開発購買とは、調達・購買部門が「開発・設計の上流工程」から関与し、コストミニマムな製品づくりを目指す活動のことを意味します。開発・設計プロセスのコストダウンへと広げられることから、価格交渉に限界を感じている購買部門必見の内容です。
本記事では、こうした新たな視点に基づいた開発購買が注目されている理由や調達・購買部門が求められる動きについてご紹介します。
目次
開発購買とは ~購買コストダウンのこれからの発想~
初めに、開発購買の概要について簡単につかんでおきましょう。
開発購買とは、調達・購買部門が「開発・設計の上流工程」から関与し、コストミニマムな製品づくりを目指す活動です。
つまり、交渉主体のコストダウンではなく、開発・設計プロセスの段階から有利な条件での購買を進められるように、社内外に働きかけることを意味します。
近年は、生成AIやデジタルツールの進化により、AIを活用した見積作成やサプライヤ評価の自動化など、開発購買のアプローチも時代に合わせて変化しています。
開発購買と原価企画・試作購買・上流購買の違い
開発購買は、製品開発の初期段階から購買部門が関与し、設計・仕様決定・コスト管理まで幅広く関わる購買活動です。
以下の表で、関連する購買の種類との違いを整理してご紹介します。
| 購買活動 | 主な目的 | 特長 | 関与する段階 |
| 開発購買 | 製品開発の円滑化とコスト最適化 |
上流購買、試作購買、原価企画購買などを含む 設計段階からサプライヤとの調整やコスト管理まで幅広く関与 |
上流~試作・設計段階 |
| 上流購買 | 開発計画確定前の購買活動 | サプライヤの技術力・品質・コストを評価し、開発計画に反映 | コンセプト策定~基本設計 |
| 試作購買 | 試作品の調達とパートナー選定 |
複数の部品メーカーと交渉し、試作品の材料・部品を調達 将来的な量産購買への布石となる |
試作段階 |
| 原価企画購買 | 製品コストの目標設定と管理 | 設計に基づき材料・部品のコスト分析を行い、コスト削減策を検討 | 設計初期~量産 |
なぜ「開発購買」が注目されているのか
開発購買が注目されている背景には、昨今の製造業の置かれた環境が関係しています。
消費者の価値観やライフスタイルが多様化し、著しく変化し続ける今、製品もまた多品種化が進んでいます。
そうした中、当然のごとく調達品も多品種化しているため、発注金額が頭打ちになるケースが増えているのです。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応が企業活動に求められる中、サステナブルな調達方針の策定も開発購買の重要な役割です。
こうした状況では、売り手側もただ値引きの要請に応じるわけにはいきません。
例えば、定期的な購買コストダウン活動の仕組みを構築し、年々大きな成果を上げてきた量産系の大手メーカーの例を見ても、厳しい状況が伺えます。
同社の購買コストダウンの達成水準は、今や1%にも満たない状況になっており、従来型の交渉主体のコストダウンには限界が生じていることがわかります。
こうした背景を踏まえて整理すると、開発購買のアプローチでは「調達・購買」のプロセスだけに着目するのではなく、「開発・設計」にまで視野を広げることが大きな違いといえます。
開発購買が定着しない理由
開発購買は、製品開発の初期段階から関与し、設計の意図やコスト目標を踏まえた調達活動を行う重要な役割を担います。
しかし、多くの企業で開発購買が定着せず、十分に効果を発揮できないケースが見られます。
背景には、組織内の連携不足やノウハウの偏在、サプライヤとの協力体制の不十分さが関係しています。
開発・設計部門と購買部門の連携が取れていない
開発購買がうまく機能しない要因の一つは、設計部門と購買部門の連携不足です。
設計者が求める技術要件や品質基準、納期の背景を購買部門が十分に理解できなければ、最適な部品調達やコスト管理は困難です。
また、そもそも開発部門の考える良い製品(=技術力の高い製品)と、設計部門の考える良い製品(コストの低い製品)が異なっていることも少なくありません。
属人化によってノウハウの偏在が起こっている
開発購買は専門的な知識や経験が必要な業務であるため、一部の担当者にノウハウが集中しやすい問題もあります。
特定の担当者に依存すると、異動や退職が発生した際に知識や経験が失われ、業務効率や調達品質が低下します。
また、社内で標準化されたプロセスが整備されていないと、個々の判断や経験に頼る属人的な運用が続き、組織全体として開発購買の定着が難しくなります。
サプライヤとの協力体制が築けていない
さらに、サプライヤとの協力体制が不十分であることも、開発購買が定着しない理由です。
製品開発の初期段階でサプライヤを巻き込み、技術面やコスト面でコミュニケーションを密に取りながら交渉を行うことが重要です。
しかし、調達部門が通常業務に手一杯で、サプライヤとの協力体制ができていない場合には、購買部門は単なる価格交渉役に留まってしまいます。
調達・購買部門は「開発購買」にどう貢献していくべきか
では、開発購買の考えに基づくと、具体的にどのような動きが考えられるのでしょうか。代表的な観点として挙げられるのが、次の4点です。
視点① サプライヤマネジメントを強化する
1点目は、サプライヤの選定から関係強化までのプロセスを精緻に行うことです。
開発購買を行うにあたっても、「良い品質のものを、安いコストで仕入れる」といった大原則が変わることはありません。
そうした大きなミッションを見失うことなく、優良サプライヤの発掘・選定を進めることが求められます。
しかし、これまで以上にサプライヤ側をコントロールできる力量が問われてくることは事実です。
開発購買では、開発の入り口(上流工程)から購買部門が関わるため、新たに開発・設計部門とのコミュニケーションが発生します。
一方開発購買の出口は、複数のサプライヤとのやり取りと言えます。
つまり、開発購買ではサプライチェーンマネジメントの考えを取り入れ、全体を把握し、改善を続けると同時に、サプライヤのライフサイクルマネジメントを実践しなければなりません。
だからこそ、各サプライヤと自社との関係性、今後の展望を定量的な側面からも把握し、状況に応じて最適な調達を行う動きが必要不可欠です。
視点② 社外の技術動向を把握し、適切な提言を行っていく
2点目は、市場の技術動向を調達業務に適切に反映していくことです。
グローバルでの企業間競争が激化する今、すべてを自前主義で賄う発想では、市場が変化するスピードには追いつけません。
何を自社で開発・製造し、何を社外に委託し、何を社外から調達するのか、意思決定に役立つ調達に関するデータを購買部門が主体的になって行うことが、購買コストダウンの新たな役割と言えます。
視点③ 部門間の連携プロセスを標準化する
3点目は、部門間の連携プロセスを標準化する取り組みです。
例えば、設計変更が発生した際の情報共有ルートや、サプライヤ選定までの意思決定フロー、コスト目標の設定タイミングなどを共通化しておくことで、属人化の排除や手戻りの削減につながります。
また、標準化されたプロセスがあることで、各部門が「どの段階で購買を巻き込むべきか」を判断しやすくなり、早い段階での関与が自然と促されます。
結果として、製品開発のスピードと品質が向上し、開発購買の役割が組織全体に定着していきます。
視点④ 購買データの蓄積・活用による価格交渉
4点目は、購買データの蓄積・活用による価格交渉です。
購買データを体系的に蓄積・分析し、価格交渉やサプライヤ選定に活かすことも、開発購買において重要な取り組みです。
部品の価格推移、過去の見積履歴、サプライヤごとの品質・納期実績、原材料市況といった情報を一元的に管理できれば、属人的な判断に頼らない「データに基づく交渉」が行えます。
また、設計段階で必要となるコスト目標の検討にも役立ち、現実的かつ効果的な原価設定につながります。
さらに、蓄積データを都度分析すれば、サプライヤへの見直しや代替部品の検討といった戦略も行えます。
そして、上記のような開発購買の実践に向けて欠かせない観点が、調達・購買情報のシステム管理です。
開発購買を支える購買情報を適切に管理しよう
開発購買を実践する上での前提となることは、調達・購買管理部門が購買情報を厳密に管理できていることです。
開発・設計段階の何を変えることが、どの程度の購買コストダウンにつながるのかを定量的なデータを持って議論できるようにすれば、開発購買が推進できます。
DAIKO XTECHが提供する購買・調達管理システム「PROCURESUITE」は、こうした開発購買の実践に最適な仕組みです。
これまで手書きやFAXで行っていた事務作業をPROCURESUITEに統合すれば、すべての購買プロセスを見える化できます。
また、どの資材の購買が、開発・設計プロセスにどの程度の影響を与えているのか、定量的な判断が可能です。
最安値での購買はもちろんのこと、「なぜ、このサプライヤを選んだのか」「サプライヤ選びの際にチェックしたポイント」といった開発・設計に関わるノウハウも蓄積・活用できます。
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