生産管理とは、生産計画の作成から製品の出荷まで、製造業のすべての流れを管理することです。生産管理の業務フローを確立させれば、各工程の業務内容や全体の流れを可視化し、QCDを向上できます。今回は、生産管理の業務フローについて、重要性や受注形式・生産方式による業務フローの違いを解説します。
製造業の「業務効率化」「人材不足」「納期短縮」についてお悩みではありませんか?
大興電子通信では製造業のDX化を実現する生産管理システムrBOMを提供しています。 製造業界におけるお悩みに対しては「生産管理システム導入における解決事例集」を無料配布していますのでぜひご活用ください。
ページコンテンツ
生産管理の業務フローの重要性
生産管理に取り組む際は、業務フローを確立することが重要です。生産管理における業務フローを確立すると、次のようなメリットを得られます。まずは生産管理と業務フローの定義をおさらいし、その重要性に迫ります。
生産管理とは
生産管理とは、生産工程全体を効率的に統括するための業務です。具体的には、受注管理・生産管理・工程管理・品質管理など、製造に必要となるあらゆる管理業務を一元的に取りまとめる役割を担っています。
生産管理が必要とされる主な理由はQCDの向上です。QCDとは「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」の頭文字を取った言葉で、顧客からの信頼を獲得するための重要な3要素です。
生産管理に不備が生じると、QCDを適切に維持できなくなります。各部門間での情報共有がスムーズに行かず、作業にズレが生じるためです。また、部門ごとに管理方法が異なることも多いため、生産管理によって統一する必要があります。
つまり生産管理とは、すべての工程・業務を一元管理するために不可欠な業務であり、製造業において欠かすことのできない重要な管理要素です。
業務フローとは
業務フローとは、現場で行われている作業をフロー図(フローチャート)でまとめたものです。各プロセスを図で表現し、それらを流れに沿って矢印でつないで表します。
フロー図を作成する最大のメリットは、全体の流れを視覚的に追える点です。言葉だけでは理解しにくい複雑な流れも、可視化することで格段に分かりやすくなります。また、一つのフロー図を全員で共有すると、認識のズレも生じにくくなります。「次に何をすべきか」が一目で分かり、部門間の連携もスムーズです。
業務フローの本質は「誰が見ても分かる」ように作ることであり、全体の流れを明確に伝えるツールとしての役割を担っています。
生産管理に業務フローを活用するメリット
生産管理に業務フローを活用すると、製造現場は多くの恩恵を受けられます。業務フローは単なる図解ツールではなく、生産活動全体を効率化し、さまざまな課題を解決するための重要な手がかりとなります。
業務フロー導入による主要なメリットについて詳しく説明します。
情報管理がしやすくなる
業務フローを作成すると、情報管理が大幅に改善されます。業務が視覚的に可視化されるため、作業のし忘れや抜けを効果的に防止できます。
プロセスが可視化されることで次の作業が明確になり、管理業務全体がスムーズに進行できます。複雑な生産管理においても、フロー図を参照することで必要な情報を素早く把握でき、情報の見落としや誤認を大幅に減らせます。
部門間の連携がしやすくなる
業務フローの作成によって、部門間の連携も大幅に向上します。同じフロー図を参考にすることで、生産に関わる全部門が全体の流れを共有できるためです。
業務フローを参考にしながら作業を進めると、製品や情報の受け渡しがスムーズになります。例えば、生産部門が次工程の準備状況を把握できれば、タイミングを合わせた引き継ぎが可能です。
属人化を防げる
業務フローを作成すれば、属人化も防止できます。属人化とは「特定の人物のみが作業できる状態」を指すもので、担当者が固定される場合に生じやすいです。生産管理も担当が固定されやすい業務であり、属人化がよく問題視されています。
しかし、業務フローで業務をまとめておけば、必要な業務内容が明確です。たとえ急な交代で引き継ぎが不十分な状態でも「何をすればいいのか」が分かるようになります。これにより、特定の社員が不在でも業務が滞ることなく継続できます。
これらのメリットを最大化するには「だれが見ても分かる」ように業務フローを作成することが重要です。製作者だけが理解できるようなフロー図では、業務改善や情報共有のツールとしての価値が大きく損なわれてしまいます。適切に設計された業務フローは、生産管理の効率化と安定化につながります。
生産管理の基本的な業務フロー
生産管理の基本的な業務フローは、次のとおりです。
- 需要予測
- 受注管理
- 調達計画
- 生産計画
- 生産指示
- 進捗管理
- 品質管理
各フローを確認して、生産管理を適切に行えるよう準備しましょう。
需要予測
需要予測は、今後必要となる製品や個数を事前に予測し、あらかじめ準備を整えておきます。事前準備を行うことで、販売競争において他社に先んじて市場参入が可能です。
需要予測は、主にAIなどの先進技術を活用して実施されます。IoTなどのIT技術によってさまざまな情報を収集し、それらのデータをもとに将来の需要を予測していきます。過去の販売データや市場情報など複数の情報源からのデータを分析して算出するため、AIの活用は現代の需要予測において必須です。
ただし重要な点として、予測はあくまでも予測であり、実際の結果と異なる場合も少なくありません。市場の突然の変化や予期せぬ事態により、予測が外れる場合もあります。そのため、企業によっては需要予測のステップを含めず、確定した受注管理から生産管理プロセスを開始する場合もあります。
需要予測は不確実性を伴うものの、適切に実施することで在庫の最適化や生産計画の効率化につながり、結果として企業の競争力強化に貢献する重要なステップです。
受注管理
受注管理では、顧客からの注文内容を細かく管理します。主な作業内容は以下の5つです。
- 注文書の確認や入力
- 在庫の確認
- 納期の確認や連絡
- 受注伝票の作成
- 注文請書の作成
一般的に営業部門や販売部門が主体となって顧客との契約を進めていきます。
また、受注管理の範囲は単なる注文処理だけではなく、見積もりの作成や契約内容の情報管理なども含まれます。受注プロセスは通常、見積もり・合意・契約の流れで進められるため、見積書の作成と契約管理も受注管理における重要な役割です。
受注管理は業務フローの最初の段階として位置づけられるため、特に高い正確性が求められます。ここで納期やコスト(価格)などの重要な要素が決定され、これらの情報は後続のステップに大きな影響を与えます。受注内容に誤りがあると、資材調達や生産計画などの後工程すべてに影響を及ぼすため、細心の注意を払って管理しなけばなりません。
正確な受注管理を行うことで、適切な製品やサービスを適切な時期に顧客への提供が可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。このように、受注管理は生産管理の出発点として、全体のプロセスを成功に導く基盤となる重要な業務です。
調達計画
製品の製造では、原材料や組み立てに必要な部品の調達が必要不可欠です。いくら生産能力が高くても、現場に材料が供給できなければ製造ができません。ただし、逆に材料が多すぎると余剰在庫となるため注意が必要です。こうしたアンバランスな事態を避けるために、需要と供給、コストのバランスを考えた調達計画が必要となります。
生産計画
生産計画は文字通り、製品の製造に関するすべての計画のことです。準備段階では日程計画、製品の製造段階では在庫や調達計画を立てた上で業務を進めます。計画を立てる上でのポイントは、自社の生産能力を把握すること。生産の優先順位や販売計画の見直し、材料や在庫の不足を避けて滞りなく製品を供給するための生産計画が生産管理業務の起点です。

生産指示
生産指示は、製品の製造作業を詳細に指示する文書であり、製造現場ではこの指示に従い作業が進められます。タイミングが重要で、在庫や人員、生産能力を考慮して出すことが必要です。
正確な指示はミスや不良品を減らし、品質向上に繋がります。生産計画の成否は指示の質とタイミングに大きく依存するため、生産指示は実行フェーズで中心的な役割を担います。
進捗管理
製造工程の全体を把握し、進捗・手順・生産リソースを確認します。工数管理・スケジュール管理などとも定義され、現場が計画通り効率的に進んでいるかどうかを見ていきます。この時、計画に対して進捗が滞っている場合は、原因を調査・改善して生産計画に反映していくことが大切です。

品質管理
ロット別・作成日別で製造した製品が、規定の品質を維持できているか管理します。製造前には仕入れ品の受入検査や出庫指示前の検品、管理状況の記録を行います。ほかにも顧客からのクレームを分析して製品に反映するなど、管理業務が多岐にわたるのが特徴です。
受注や生産方式による業務フローの違い
製造業は、会社によって受注や生産方式が異なります。そのため、他社でうまくいっている生産管理方式を採用しても自社では合わないこともあります。まずは自社の強みや特性を把握して、生産管理のどの部分を重点的に見ていくのかを考えましょう。
オーダー形式の違い
受注生産
受注生産とは、受注があるたびに製品を生産・納品していく形式です。基本的に在庫は作らず、顧客からの受注前に見積もりや引き合いを行います。個別受注生産で対応される例としては、工作機械や住宅などがあり、作業指示はもちろんのこと、部品手配と進捗管理をスムーズに進めていくことが大切です。
見込み生産
需要予測を行い、製品を生産し、その在庫を販売する形式です。受注生産品であっても、一部の部品や材料などを他の製品にも流用できるのであれば、見込み生産化ができるでしょう。自動車やプラスチック・合成ゴムといった石油化学製品のほとんどは、見込み生産で作られています。
また、見込み生産では「在庫製品をいかに管理してうまく活用していくか」がポイントになります。そのため、需要予測を元に工程計画を立てて在庫管理・進捗管理などをうまく連携させていくことが求められます。
生産形式の違い
ライン生産
ライン生産とは、製品をコンベアで移動させながら各工程に応じて部品の取りつけや加工を行う生産形式です。大量生産される商品の多くがライン方式を採用しており、生産計画にあわせて生産能力を再現する環境作りを行っていきます。
セル生産
製品を1人、または少人数のチームで完成させる生産方式です。ライン生産では1人が同じ作業を繰り返すのに対し、セル生産では1人でいくつかの作業を行います。多品種少量生産に向いた生産方式ですが、いかに従業員のスキルレベルに合わせた人員配置ができるかがポイントになります。
また、セル生産では人単位の工数を詳しく管理することで必要な製品数に応じた人員配置ができるため、柔軟な生産体制にすることも可能です。
関連記事:セル生産方式とは?ライン生産方式との違いやITを活用した新たなセル生産方式もご紹介
ロット生産
一度に決められた数をロットにグルーピングし、同様の流れで生産・保管する生産方式です。ロット生産の場合は、生産性の低い環境であっても、期間を決めて稼働することで大量生産を実現します。また、受注生産・見込み生産のどちらにも対応可能になるため、柔軟な生産体制にすることができるでしょう。この時、製品が変わるごとに「誰を使うか、どの設備を使うか」など段取りを考えた上で、実績の管理として製品の数量を管理することが大切です。
個別生産
受注ごとに生産管理を立てて製造していく生産方式です。製品の受注段階で生産管理を立てていくため、ほぼオーダーメイド製品といっても過言ではないでしょう。製品の受注だけでなく、原材料や部品の調達手配も個別で行うこともあるため、顧客の要望に応じた生産対応が可能です。

なぜ、生産管理は難しいのか?
生産管理の難しいところは、進捗の遅れや需要変動を確認しながら進めることです。そのため、経験のある方は課題の多さや部門間での板挟みに悩まされたこともあるでしょう。また、先ほど紹介した受注・生産形式の違いによって、業務プロセスを正確に捉えることが難しいのも要因です。ここでは、業務状況を改善するためにも、生産管理が難しい理由を見ていきましょう。
生産管理が難しい9つの理由
業務フローが適切であっても、適切な生産管理を実現することは難しい場合もあります。生産管理が難しい理由は、次の9つです。
- 部門ごとに納期遅れが頻発する
- 生産計画や調達計画に必要な「市場の需要予測」に時間がかかる
- 生産数の変更や飛び込みの受注に柔軟に対応する必要がある
- 優先順の変動が多い
- 部門ごとの生産負荷を平準化しにくい
- 原価を考慮して仕入先の選定を行い、原価変動のリスクマネジメントを行う必要がある
- 調達が滞り、原材料・部品が不足する
- 原材料在庫や商品在庫をどれだけ持てば良いのか、管理が難しい
- 生産計画が生産能力、進捗管理などの実情に即していない
生産管理の難しさは、上記に挙げた理由だけがすべてではありません。そのため、人的な解決策ではなく、課題解決に強い生産管理システムを導入する会社も多いようです。
生産管理の業務改善を効率化する方法
生産管理の業務フローを作成することは、業務プロセスを分かりやすく整理するための重要なステップです。しかし、単に業務フローを作成するだけでは、本質的な業務改善には直結しません。
業務内容が明確になることである程度の改善は期待できますが、より効率的な生産管理体制を構築するためには、さらなる取り組みが必要です。実際の生産管理の現場では、業務改善と効率化を実現するためのさまざまな方法が存在しています。
関連記事:新QC7つ道具とは?従来との違いや活用術をわかりやすく解説
生産管理システムを導入する
業務改善を実現するもう一つの効果的な方法は、生産管理システムの導入です。従来のアナログ作業をデジタル化することで、大幅な業務改善を実現できます。
従来の生産管理体制では、多くの作業がアナログ方式で行われてきました。紙への記録はもちろん、Excelへのデータ入力も手作業で行われるため、時間がかかるだけでなく従業員の負担増加によりヒューマンエラーも発生しやすい環境でした。
しかし、生産管理システムを導入することで、アナログ作業による非効率性は大きく改善されます。生産活動に合わせてデータが自動的に入力され、手作業による入力の手間が大幅に削減されます。従業員の負担軽減だけでなく、自動入力によってヒューマンエラーの防止も可能です。
生産管理システムはリアルタイムでの情報共有を実現します。在庫状況や工程の進捗状況などを手元のタブレットなどから即時に確認でき、現場での目視確認のための移動時間を省けます。また、ボトルネックのような作業停滞の原因も迅速に特定でき、素早い対応が可能です。
生産管理システム以外にも、会計や人事などを包括的に管理できる「ERPパッケージ」や、専門知識がなくても直感的に操作できるノーコードツール仕様のITシステムなど、さまざまな選択肢が存在します。各ITシステムには特徴があるため、自社の業務環境や課題に最適なシステム選定が重要です。
近年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートファクトリーなど、IT技術を活用した工場のデジタル化が強く推進されています。より効率的で正確な生産管理を実現するためにも、生産管理システムやERPパッケージなどのITツールの導入を積極的に検討してください。
詳しくは次の章で紹介します。
生産管理システムの導入で業務フローを見直す
生産管理システムを導入すれば、煩雑化する業務フローを見直せます。生産管理システムには、主に次のような機能が備わっています。
調達計画:生産計画に基づき、必要な原材料・部品を確認し調達計画を立てる
在庫管理:調達した資材や製造途中の製品を管理
原価管理:原価を確認し、利益を確保するために必要な損益評価をする
一元管理化:営業、設計、製造、購買といった各部門の情報を一元化して効率化を図る
リアルタイム化:進捗や手配情報など現時点での情報をリアルタイムに収集し、リスクを回避する
上記は一例ですが、生産管理を効率化して業務負担を軽減する機能が備わっています。また生産管理における課題を可視化し、業務フローの最適化に活用できます。
生産管理の業務フローを最適化したい場合は、システムの導入がおすすめです。
生産管理の業務フローを見直して業務改善につなげよう
製造業において、生産管理は製造の起点となる重要な業務のひとつです。効率よく進めることができたのなら、納期短縮やコスト削減も夢ではないでしょう。生産管理の業務フローを見直す、もしくは今の生産管理の体制に問題を抱えているのなら、生産管理システムの導入も検討してみてください。
例えば、製造業向け生産管理システム『rBOM』なら、個別受注生産における生産管理をリアルタイムで情報共有し、設計から保守まで幅広い業務に対応できます。各企業の提案する生産管理システムの特徴や導入事例を見て、管理業務の課題を解決しましょう。