
製造業では、原材料費やエネルギー価格、人件費などの上昇により、従来と同じ製品を同じ方法で生産しているだけでは、十分な利益を確保することが難しくなっています。しかし、価格を抑えるために品質や性能を落とせば、顧客満足度や企業の信頼を損なう可能性があります。
そこで活用されているのが、製品の機能とコストを分析し、価値の向上を目指す「VA」と「VE」です。VA/VEは、単に安い材料へ変更したり、必要な工程を削ったりするコストカットとは異なります。顧客が求める機能を明確にしたうえで、その機能をより少ないコストで実現する方法を検討する取り組みです。
本記事では、VA/VEの意味や違い、歴史、基本原則を解説したうえで、実務で活用できる具体的な進め方を紹介します。形状変更や材料変更、加工工程の削減、工法転換などの成功事例も取り上げるため、製品原価の改善や利益率向上に取り組みたい方は参考にしてください。
目次
VA/VEとは
VAとVEは、製品やサービスに必要な機能を明確にし、その機能を最適なコストで実現するための管理手法です。両者は適用するタイミングに違いがあるものの、機能とコストの関係を分析して価値を高める基本的な目的は共通しています。
VA/VEの意味
VAとは「Value Analysis」の略称で、日本語では「価値分析」と訳されます。主に、すでに設計や量産が行われている既存製品を対象として、品質や性能を維持しながらコストを抑える方法を検討する取り組みです。部品の形状や材質、加工方法、仕入先、組立工程などを見直し、製品の価値を継続的に向上させます。
一方、VEは「Value Engineering」の略称で、日本語では「価値工学」と呼ばれます。一般的には、新製品の企画・開発・設計段階で、必要な機能と目標原価を両立させるために用いられます。量産開始前に材料や部品構成、加工方法などを検討することで、製造開始後に大幅な設計変更が発生することを防ぎます。
VA/VEにおける価値は、一般的に下記の考え方で表されます。
「価値(V)=機能(F)÷コスト(C)」
価値を高める方法はコスト削減だけではありません。コストを維持して機能を高める、機能を維持してコストを下げる、機能向上とコスト削減を同時に実現するといった複数の方向性があります。
VA/VEそれぞれの違い
VAとVEの主な違いは、取り組みの対象となる製品の段階です。
VEは、製品の企画や設計、試作など、量産を開始する前の段階で実施します。設計の自由度が高いうちに、部品点数の削減や構造の簡素化、代替材料の採用などを検討できるため、大きな改善効果が期待できます。
VAは、すでに量産されている製品や市場に投入された製品を対象とします。実際の製造原価、不良率、作業時間、顧客からの要望など、量産後に得られたデータを分析し、改善案を検討します。ただし、金型や設備、顧客との契約仕様などが確定しているため、VEと比べて変更できる範囲が限られる点には注意が必要です。
このように、VEが「製品をつくる前に価値を設計する活動」であるのに対し、VAは「つくった製品の価値を見直す活動」と整理できます。ただし、業界や企業によって用語の使い分けは異なり、両方をまとめて「VA/VE活動」と呼ぶ場合もあります。重要なのは名称ではなく、製品ライフサイクル全体を通して価値向上に取り組むことです。
VA/VEの歴史
VA/VEの原型は、第二次世界大戦中から戦後にかけて、米国のゼネラル・エレクトリック社で生まれました。当時は資材不足によって従来の材料や部品を確保することが難しく、代替材料を使用する必要がありました。代替品へ変更した結果、製品の機能を維持しながらコストを抑えられるケースが確認されたことから、機能とコストの関係を体系的に分析する考え方が発展しました。
中心的な役割を担ったのが、同社の購買部門に所属していたローレンス・D・マイルズです。マイルズは「製品が何でできているか」ではなく、「製品がどのような働きを果たしているか」に注目しました。日本VE協会の資料では、マイルズが1947年にVEプログラムを開発し、その後、教育・普及活動を展開したとされています。
1959年には米国VE協会が発足し、マイルズが初代会長に就任しました。その後、VA/VEは製造業だけでなく、建設、物流、サービス、行政、ソフトウェア開発などにも応用されています。現在では、製品単体の購入価格だけでなく、使用、保守、廃棄まで含めたライフサイクルコストを最適化する手法としても活用されています。
参照元:VEとは|公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会(日本VE協会)
VA/VEの5原則を理解しておく
VA/VEを実施する際には、下記の5原則を意識することが重要です。
- 使用者優先の原則
- 機能本位の原則
- 創造による変更の原則
- チーム・デザインの原則
- 価値向上の原則
これらの原則は、VA/VE活動が単純な原価低減や仕入価格の引き下げに偏ることを防ぐための指針です。
使用者優先の原則では、企業側の都合ではなく、顧客や製品の利用者が必要としている価値を優先します。機能本位の原則では、現在の形状や材料にとらわれず、「何のために必要なのか」という観点から機能を捉え、製品を考えます。創造による変更の原則では、既存の方法を前提とせず、より優れた実現方法を幅広く検討します。
チーム・デザインの原則では、設計、製造、調達、品質管理、営業など、異なる知識を持つメンバーが協力します。最後の価値向上の原則は、ほかの4原則を踏まえ、必要な機能とコストの最適なバランスを追求する考え方です。5原則を共有することで、品質を犠牲にした安易なコストダウンを防ぎ、組織的な改善活動を進められます。
近年の製造業でVA/VEが改めて注目されている理由
VA/VEが改めて注目されている理由の一つは、原材料費、エネルギー価格、人件費など、製造原価を構成するさまざまな費用が上昇しているためです。2026年版ものづくり白書でも、事業環境に影響を与える要因として、原材料価格やエネルギー価格の高騰、人材・労働力不足を挙げる製造事業者が多いことが示されています。
原価が上昇した場合、販売価格へ転嫁する方法もありますが、競合他社との価格差や取引先との関係によっては、すべての上昇分を転嫁できるとは限りません。単に仕入先へ値下げを要求するだけでは、品質低下や供給停止、取引関係の悪化を招く恐れもあります。そのため、設計、材料、工程、調達方法を横断的に見直すVA/VEの重要性が高まっています。
また、環境負荷の低減やサプライチェーンの安定化も重要な経営課題です。部品の小型化や軽量化、再生材への切り替え、製造工程の短縮、部品共通化などは、コスト削減だけでなく、資源使用量やエネルギー消費量の削減にもつながります。VA/VEは、収益性、供給安定性、環境対応を同時に検討できる手法として再評価されています。
実務で使える!VA/VEの具体的な進め方と4つのステップ

VAは既存製品、VEは新製品の設計・開発段階を主な対象としますが、基本的な分析方法は大きく変わりません。対象を選定して情報を集め、機能を定義・評価したうえで、より優れた代替案を考案します。
VA/VEに共通するプロセスは、次の4ステップです。
- 対象の選定と情報収集(どこを改善するか)
- 機能定義(機能系統図・FAST法の活用)
- 機能評価(コストと機能のバランス分析)
- 代替案の作成と提案(アイデア発想法)
ステップ1:対象の選定と情報収集(どこを改善するか)
最初のステップでは、VA/VE活動の対象となる製品、部品、材料、工程などを選定します。対象を明確にしないまま検討を始めると、議論が広がりすぎて具体的な改善案をまとめられません。原価率の高い製品、赤字製品、不良率が高い部品、生産数量が多い部品など、改善効果が大きい対象から優先的に選ぶことが重要です。
対象を選定した後は、図面、部品表、見積書、工程表、作業時間、購入単価、不良率、生産数量、販売実績などの情報を収集します。既存製品のVAでは、実際原価や製造現場の作業記録、顧客から寄せられた意見も重要です。VEの場合は、企画段階の要求仕様、目標販売価格、目標原価、想定生産数量などを整理します。
また、設計部門だけで情報収集を完結させないこともポイントです。調達部門は材料価格やサプライヤの技術情報、製造部門は加工条件や作業上の問題、品質管理部門は不良や検査に関する情報を把握しています。部門横断で情報を共有することで、帳簿上の原価だけでは見えない改善機会を発見できます。
ステップ2:機能定義(機能系統図・FAST法の活用)
次に、対象となる製品や部品が果たしている機能を定義します。例えば、ねじを単に「金属製の締結部品」と捉えるのではなく、「部品を固定する」「位置を保持する」といった働きで表現します。現在採用している形状や材料から離れ、機能を起点に考えることで、接着、溶接、一体成形など、異なる実現方法を検討しやすくなるのです。
機能を整理する際には、製品の中心的な目的である「基本機能」と、基本機能を補助する「二次機能」に分類します。そのうえで、各機能の目的と手段の関係を機能系統図として整理します。機能を「名詞と動詞」などの簡潔な表現で定義すると、抽象的な議論を避け、チーム内で認識を合わせやすくなるのです。
より複雑な製品や工程では、FAST法を活用する方法も選択肢の一つです。FAST法は、「なぜ、その機能が必要なのか」「どのように、その機能を実現するのか」という関係を図に表す手法です。複数の機能を論理的につなげることで、不要な機能や重複した機能、代替手段を検討すべき機能を発見しやすくなります。
ステップ3:機能評価(コストと機能のバランス分析)
機能定義を行った後は、それぞれの機能にどの程度のコストがかかっているかを分析します。材料費や購入部品費だけでなく、加工費、組立費、検査費、物流費、不良対応費なども可能な範囲で機能別に割り当てます。製品全体の原価だけを確認するのではなく、どの機能にコストが集中しているのかを可視化することが重要です。
次に、各機能の重要度や顧客への貢献度を評価し、その機能にかけるべき適正なコストを検討します。顧客がほとんど評価していない補助機能に高額なコストがかかっている場合は、改善の余地が大きいと判断できます。一方、安全性や法令対応など、顧客が直接認識しにくくても削減できない機能もあるため、重要度は慎重に判断しなければなりません。
機能評価では、価値を「機能÷コスト」で考え、現行コストと機能評価値の差から改善対象を絞り込みます。ただし、機能の重要度をすべて正確な金額へ換算できるわけではありません。定量的な原価情報と、品質、安全性、顧客満足度、ブランドへの影響などの定性的な評価を組み合わせる必要があります。
ステップ4:代替案の作成と提案(アイデア発想法)
改善対象となる機能が決まったら、その機能を実現するための代替案を幅広く考案します。形状の簡素化、部品の一体化、材料の変更、板厚の見直し、汎用品への切り替え、加工工程の削減、自動化、サプライヤ変更など、さまざまな視点からアイデアを出します。初期段階では実現可能性を厳しく判断せず、提案の数を増やすことが大切です。
アイデアを出す際には、ブレインストーミングやチェックリスト法、類似製品との比較、競合製品の分解調査などを活用できます。設計者だけでなく、製造担当者、調達担当者、品質管理担当者、サプライヤなどを交えることで、社内では思いつかなかった加工方法や材料を発見できる可能性があるのです。
候補を出した後は、必要な機能、品質、安全性、コスト、納期、生産能力、設備投資額、供給リスクなどの観点から評価します。有望な提案については、試作や性能試験、原価試算を行い、具体的な提案書にまとめます。削減額だけでなく、変更費用や投資回収期間、実施スケジュールまで示すことで、経営層や関係部門の承認を得やすくなるのです。
VA/VEを成功させるための注意点
VA/VEでは、製品に必要な機能を見極め、より効率的な実現方法を検討します。ただし、取り組み方を誤ると、品質問題や部門間の対立につながる可能性があります。
VA/VEを成功させるために、次の注意点を押さえておきましょう。
コスト削減だけを目的にしない
VA/VEを進める際にもっとも注意したいのは、購入価格や製造原価を下げることだけを目的にしてしまうことです。VA/VEの本来の目的は、機能とコストのバランスを改善し、製品やサービスの価値を高めることです。必要な機能まで削って価格を下げても、品質低下や故障の増加、顧客満足度の低下につながれば、価値が向上したとはいえません。
例えば、安価な材料へ変更して部品単価を下げられても、耐久性が低下して不良や返品が増えれば、保証費用や再製造費用が発生します。加工工程を減らしたことで検査や手直しの負担が増える場合もあります。そのため、材料費だけではなく、製造、検査、物流、保守、廃棄まで含めたライフサイクル全体のコストを確認することが重要です。
VA/VEの成果を評価する際は、原価低減額に加えて、品質、性能、安全性、納期、作業性、環境負荷などの指標も設定しましょう。「安くするにはどうすれば良いか」ではなく、「必要な機能を、より効率的に実現するにはどうすれば良いか」と問い直すことが、価値向上につながります。
VA/VEはできるだけ早期に取り組む
VA/VEは、製品開発のできるだけ早い段階から取り組むことで、より大きな効果を得られます。企画や基本設計の段階であれば、製品構造、材料、部品点数、加工方法などを柔軟に変更できます。目標原価を設定し、必要な機能と製造方法を同時に検討することで、量産開始後の追加的なコスト削減に頼らない設計が可能です。
一方、詳細設計や金型製作、設備導入が完了した後に変更すると、図面の修正、試作品の作り直し、金型改修、認証の再取得などが必要です。改善による原価低減額よりも変更費用が大きくなる可能性もあります。特に顧客の承認が必要な製品では、仕様変更の手続きに時間がかかることも少なくありません。
早期にVA/VEへ取り組むためには、設計部門だけでなく、調達、製造、生産技術、品質管理、サプライヤが開発初期から参加する体制が必要です。調達担当者が材料価格や代替品の情報を提供し、製造担当者が加工性や量産性を確認することで、設計段階から原価と品質を両立しやすくなります。
VA/VEを切り離さない
VAとVEは適用するタイミングによって区別されますが、別々の活動として切り離すべきではありません。VEで検討した設計や目標原価が、実際の量産で想定どおりに実現できているかをVAで検証する必要があります。量産後に発生した問題や顧客からの意見を次の製品開発へ反映することで、継続的な価値向上につながります。
例えば、VEによって部品点数を減らしたものの、量産開始後に組立作業が難しいことが判明する場合があります。反対に、既存製品のVAによって発見した材料変更や工程削減のアイデアを、新製品のVEへ横展開できるケースもあります。設計段階と量産段階の情報を循環させることが重要です。
そのためには、VA/VEの提案内容、試験結果、削減効果、発生した問題などをデータとして蓄積し、部門を越えて共有できる仕組みを整えましょう。VAを量産部門の改善活動、VEを設計部門の原価低減活動として分断するのではなく、製品ライフサイクル全体を対象とした一つの価値向上活動として運用することが成功のポイントです。
VA/VEの成功事例

VA/VEでは、製品の機能を維持・向上させながら、形状や材質、加工工程、製造方法などを見直します。改善対象は材料費や部品単価だけではありません。組立工数や段取り時間、修理・交換費用、不良発生リスクなどを含めて検討することで、製品ライフサイクル全体のコストを最適化できます。
製造業におけるVA/VEの成功事例を参考に、自社で施策を実施しましょう。
【形状・構造変更】精密加工メーカーA社の成功事例
課題:取り付け部分の形状は同じであるものの、先端部分の形状が異なる2種類の部品を、それぞれ個別に製作していました。使用によって先端部分のみが消耗した場合でも、取り付け部分を含むベース全体を交換しなければならず、まだ使用できる部分まで廃棄するムダが発生していました。
提案:部品が担う機能を「装置へ固定する機能」と「ワークへ接触する機能」に分け、取り付け部分を共通化しました。さらに、消耗するワーク接触部分を交換可能な入れ子構造へ変更し、先端部分だけを取り替えられる設計を採用しました。固定部分と変動部分を分離することで、製品ごとに部品全体を製作する必要がなくなります。
効果:取り付け部分を標準化し、必要な部分だけを交換できるようにした結果、従来と比較して30%のコスト削減を実現しました。ワークの形状が変わった場合も、入れ子部分を変更することで対応できるため、新製品への切り替えも容易になっています。部品の形状変更によって、交換費用だけでなく、設計や製作にかかる負担も抑えた事例です。
【材質・材料変更】樹脂加工メーカーB社の成功事例
課題:製造工程において、製品へ貼られたシールを剥がすために金属製のスクレーパーを使用していました。しかし、作業時に強くこすると製品の表面に傷がつくことがあり、外観品質の低下や不良品の発生が課題となっていました。作業者が力加減を調整しなければならず、作業性にも改善の余地がありました。
提案:金属製スクレーパーが持つ「シールを剥がす」基本機能に着目し、その機能を別の材質で実現できないか検討しました。対象製品の材質や必要な剥離強度を踏まえ、製品表面を傷つけにくい特注の樹脂製スクレーパーへ変更しています。既存工具の形状をそのまま再現するのではなく、使用条件に適した樹脂の選定と設計を行った点がポイントです。
効果:樹脂製スクレーパーへの変更後は、製品表面へほとんど傷をつけずにシールを剥がせるようになりました。金属製スクレーパーを使用していたときよりも剥離作業がしやすくなり、品質と作業性の両方が向上しています。その後も追加注文につながっており、材質変更によって必要な機能を維持しながら、現場の問題を解決した事例といえます。
【加工工程の削減】精密金属加工メーカーC社の成功事例
課題:本体、カップ部分、チューブ部分の3つのパーツをそれぞれ製作し、板金溶接によって接合していました。複数部品の加工と溶接が必要になるため、製造工程が長くなり、加工費や製造日数が増加していました。また、溶接部分では粒界腐食や加工精度のばらつきが生じる可能性もありました。
提案:3つの部品を個別に加工して溶接する方法から、ロストワックスによる一体成形へ変更しました。一体成形した素材に対し、同一企業内で完成品まで加工する体制を構築したことで、従来必要だった板金溶接工程をなくしています。部品の基本機能を変えず、部品構成と加工方法を同時に見直したVA提案です。
効果:3つのパーツを一体化したことで、部品ごとの加工や溶接にかかる工数を減らし、加工コストと製造日数を大幅に削減しました。溶接箇所がなくなったため、溶接部に発生する粒界腐食のリスクも軽減されています。さらに、製造加工精度を10μmの範囲で管理できるようになり、コストや納期だけでなく、不良リスクの低減にもつながっています。
【工法転換】板金加工メーカーD社の成功事例
課題:建設機器に使用するチェーンカバーは、立ち上がりの深いコの字型をしていました。一枚の板材から曲げ加工だけで成形することが難しいと判断され、L字型に曲げた部品とプレートを溶接して製作していました。しかし、溶接工程によって製造期間が長くなるだけでなく、熱による歪みが発生して品質が低下する可能性がありました。
提案:L字型部品とプレートを溶接する工法から、M曲げを活用した一体成形へ変更しました。最初の工程で板材をM字型に曲げ、その後、曲げた部分を水平になるよう再度加工することで、立ち上がりの深いコの字形状を一枚の板材から成形しています。従来は難しいと考えられていた形状を、曲げ工程の組み合わせによって実現した提案です。
効果:一体成形によって溶接工程が不要となり、溶接や仕上げにかかる作業工数を削減できました。工程短縮によるコストダウンと短納期化に加え、溶接時の熱による歪みも発生しなくなり、品質の向上を実現しています。形状そのものを変更するのではなく、同じ形状を実現する工法を見直すことで、コスト・納期・品質を同時に改善した事例です。
効果的なVA/VEの実施には「製造原価管理」が不可欠な理由
VA/VEでは、機能とコストの関係を分析し、改善効果の高い対象を選定します。そのため、製品や部品、工程ごとの原価を正確に把握できていなければ、どの部分から改善すべきか判断できません。
VA/VEを一時的なアイデア提案で終わらせず、継続的な利益改善につなげるためには、製造原価を適切に集計・分析する仕組みが必要です。
コストの「見える化」がなければ適切な機能評価はできない
VA/VEにおける機能評価では、製品を構成するそれぞれの機能について、必要性や重要度と、機能を実現するためにかかっているコストを比較します。しかし、製品全体の原価しか把握できていない場合、どの部品や工程に多くのコストがかかっているのかを判断できません。
製造原価は、材料費、労務費、製造経費などで構成されます。VA/VEを行う際は、部品の購入費だけでなく、加工時間、組立時間、設備稼働費、検査費、不良対応費なども含めて確認する必要があります。例えば、安価な材料へ変更して材料費を削減できても、加工時間や不良率が増加すれば、製品全体の原価はかえって上昇する可能性があります。
また、標準原価と実際原価の差異を分析すれば、想定より材料を多く使用している工程や、作業時間が長くなっている工程を発見できます。製品別、部品別、工程別などの適切な単位で原価を見える化することで、改善効果の大きい対象を選び、VA/VE実施後の効果も客観的に検証できるようになるのです。
原価企画とVA/VEを連動させて利益率を最大化する
新製品の開発では、完成した製品の原価を後から集計するだけでなく、企画・設計段階から目標原価を設定する「原価企画」が重要です。市場で受け入れられる販売価格と、企業が確保すべき目標利益を踏まえて許容できる原価を設定し、その範囲内で製品の機能や仕様、製造方法を検討します。
原価企画で設定した目標原価を達成するための中核的な手法がVEです。製品の基本構造が決まる前からVEを実施すれば、部品の共通化や一体化、代替材料の採用、加工しやすい形状への変更など、幅広い改善案を検討できます。日本バリュー・エンジニアリング協会でも、原価企画とVEを組み合わせ、開発・設計段階から組織的に目標原価の達成を目指す活動が紹介されています。
量産開始後は、実際原価を継続的に確認し、目標原価や標準原価との差異を分析します。想定より原価が高くなっている場合はVAを実施し、材料の使用量や作業工程、外注方法などを見直します。開発段階のVEと量産後のVAを原価管理と連動させることで、製品ライフサイクル全体を通して利益率を改善できます。
VA/VEを実施してコストを最適化しよう
VA/VEとは、製品やサービスに必要な機能を明確にし、その機能を適切なコストで実現するための手法です。VAは主に既存製品の改善、VEは新製品の企画・開発・設計段階で実施しますが、機能定義、機能評価、代替案の作成など基本的な考え方は共通しています。
VA/VEを成功させるためには、単純なコスト削減だけを目的にしてはいけません。材料費を削減できても、品質低下や不良率の上昇、作業時間の増加を招けば、製品全体の価値は低下します。品質、性能、安全性、納期、環境負荷なども含めて、機能とコストのバランスを評価することが重要です。
また、VA/VEの効果を最大化するには、製品別・部品別・工程別の原価を正確に把握する必要があります。製造原価を見える化し、標準原価と実際原価の差異を分析することで、改善すべき対象を適切に選定できます。企画・設計段階の原価企画とVE、量産開始後の原価管理とVAを連動させ、継続的な価値向上に取り組みましょう。
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VA/VEの本質は、単なる下請けへの値引き要請ではなく、現場を巻き込んだ「機能の再定義」にあります。
安易な材料変更や工程削減といった「名ばかりのVA/VE」は、不良率の上昇や手戻りを招き、結果としてコスト増につながります。帳簿上の数値改善だけでは限界があります。
本当に効果が出るVA/VEは、設計・製造・購買が一体となり、「そもそもこの部品は何のためにあるのか」を根本から議論することから始まります。設計の意図と現場の加工性をすり合わせ、必要な機能を見極める地道な対話こそが、品質を守りつつ利益を生み出す一番の近道です。