
グリーン調達とは、企業が原材料や部品、資材、サービスなどを調達する際に、環境負荷の少ない製品やサービスを優先的に選択し、環境に配慮した取り組みを実施している企業から購入する仕組みです。
ニュースや新聞などのメディアで取り上げられることの多い環境問題ですが、企業もしっかりと向き合い、環境問題改善に取り組む必要があります。
そこで今回は、国や地方自治体、そして企業が取り組む環境問題対策の一つである「グリーン調達」について、その仕組みや目的、企業が実践するメリットについて解説します。これから自社でも環境問題に向き合った活動をしていきたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
グリーン調達とは
環境問題に向き合った取り組みであるグリーン調達が、具体的にどのような活動を行っているのかわからない方も多いのではないかと思います。
そこで、グリーン調達の仕組みや目指す方針をあわせてご紹介します。
グリーン調達の仕組み
グリーン調達とは、企業などが原材料や部品、資材、サービスなどをサプライヤから調達する際に環境負荷の小さいものを優先的に選ぶ取り組みのことです。このような環境に配慮した調達に積極的に取り組むことで、環境負荷を抑えた製品開発を促すことができ、環境問題の改善につながります。
また、環境マネジメント国際規格の一つ「ISO14001」の認証を取得した企業から優先的に調達できる仕組みもあり、これもグリーン調達の取り組みの一環として挙げられます。
グリーン調達が目指す方針
グリーン調達は、より多くの企業が環境問題の深刻化による企業リスクを減らす取り組みを行うことで、社会システム全体が環境に配慮したものとなります。今後も深刻化していく可能性がある環境問題ですが、多くの企業が環境問題と真剣に向き合うことで持続可能な社会を形成していけるでしょう。
グリーン調達と似たような概念としては「CSR調達」といったものがあります。CSR調達について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
グリーン調達とグリーン購入やCSR調達との違い
グリーン購入との違いは、取り組みの主体にあります。グリーン購入は国や地方自治体、企業、個人といった消費者が環境負荷の少ない製品やサービスを選ぶ消費行動を指し、文具類やオフィス機器など製造と直接関係のない物品も対象です。
これに対してグリーン調達は、企業が生産活動で使用する原材料や部品、資材を調達する際の環境配慮を意味します。また、グリーン購入には2025年に改正されたグリーン購入法といった法的根拠が存在し、国や公的機関には義務、地方公共団体には努力義務が課されていますが、グリーン調達を直接規定する法律はありません。
一方、CSR調達との違いは対象範囲の広さにあります。CSR調達は企業の社会的責任といった広い視点から、自然環境だけでなく人権問題、労働環境、法令順守、地域社会への貢献など多様なステークホルダーへの配慮を含む調達活動です。
グリーン調達は環境負荷低減に特化した取り組みであり、CSR調達の一部として位置づけられるケースもあります。
グリーン調達推進の基準となるガイドライン
グリーン調達を組織全体で推進するには、明確な基準やルールを定めたガイドラインが必要です。
日本では、国による法的枠組みとしてグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)が制定されており、国や独立行政法人には環境負荷の少ない製品・サービスの調達が義務づけられています。
2025年1月には基本方針が改正され、特定調達品目が22分野288品目に拡大されたほか、2段階の判断基準の見直しやカーボンフットプリントの開示要件が新たに設定されました。
詳細な基準や最新の法改正情報については、以下の環境省の公式サイトで確認してみてください。
参考:環境省「グリーン購入法について」
グリーン調達とISO規格の関係性
グリーン調達を推進する際の国際的な枠組みとして、ISO規格が重要な役割を果たしています。特にISO14001とISO20400が、環境配慮型調達を実践する企業にとって参考基準です。
ISO14001(環境マネジメントシステム)
ISO14001は、環境マネジメントシステムに関する国際認証規格です。
企業がこの規格を取得していると、環境経営に積極的に取り組む組織として評価され、資材調達時の優位性や社会からの信頼獲得につながります。
ISO規格には法的拘束力がないため必ずしも順守する必要はありませんが、グリーン調達を実施する企業がサプライヤを選定する際、ISO14001取得企業を優先的に選ぶ仕組みが広がっています。
ISO20400(持続可能な調達)
近年、グリーン調達の国際的な枠組みとして注目されているのがISO20400です。
2017年に発行されたこの規格は持続可能な調達に関するガイダンスとして位置づけられ、調達活動において環境だけでなく人権や労働慣行など幅広い社会的責任の標準を定めています。
グリーン調達が主に環境負荷低減にフォーカスする一方、ISO20400は持続可能性といった広範な視点からサプライチェーン全体の最適化を目指します。
グリーン調達を行う必要性
ここまでで、グリーン調達が環境に向き合った取り組みであることを説明しました。それでは、企業やサプライヤの立場から見た時に、グリーン調達はなぜ必要なのでしょうか。
以下では納入先企業にとっての必要性と、サプライヤにとっての必要性について説明します。
納入先企業にとってのグリーン調達
グリーン調達を取り入れることで、生産される製品が環境配慮型のものに切り替わり、製品の納入先企業では市場での販売機会を拡大させる可能性が高まります。
また、原材料・資材・部品の調達段階から環境に配慮するため、化学物質の法規制などに抵触するリスクも低減しやすくなります。
加えて、政府が推進するGX(グリーントランスフォーメーション)政策も、企業の調達活動に大きな影響を与えています。
2025年5月に成立した改正GX推進法では、CO₂排出量が年間10万トン以上の企業を対象に排出量取引制度(GX-ETS)への参加が義務化されました。
さらに、国や地方公共団体がグリーン製品の調達を推進する方針が強化され、環境性能の高い製品への需要が拡大しています。
こうした脱炭素社会への移行戦略が本格化する中、グリーン調達は単なる環境対策ではなく、企業の競争力維持と成長のために必要不可欠な取り組みとなっています。
サプライヤにとってのグリーン調達
グリーン調達を行うことで、サプライヤでは納入先企業の事業戦略や、環境に関する要求に沿った対応が可能になります。
そのため、納入先企業から信頼を獲得し、安定的・長期的な事業機会の獲得やリスク回避につなげることができるため、必要な取り組みであるといえます。
グリーン調達を行うメリット
グリーン調達は環境負荷の低減を実現する一手段ですが、これらに積極的に取り組む企業は依然として少ない傾向にあります。
ここでは、グリーン調達によって企業にどのようなビジネス面でのメリットがあるかを解説します。
社会やステークホルダーからの信頼を獲得できる
環境に配慮した原材料を使用しているか、生産工程の中で環境負荷を低減する工夫を行っているか、といった問題への関心は、国や地域社会、消費者、サプライヤなどの間で高まっています。
現在は、産業廃棄物による周辺住民・生態系への悪影響、大規模な森林伐採による森林面積の減少など、企業活動が多くの公害問題や環境問題深刻化の元凶となっていることが知られているため、環境に配慮しない生産活動を行うと社会およびステークスホルダーからの評価が低くなりやすくなります。
一方で、環境に配慮したグリーン調達を行うことで、社会・ステークスホルダーからの信頼獲得につながります。信頼度が高まることは企業の大きな競合優位性となるため、企業の長期的な維持・成長のためにグリーン調達はメリットがあるといえます。
取引増加による事業の拡大
グリーン調達を実践してISO規格を取得したりステークホルダー・社会から信頼を獲得したりすると、企業としての競争力が強化されます。それにともない、取引が増加し事業が拡大していくことも期待できます。
近年は、ISO14001をはじめとする認証規格を取得している企業と、優先的に取引を行う企業も増えています。また、企業の環境配慮に向けた取り組みに関心のある消費者も多くなっています。
そのため、グリーン調達を行うことで既存・新規取引先企業との取引が増えやすくなる、環境に寄り添った新商品の開発やサービス提供などのチャンスを獲得できる、といった事業拡大の可能性を高められるメリットもあります。
企業のリスクを回避できる
グリーン調達を行うことで、行政機関などが定める規制に抵触したり、規制強化などの影響を受けたりするリスクを回避できます。
製造コストの削減を優先させ、原材料の見直しなどを行わなかった結果として、急な化学物質の規制強化などに対応できず生産活動が一挙に不安定になる、予期せぬコストが発生する、といった可能性があります。しかし、グリーン調達を行っている場合、こうしたリスクを回避しやすくなります。
このように、環境問題は企業の経営と大きく結びついています。そのため、ほとんどの企業は環境問題を広い視野で見て、戦略的に対応していくことが重要です。
企業はグリーン調達などの環境に配慮した仕組みを取り入れ、環境問題のリスクを抑え競争優位性を向上させて事業を継続できる状況を整えることが必要です。
グリーン調達実施の流れ
グリーン調達を効果的に実施するには、明確なステップに沿って計画的に進めることが重要です。
以下では、企業が実際にグリーン調達を導入する際の基本的な流れを解説します。
基本的な実施ステップ
まず、グリーン調達の方針と内容を決定し、業界や自社の事業特性に適した調達基準を作成します。
次に、文書化した方針を社内全体で共有し、部門ごとに取引する資材が異なる場合は具体的な運用ルールを個別に策定する方法も有効です。
基準確定後は実際に運用を開始し、既存サプライヤが基準を満たさない場合でも、環境経営について適切な支援を行いながら協働できる体制を構築することが望ましいです。
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ステップ |
内容 |
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1. 方針策定 |
自社の事業内容や業界特性に合わせたグリーン調達の基本方針を明確化する |
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2. 基準作成 |
環境管理体制、製品含有化学物質、温室効果ガス削減などの具体的な調達基準を設定する |
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3. 社内共有 |
全部門に方針と基準を周知し、部門ごとの運用ルールを整備する |
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4. サプライヤ評価 |
既存取引先を基準で評価し、必要に応じて環境経営への支援や協働体制を構築する |
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5. 継続的改善 |
定期的に調達先を評価し、PDCAサイクルを回しながら調達体制を最適化する |
グリーン調達を支援するシステム導入の重要性
グリーン調達の運用では、多数のサプライヤ情報や調達品目の管理が複雑化しやすく、手作業での対応には限界があります。
特に製造業では取り扱う原材料や部品の点数が膨大になるため、調達プロセスを一元管理できる購買管理システムの導入が効果的です。
システム導入により、以下のようなメリットが得られます。
- サプライヤの環境評価情報を一元管理し、基準適合状況を可視化
- 調達履歴や化学物質情報のトレーサビリティを確保
- 承認フローの電子化による業務効率化とガバナンス強化
- グリーン調達基準に沿った自動チェック機能
こうしたシステムを活用することで、グリーン調達の精度向上と業務負担の軽減を同時に実現でき、持続可能な調達活動を安定的に推進できます。
グリーン調達を取り入れて環境問題と向き合う
環境問題と自社の経営を結びつけて考えることは、今後経営を安定化し、成長させるために重要なことです。もしもまだ環境問題に寄り添った対策を十分に講じられていない場合は、グリーン調達をはじめとする環境に配慮した取り組みを行いながら、「経営リスクの極小化」と「チャンスの拡大」を目指しましょう。
しかし、グリーン調達を行う際はサプライヤ選定、仕入価格の調整など工数や時間がかかることも少なくありません。そこでDAIKO XTECHでは、製造業企業様の一連の調達業務を、より効率的に・コストを抑えて実施するためのソリューションをご提供しています。
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