オフィス移転を円滑に進めるには、法的に義務づけられている期限つきの申告の他、「何をいつまでに済ませるべきか」を事前にひととおり確認しておく必要があります。初めてオフィス移転を任された方にも作業できるよう、オフィス移転のポイントを詳しく解説します。
オフィス移転前の準備
オフィス移転の準備で押さえておきたいポイントは以下の11項目です。場合によって一部は前後することもありますが、おおむね上から順に進められるようにご紹介します。
移転目的・スケジュールの設定
オフィス移転の前には、現在のオフィスが抱える問題や移転目的を明確にしましょう。これらを明確にすることにより新オフィスに求める条件が分かり、オフィス選びに失敗しにくくなります。問題や目的を明らかにしたら、移転希望日から逆算して、各工程のスケジュールを設定しましょう。
物件探し
新オフィスに求める条件から、合致した物件を探します。会議や商談のためにスペースが必要になったのであればオフィスの広さに着目し、イメージ戦略でオフィス移転を考える場合はどこにオフィスを構えるかという立地が重要になります。条件に優先順位を設けて新オフィスを選びましょう。
その他、必要に応じて「賃貸料」・「物件の周辺環境」・「空調設備」・「共有スペースの利便性」・「営業車を駐車する場合の駐車場の有無」・「物件の使用可能時間など制限の有無」・「建物内の監視カメラの有無」といったポイントも確認しましょう。物件が確定したら、申し込みをして契約手続きをします。
レイアウトの作成
移転する物件が確定したら、移転の1ヶ月前の完成を目標にレイアウトを作成しましょう。オフィスに必要なスペースは、所属している人数×1人当たりのワークスペース(最低1.2平方メートル)で、おおよその数字が算出できます。ワークスペースの配置にくわえて、移動のための通路(動線)や収納に必要なスペースを検討すれば、スムーズにレイアウトが作成できます。
オフィス家具・OA機器の発注
作成したレイアウトをもとに、新たに必要な家具やOA機器類をリストアップします。発注先が複数になる場合は、発注先や発注内容を整理して確認しやすいようチェックリストを用意しておきましょう。
また、リースしているオフィス家具やOA機器があれば、「オフィス移転後も契約を継続できるか」・「自社で運搬しても問題ないか」などを確認しておきます。継続できなければ、新規でのリースを検討しましょう。なお、この段階で廃棄するオフィス家具も別にリストアップしておくと、業者にスムーズに見積もりを依頼できます。
引越し見積もりの請求、比較
オフィス移転する際の見積もりの請求は、複数の引越し業者に行いましょう。複数の業者に見積もりを請求することで業者ごとの値段を比較でき、安い業者を選べばコストの削減につながります。
見積もりの際は引越し業者に直接オフィスまで来てもらう必要があるため、打ち合わせ前に搬入・搬出時の荷物の取り扱いやスケジュールなど、確認したい項目をまとめておきましょう。廃棄物の引き取りサービスがあるかを確認しておくと、オフィス家具の廃棄を別会社に依頼する手間が省けます。
オフィス移転マニュアルの作成
移転が決まり次第なるべく早い段階で行っておきたいのが、社員への告知とオフィス移転計画の説明です。告知や説明を早めに行うことで社内の混乱を防ぎ、余裕を持って移転作業を進められます。また、移転当日になって作業に支障が出ないように、作業の工程をまとめたマニュアルを作成しておきましょう。
不要な資料の処分や私物の整理など、引越し業者に依頼できない作業を洗い出し、引越し当日までには作業分担を確認しておきます。
その他連絡と手続き
取引先や関係各所への連絡や郵便物の郵送手続きなども、オフィス移転の前にあらかじめ済ませておきましょう。
取引先や関係各所への連絡
オフィス移転のお知らせを、はがきかメールで取引先や関係各所に伝えます。オフィス移転の1ヶ月前から、遅くとも2週間前には移転予定日と移転先の住所、電話番号など新しい連絡先も伝えておきましょう。
インターネット・電話回線の移転手続き
インターネットや電話回線も、契約会社にいつ頃移転するか連絡をしましょう。契約を継続する場合は移転手続きが、別のサービスを利用する場合は解約や新規契約手続きが必要になります。どの場合も工事のスケジュール確認が必要になるため、早めの連絡を心がけましょう。
インフラ周辺の調整は、詳しい社員や引越し業者と相談するとスムーズに作業が進みます。
郵便物の転送手続き
郵便物に関しては、移転前の地域を担当している郵便局で転居届を出して転居・転送サービスの手続きをしておきましょう。転居・転送サービスを利用すると、手続きの日から1年間、取引先などが旧オフィス宛に送った郵便物を新オフィスへ無料で転送してくれます。
事務用品や名刺などの発注、登録情報の変更
名刺や封筒などを新しく発注する際は、移転後早めに使えるよう新オフィスの住所に変更したうえで手配しておきましょう。定期的に購入している事務用品や備品などは、旧オフィス宛に発注しないよう確実に住所変更を行うことが大切です。
入居中オフィスの退去手続き
オフィス移転の前には、現在のオフィスのオーナーや管理会社に解約予告をする必要があります。現在のオフィスの契約内容を確認して、退去できる時期や原状回復工事の内容をチェックしましょう。
現在のオフィスの解約予告
オフィスの解約予告は、退去の半年前に出すのが一般的です。物件や契約の内容によっては退去できる時期が異なり、オフィスの移転計画に問題が生じる可能性があります。新オフィスの入居可能時期についても併せて確認しておき、オフィスの退去と移転のタイミングが合うように調整します。
オフィスの原状回復工事
管理会社が原状回復工事の業者を指定する場合もありますが、そうでない場合は自分たちで探す必要があります。管理会社の立ち会いのもと、原状回復が必要な範囲を確認して業者に見積もりを依頼します。解約日までに原状回復工事が終わるように発注しましょう。
各種届出
オフィス移転に伴い、公的機関へのさまざまな届出も必要です。以下にご紹介する各種届出は2018年時点での情報ですので、必ず各機関に確認するようにしましょう。
法務局
本店であれば本店移転登記申請書、支店であれば支店移転登記申請書を法務局に提出する必要があります。提出する申請書は、株式会社、有限会社、合同会社別に分けられており、管轄地域の内と外のどちらに移転するかでも分けられています。
届出を行うのは移転前の管轄法務局で、本店移転登記申請書は移転から2週間以内、支店移転登記申請書は3週間以内に提出します。
税務署
税務署には異動届出書と、給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出の提出が必要です。異動届出書は納税地の異動があった場合、移転後速やかに移転前の納税地の所轄税務署長に提出します。給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出は、移転から1ヶ月以内に移転前の所轄税務署に提出します。
都道府県税事務所
都道府県税事務所には、移転したあとに事業開始等申告書を提出します。提出は移転前、移転後両方の管轄税事務所に行います。管轄地域によっては税務署に提出する異動届出書と統一仕様であったり、申告期間が異なったりするため、よく確認して提出しましょう。
社会保険事務所(年金事務所)
社会保険事務所には、適用事業所所在地・名称変更(訂正)届を提出する必要があります。移転先が管轄地域内か管轄地域外かで手続きが異なるため、移転後のオフィスがどちらなのかを必ず確認しておきましょう。提出は移転後5日以内に、移転前の管轄地域の事務所で行います。
労働基準監督署
労働基準監督署には、「労働保険名称、所在地等変更届」を提出します。注意したいのが、一元適用事業と二元適用事業とでは提出先が異なることです。労災保険と雇用保険を統一して扱う一元適用事業は労働基準監督署へ提出しますが、労災保険と雇用保険を別で扱う二元適用事業では労災保険に関しては労働基準監督署へ、雇用保険に関しては公共職業安定所へ、別々に提出する必要があります。
なお、どちらであっても移転から10日以内に移転後の所在地の管轄へ提出します。
公共職業安定所
公共職業安定所には、雇用保険事業主事業所各種変更届を提出します。移転したあと、10日以内に移転後の所在地の管轄所に提出しましょう。
上記の通り、二元適用事業であれば提出書類に労働保険名称・所在地等変更届が増えます。一元適用事業であっても、雇用保険事業主事業所各種変更届の提出には「労働保険名称、所在地等変更届」の控え及び確認書類が必要になるので、労働基準監督署の手続きを先に終わらせておくことをおすすめします。
消防署
消防署には、防火対象物使用開始届出書を提出します。防火対象物使用開始届出書は、防火対象物(建物)やその一部を新たに使用するとき、使用形態を変更するときに必要な届出で、消防署に建物の安全性を指導してもらうために必要です。使用開始の7日前までに移転後の管轄の消防署に提出しましょう。
各提出書類のチェックリスト
提出場所 |
提出書類 |
期限 |
提出先の違い |
法務局 |
本店移転登記申請書 |
移転から2週間以内 |
移転前の管轄法務局 |
支店移転登記申請書 |
移転から3週間以内 |
||
税務署 |
異動届出書 |
移転後速やかに |
移転前の納税地の所轄税務署長 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 |
移転から1ヶ月以内 |
移転前の納税地の所轄税務署 |
|
都道府県税事務所 |
事業開始等申告書 |
それぞれ管轄地域によって申告期間が異なる |
移転前の管轄税事務所 |
社会保険事務所(年金事務所) |
適用事業所所在地・ |
移転から5日以内 |
移転前の管轄事務所 |
労働基準監督署 |
労働保険名称、 |
移転から10日以内 |
移転後の所在地を管轄する労働基準監督署 |
労働基準監督署・公共職業安定所 |
労働保険名称、所在地等変更届 |
移転から10日以内 |
労災保険は労働基準監督署、雇用保険は公共職業安定所。どちらも移転後の所在地の管轄所 |
公共職業安定所 |
雇用保険事業主事業所 |
移転後10日以内 |
移転後の所在地を管轄する公共職業安定所 |
消防署 |
防火対象物使用開始届出書 |
移転の7日前まで |
移転後の管轄の消防署 |
時間がないときはオフィス移転サービスの利用がおすすめ
時間がないときは、オフィス移転に関わる作業をまとめてサポートしてくれるオフィス移転サービスの利用がおすすめです。
オフィス移転サービスとは
オフィス移転サービスは、引越し業者や電気工事業者、内装業者などが行っているサービスの1つです。諸官庁への届出や社内への告知は自社で行う必要がありますが、移転計画の立案から運用までのほとんどの作業を一括で専門スタッフにお任せできます。
また、複数の業者に依頼しなければならない内容を一括で依頼できるので、個別に対応する手間が軽減できます。
オフィス移転サービスを利用するメリット
オフィス移転サービスを利用する具体的なメリットは以下の4つです。
コストパフォーマンスに優れる
オフィスの移転作業は、依頼する業者が多くなるほど個別に手数料がかかるためコストが高額になりがちです。それを1つの業者に一括して任せることで、トータルのコストを削減できます。また、社内でオフィス移転のスケジュール管理をせずに済むため、通常業務を妨げずにオフィス移転の準備が進められます。
レイアウトの相談ができる
オフィスのレイアウトは作業効率に関わります。ノウハウがないままレイアウトしてしまうと窮屈な作業空間や無駄なスペースができ、生産性が落ちる可能性があります。
オフィス移転サービスを利用すれば、ノウハウを持った担当者と全体的な配置や照明、パーティションのデザインまで相談できるため、オフィス移転後のレイアウトの失敗による生産性の低下を防げます。
独自のノウハウがある
オフィス移転サービスを提供している業者によって、特定のエリアに特化した業者やオフィスデザインに強い業者など、さまざまな特色があります。オフィス移転を機に、よりよい環境を整えたいなどの目的があれば、独自のノウハウを持った業者のオフィス移転サービスの利用がおすすめです。
例えばDAIKO XTECHのTOS(トータルオフィスサービス)なら、ITソリューションの導入やシステム関連のインフラ整備などが可能です。タブレット端末を利用した会議システム、PC画面のワンクリックで共有できるワイヤレスプレゼンテーション用機器など、ネットワーク機器の導入にも対応できます。
移転後のアフターフォローを受けられる
オフィス移転サービスには、移転後にレイアウトの問題に気づいた場合や、不具合が起きた場合に相談や対応をしてもらえるアフターフォローがあります。
複数の業者に移転作業を頼むと、作業を担当している業者ごとに相談しなければならず、アフターフォローを受ける過程が煩雑になります。オフィス移転サービスでは、レイアウトからインフラ整備までを一括して依頼しているため、どの業者に依頼するか迷うことがなく、スムーズにアフターフォローを受けられます。
具体的なスケジュール管理でオフィス移転がスムーズになる
オフィス移転前に、「どんな手配が必要なのか」、「何にどれくらい時間がかかるのか」などを確認しましょう。移転スケジュールを作成し、行うべきことを事前に把握しておけば、オフィス移転作業をスムーズに進められます。とくに諸官庁に提出する書類については、提出期限があるため念入りに確認しましょう。
「通常業務と並行して進めるのが難しい」、「短期間で移転したい」という場合は、オフィス移転サービスもぜひ検討してください。人的リソースを抑えながら効率的にオフィス移転を進められる他、専門スタッフのサポートを受けてよりよいオフィス移転がしやすくなります。
オフィス移転の企画立案から運用に至るまでの一連の流れを、専門のスタッフにより強力に支援
TOTAL OFFICE SERVICE(トータルオフィスサービス)|移転ワンストップサービス