セキュリティ 事例

 

情報セキュリティ事故とは?原因やリスク、対策方法を徹底解説

情報セキュリティ事故とは、企業や組織が持つ機密情報や重要データが外部へ漏えい、改ざん、破壊されることを指します。情報セキュリティ事故を引き起こしてしまうと、企業の信用にかかわるリスクがあります。

近年ではサイバー攻撃が巧妙化し、企業を狙った攻撃が増加しているため、適切な対策を行わなければなりません。

本記事では、情報セキュリティ事故とは何か、発生する原因やリスク、対策方法を解説します。

情報セキュリティ事故とは

情報セキュリティ事故とは、企業や組織の保有する重要な情報や資産が漏えい、改ざん、破壊される事象を指します。近年では、サイバー攻撃の高度化により、企業の情報資産を狙った外部からの攻撃が増加しています。

特に、製造業では知的財産や技術情報を多く保有し、競争優位性を保つためにも情報セキュリティ対策が不可欠です。情報セキュリティ事故が発生すると、企業の信用低下や経済的損失を招き、事業の継続性に影響を与える可能性があるため、事故の原因や適切な対応を行うことが重要です。

情報セキュリティ事故の発生原因

情報セキュリティ事故の発生原因は主に以下の5つです。

  • マルウェア感染
  • 不正アクセス
  • DoS攻撃、DDoS攻撃
  • サプライチェーン攻撃
  • 人為的なミス

それぞれ解説していきます。

マルウェア感染

マルウェアは、コンピュータやネットワークに侵入し、データの改ざんや情報漏えいを引き起こす悪意のあるソフトウェアです。

代表的なものにランサムウェアやスパイウェアがあり、企業の重要データを暗号化し、身代金を要求するケースも増えています。

マルウェアは、メールの添付ファイルや危険なWebサイト経由で感染することが多く、従業員の不注意によって拡散するリスクがあるため、扱いには注意しなければなりません。

不正アクセス

不正アクセスとは、許可されていない第三者がシステムやネットワークに侵入し、情報を盗み取る行為を指します。

攻撃者は弱いパスワードや脆弱な認証システムを狙い、企業の機密情報へのアクセスを試みます。特に、クラウドサービスやリモートワークの普及に伴い、IDやパスワードなどのアカウント情報の漏えいが増加しているため、多要素認証などの不正アクセス対策の強化が求められています。

DoS攻撃、DDoS攻撃

DoS攻撃は、特定のサーバーやネットワークに大量のリクエストを送信することで負荷をかけ、正常なサービス提供を妨害するサイバー攻撃の一種です。

さらに、複数の端末を利用して同時に攻撃を行うDDoS攻撃もあり、企業のWebサイトや業務システムが長時間ダウンする可能性があります。

サプライチェーン攻撃

サプライチェーン攻撃は、企業の取引先やパートナー企業のセキュリティ脆弱性を悪用して、ターゲット企業へ侵入する攻撃手法です。

特に製造業では、部品供給元やシステムベンダーと連携することが多く、一社のセキュリティ対策だけでは防ぎきれないリスクが存在します。

サプライチェーンのどこかに脆弱性があると、攻撃者がその経路を利用し、情報を盗む可能性が高まってしまいます。

人為的なミス

情報セキュリティ事故の原因として、人為的なミスによるものもあります。

たとえば、以下のようなものが挙げられます。

  • メール誤送信
  • データの誤削除
  • 不適切なパスワード管理
  • USBメモリの紛失やデータの持ち出しなど

情報セキュリティ事故によるリスク

情報セキュリティ事故によるリスクは大きく6つあります。

  • 業務の停止
  • 情報の改ざん・漏えい
  • 社会的信用の喪失
  • セキュリティ対策費の増大
  • 損害賠償
  • ブランドイメージの毀損

一つずつ見ていきましょう。

業務の停止

サーバーやネットワークが攻撃を受けることで、業務が停止するリスクがあります。

製造業では生産管理システムが停止すると、生産ラインが稼働できなくなり、多大な損害を被る可能性があります。

情報漏えいによるシステムの復旧や被害調査に時間を要し、業務再開までに期間を要するケースもあるため、迅速な対応が必要です。

情報の改ざん・漏えい

攻撃者が機密情報を改ざん・漏えいさせることで、企業の競争優位性が損なわれます。特に知的財産や顧客情報の流出は深刻な影響を及ぼします。

サイバー攻撃を受け、情報が改ざん・漏えいしたことがわかると、2次被害の有無やデータの復旧作業、攻撃ルートの調査が必要になり、本来の業務を停止して対処しなければならないケースも珍しくありません。

社会的信用の喪失

情報漏えいや不正アクセスの被害を受けると、取引先や顧客からの社会的信頼を失うリスクがあります。

企業ブランドにも悪影響を及ぼし、長期的な経営リスクにつながる場合もあります。特に、顧客の個人情報が流出した場合、消費者からの不信感が高まり、売上の低下や新規取引の減少が発生する可能性があるため、影響度の大きいリスクです。

セキュリティ対策費の増大

事故発生後には、新たなセキュリティ対策が必要となり、多額のコストが発生する可能性があります。たとえば、セキュリティシステムの強化、外部監査の導入、専門家の雇用などが求められるため、企業の運用コストに大きな影響を与えます。

損害賠償

情報漏えいによって顧客や取引先に損害が発生した場合、法的責任を問われ、損害賠償請求を受けるリスクがあります。特に、個人情報保護法や一般データ保護規則などの厳格な法規制がある中で、情報管理に不備がある企業は多額の罰金を科されることもあります。

ブランドイメージの毀損

情報セキュリティ事故が公表されると、企業のブランドイメージが低下し、顧客離れが進むリスクがあります。企業は早期に誠実な対応を行い、適切な広報活動を通じて信頼回復を図る必要があります。

情報セキュリティ事故の最新事例

情報セキュリティ事故は日々発生しています。この章では最新事例を5つ解説します。実際に発生した内容を把握することでより情報セキュリティへの意識を高められます。

  • 人為的ミスによる情報漏えいの事例
  • 不正アクセスによるスパムメールの事例
  • セキュリティ設定ミスの事例
  • メール誤送信による個人情報漏えいの事例
  • ランサムウェアによる個人情報漏えいの事例

人為的ミスによる情報漏えいの事例

2024年12月12日、都内のある大学にて情報漏えい事故が発生したと発表されました。専任教員が持ち出し禁止の個人情報を含むファイルをUSBメモリにコピーし、さらに学生と教員が共有するファイルサーバーに誤って保存したことで、延べ1,683名分の個人情報が閲覧可能な状態となっていました。

発覚後、大学は個人情報が漏えいした在学生に対して、本人宛にお詫びの連絡を行っています。

不正アクセスによるスパムメールの事例

​2025年1月23日、東京都のとある行政機関は、同局が運営するメールサーバが外部から不正利用され、479,716件のスパムメールが送信されたと発表しました。

この事案を受け、同局は再発防止策として、メールサーバーの設定見直しやセキュリティ対策の強化を実施する予定とのことです。

セキュリティ設定ミスの事例

​2025年3月6日、東京都内に本社を置くIT企業が、同社Webサイトの問い合わせフォームに顧客がファイルを添付して送信した場合、これらのファイルが第三者から参照可能な状態であったと発表しました。

​原因は、Webサイトの改修時に適切なセキュリティ対策が施されていなかったこととされています。

再発防止策として、問い合わせフォームに添付されたファイルが第三者に参照されないよう、セキュリティ設定の見直しを迫られました。​

メール誤送信による個人情報漏えいの事例

​2024年11月13日、教育サービスを提供する企業において、会員情報の誤送信があったことが発表されました。

同社が会員など合計53名に案内メールを送信する際、担当者の人為的ミスにより、受講者や過去の在籍者を含む約2.3万人分の個人情報が記載されたCSVデータを誤って添付してしまいました。このデータには​パスワードが設定されていなかったため、個人情報漏えいにつながっています。

ランサムウェアによる個人情報漏えいの事例

​2025年1月9日、ある包装資材製造メーカーは、2024年9月15日に公表したサーバーへのランサムウェア攻撃に関する調査結果を発表しました。

2024年9月14日、同社の生産管理システムや基幹システムの一部サーバー内のファイルが暗号化される被害が確認されています。その後、対策本部を設置し、外部専門家の助言を受けながら情報流出の有無や影響範囲の調査、復旧対応を進めていました。

調査の結果、取引先や関係者など約15万人分の氏名や会社名、業務用電話番号などが漏えいした可能性があるようです。

情報セキュリティ事故が起きた場合の対処法

情報セキュリティ事故が発生した際には、迅速かつ適切な対応が必要です。主な対処方法は以下のとおりです。

No

対応方法

詳細な対応内容

1

事故の検知

定期的なログ確認や障害検知ツールを使い、不審な状況を検知する

2

事故の初動処理

・関連する部署や担当者への連絡

・事前に設定した優先順位に応じた手続きを行う

例:システムの隔離、データの保護など

3

事故の分析

・被害内容や事故の規模を整理

・原因分析し、対策方法の決定

4

復旧作業

システムを復旧させ、正常に利用できるか確認

5

再発防止策の実施

原因究明し、再発防止策を講じる

まず、被害範囲を特定し、影響を最小限に抑えるための初動対応を行うことが重要です。システムの隔離、パスワードの変更、ログの確認などを迅速に実施し、関係者への報告を徹底します。

その後、事故の原因を分析し、再発防止策を講じることが不可欠です。具体的には、セキュリティポリシーの見直しや従業員教育の強化、システムの脆弱性対策を実施し、同様の事故を防ぐ仕組みを整えます。

企業に求められる情報セキュリティ事故対策

企業に求められる情報セキュリティ事故の対策としては、以下の6つです。情報セキュリティ事故を起こすと企業の信頼性を損なう危険性があります。

  • ID・パスワードなどのアカウント管理の徹底
  • 適切なアクセス制限の設定
  • ソフトウェアのアップデート
  • 情報資産の把握と管理
  • セキュリティツールの導入
  • 社員教育

ID・パスワードなどのアカウント管理の徹底

適切なアカウント管理によって、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。

例えば、パスワードの使い回しを防ぐために、パスワードマネージャーの導入を行うなどです。

また、定期的なアクセス権の見直しを実施し、退職者や異動者のアカウントを速やかに無効化することも重要です。さらに、異常なログイン試行を検知する仕組みを導入し、攻撃の兆候を早期に把握できる環境を整えることでよりアカウント管理がしやすくなります。

適切なアクセス制限の設定

アクセス制限を適切に設定することで、情報漏えいリスクを抑えられます。特に、最小権限の原則を適用し、従業員が業務上必要な情報にのみアクセスできるように設定することが重要です。

また、役職や部門ごとにアクセス権を分類し、機密情報へのアクセスを制限することで、万が一の際の被害を最小限に抑えられます。アクセス履歴を監視し、不審な操作があれば迅速に対応する体制を整えることも必要です。

ソフトウェアのアップデート

ソフトウェアのアップデートは、情報セキュリティ対策として有効です。

攻撃者は日々ソフトウェアの脆弱性を狙って攻撃を仕掛けています。ソフトウェアの脆弱性を放置すると、攻撃者に悪用されるリスクが高まります。

企業内のシステムやアプリケーションが最新の状態に保たれるよう、定期的なアップデートを行うのが推奨です。特に、OSやセキュリティソフトウェアのアップデートは最優先で行い、脆弱性を悪用した攻撃を未然に防ぐことが重要です。

情報資産の把握と管理

IT資産は複雑化しており、従来のパソコンやサーバーだけではないのが現状です。スマートフォンやソフトウェアライセンスも正確に把握・管理しなければ、企業のセキュリティリスクとなり得ます。フリーソフトは業務効率化に役立つものが多くありますが、フリーソフトをダウンロードして利用することは危険を伴います。マルウェアが含まれる可能性があり、情報漏えいのリスクがあるためです。

そこで、PCの利用状況を把握し、利用しているアプリやファイルの情報を管理し、情報漏えいリスクを軽減する必要があります。USBメモリへの書き込みを禁止したり、フリーのソフトウェアの利用を制限することで情報漏えいのリスクを低減できます。

また、多くの企業では内部統制が義務付けられています。企業ごとでセキュリティポリシーに準じたソフトウェア管理をしなければなりません。適切に行われていないとJ-SOX法(金融商品取引法)違反となり、罰則が与えられる可能性があります。

セキュリティツールの導入

企業の情報資産を保護するために、適切なセキュリティツールの導入が不可欠です。

ファイアウォールやウイルス対策ソフトウェアを基本とし、エンドポイント保護やネットワーク監視ツールを組み合わせることで、多層的な防御対策を行いましょう。特に、事後対策としてはEDR製品による異常検知システムを導入することで、通常とは異なる挙動を迅速に察知し、サイバー攻撃の兆候を早期に把握し、被害を最小限に抑える対策が重要です。

さらに、ログ管理ツールを活用し、アクセス履歴の可視化を行うことで、不審な行動をリアルタイムで監視できるようになり、情報セキュリティ事故を事前に防ぐことにつながります。ランサムウェアやゼロデイ攻撃などの最新の脅威に対して、すべての通信を信頼しないことを前提にした仕組みである「ゼロトラスト」の考え方が重要になっています。

ゼロトラスト型エンドポイントセキュリティのAppGuardは、マルウェアかを判断するのではなく、OSに害のある動きをすべてブロックして無効化します。これにより、悪意あるプログラムに侵入されても発症を防ぎ、マルウェアの侵入に対してOSの正常な動作を守ります。

社員教育

セキュリティ意識を向上させるために、定期的な研修やメール訓練を実施し、従業員のリテラシーを向上させることが重要です。

例えば、フィッシングメール対策として、標的型攻撃メール訓練サービスを活用し、従業員が標的型攻撃のメールであるか否かを判断する知識や攻撃手法を理解し、リスクを回避するスキルを身につけることで、企業全体のセキュリティレベルを向上しましょう。

加えて、情報セキュリティ事故が発生した場合の報告対応も周知しておくことが必要です。

適切な対策で情報セキュリティ事故を防ぐ

情報セキュリティ事故は一度発生させてしまうと、企業の信頼性を損なう可能性があります。顧客や取引先企業からの信頼失墜だけでなく、業務の停止などによる経済的損失を招くリスクがあるため

、適切な対策を行う必要があります。

サイバー攻撃の手法は日々変化しています。セキュリティ対策は、一度行えば終わりではなく、常に情報をアップデートし、定期的に対策を見直すことが必要です

企業は、継続して情報セキュリティ事故を防ぐ行動が必要です。

最新のセキュリティ動向を常に注視し、想定されるリスクに備え、組織の情報資産を守りましょう。

当社では、さまざまなニーズに対応できる幅広いセキュリティソリューションを取り扱っており、専門的な知識を有するスタッフがお客様の課題に合わせた最適なソリューションをご提案します。お気軽にお問い合わせください。

侵入されても、発症させない。
ゼロトラスト型エンドポイントセキュリティ「AppGuard」

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