることが重要です。

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購買のDXを検討中の方はぜひ一度ご覧ください。

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